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好きなことを好きなだけ楽しみたい欲張り人間の雑記帖

「あんたは役立たずの、むかむかする、傲慢なくそったれ小僧よ」

2005年01月20日 | パルプ小説を愉しむ
『ブルー・バイユー』(デック・ロクティ)の中で、元売春宿経営者で今や警備保障会社経営者となっているやり手のナディア(たぶん60歳は超えているのだろう)が小気味よくこう言う -
「あんたは役立たずの、むかむかする、傲慢なくそったれ小僧よ。その甘やかされた金持ちの子供のような態度を、悪い習慣を絶つように改めたほうがいいわ。もうあんたは金持ちでも子供でもない。となると、残るのは甘やかされていることだけ。今じゃ、需要のある商品とは言えないわね。だから一歩踏み出すか、それとも楽な道を取るか、決めるのはあなたよ。」
麻薬治療病院から出た後、元同僚の死を調査するよう依頼されて調査するようになったテリー・マイオン。それと交錯しながらルイジアナ州の一部を支配する犯罪ファミリー内で子供が父親を排除しようと進めている計画が交錯する。殺人を依頼された殺し屋の正体は、テリーの依頼主でセキュリティ会社を経営するやり手経営者の従業員の兄。とにかくいろいろな話の筋が絡み合い、それがうまく一つのストーリーに織り合わされているところが感心。物静かだが物事に動揺せず冷静に処理していくテリー、やり手経営者のナディア、組織にはまらず自分の価値基準で物事を進める警官エバン・マン、そしてテリーと恋におちるその妹、野卑で残酷な犯罪ファミリーのドンとスイスで教育を受けバラクーダーのように冷徹となり自分の利益のみ追求するその長男のリーヴィー、退院後ノテリーのホストとなる小説家のマーカス。
ディープサウスのブルーバイユー近辺の湿度の高いねっとりとした気候がそれとなく伝わってくる背景の中で話が展開する。

【その他のお薦め台詞】
「何の交渉においても、その交渉をまとめるための必要以上の、本質的価値のある情報を相手に与えないように特に気をつけろ。」
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「灰色の部分はおとぎ話にすぎない。ひとがその存在を信じ始めたとき、世の中が狂ってしまった」

2005年01月15日 | パルプ小説を愉しむ
『ブリリアント・アイ』(ローレン・D・エスルマン)の私立探偵エイモス・ウォーカーが、依頼主と会話を交わす -
「きみの目に映っている世間には白と黒、善と悪があるだけで、その間のものはなにもない」
「その間には何もないんですよ。それでもあるという者は、すでに何割か黒に染まっているんです。灰色の部分はおとぎ話にすぎない。ひとがその存在を信じ始めたとき、世の中が狂ってしまった」

友人の新聞記者を探してくれとの依頼を受けたエイモス。探すうちにお定まりの殺人事件に出くわす。市警内部に金で殺人を請け負うグループがあり、そのメンバーが炙り出される。記者がそのことを知って身を隠しつつ小説を完成させていた、というストーリー。
派手さも華やかさもないデトロイトという無機質の街で、一人硬派の私立探偵が動き回る。彼がどんなに動き回ろうが、街の動きとは何の関係もなく、人々の生活は別のステージの出し物として進行していくといった、マーロウやパーカーが書く探偵ものを読んだ時には感じなかった感覚を読みながら感じた。エイモス自身が「時代遅れの職業についている落伍者」と自分を評しているのが伝わってくるのは、作者の狙いだったのだろうか。最初と最後はシンプルだが、途中が込み入っていて、何の関連があるのかがよく掴めない。紅一点としてお決まりの美女との出会いがあるが、これまたお決まりとして振っている。幾つかの警句があるものの、独り善がりにむつかしい台詞を撒き散らしている、がたいのデカイだけの年代もののアメ車といった人物どころか。

【その他のお薦め台詞】
・エイモスが法律を振りかざしてあれこれ言う奴への警句 -
  「あなたは法律の空気を長いこと吸いすぎているよ。現実の人間はコルク抜きの話をするのに
   そのまわりのことばかりをあれこれ話したりはしない」
・エイモスが知り合った女性に言う台詞 -
  「きみのそんなかっこうを見たら、若いシェイクスピアたちはきっと手をたたいてアザラシのように吼えるよ」
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オーシャンズ・イレブン

2005年01月12日 | Cinemaを愉しむ
かの有名なフランク・シナトラの名作のリメイク。オリジナルはカジノ強盗が失敗に終わったはずだが、こちらは見事に成功に終わる。悪事の成功が許されるような社会的風潮になってきた証左か。
去っていった妻が付き合っている男がラスベガスでカジノ経営をしている辣腕経営者。女を取り戻すことと金を奪うことの一挙両得を狙うカッコよい男がジョージ・クルーニー。そのよき相棒でかつ参謀がブラッド・ピット。彼らがその道のプロを9人募って見事にカジノから1億6千万ドルを盗み出す。それぞれがプロで見事だが、一同に会するとクルーニーとピットの二人が上手に見える。役もあるだろうが、衣装が大きい。9人はシャツ姿やラフな格好なのに、二人はそれなりのジャケット姿なのだ。特にブラピがフロリダに詐欺師老人を迎えに行く時のごくうすいベージュのジャケットスーツと赤縞のシャツの組み合わせがセンスよい。
リメイクにもかからわずオリジナルに負けない程の秀作で充分に楽しめる映画であったのは大きな収穫だが、盗みが成功してメンバーがホテルを見るシーンのバックにながれるのがドビッシーのスイートベルガマスクなのは、いただけなかたった。他の音楽にしてほしかったな。
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「んもぉ-」

2005年01月04日 | パルプ小説を愉しむ
『けちんぼフレッドを探せ!』(ジャネット・イヴァノビッチ)の女性バウンティ・ハンター、ステファニー・プラムの決め台詞。いつものことながら、期待通りのはちゃめちゃな活躍で、これでもかこれでもか、と楽しませてくれる読者サービス満点のシリーズ。
地元バーグでのできことで失踪した親戚のフレッドおじさんを探すうちに、なぜか次々に事件にぶちあたり金脈を当ててしまうステフ。途中でお金のためにレンジャーの副業を手伝うのだが、もらう車はどれも壊すか盗まれるか。地元新聞に書かれる見出しは爆発バウンティーハンター。相変わらずのメイザ婆さんと一緒にあちこちで問題を起こすのみならず、裁判所不出頭でステフに捕まり、ひょんなことからステフの部屋に居座ることになった身長90センチのブリッグスも交えてパワー全開の活躍。
ふたを開けてみるとなんのことはない、これまた地元の昔からの知り合いの銀行員をお客の金を横領、それの関係者と発見者を次々に殺していたのことを発見して無事解決のはずだが、そこに至るまでの底抜け脱線大追跡の過程で起こる珍騒動がこのシリーズの呼び物。相も変わらず楽しませてくれました。
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「たそがれ殿は遣い手でがんしたか・・」

2005年01月03日 | Cinemaを愉しむ
『たそがれ清兵衛』の中で、清兵衛を見下していた同僚たちが、清兵衛が剣の遣い手であることを知った時にボソっともらす台詞がこれ。
たそがれ妻を亡くして幼い子供二人とボケた母親の面倒をみながら暮らす下級侍の清兵衛は、幼馴染が元夫から乱暴を受けているのを助ける。このことから遣い手として見られるようになった清兵衛に上意討ちの藩命が下る。幼馴染の女性への恋慕の思いと子供達への心配を残して清兵衛は相手を討ち取りにいく。
刀を抜いての切りあいがあるが、通常の時代劇とは異なり山田洋次らしいほのぼのとさせる人情映画。清兵衛が幼い子供たちによせる愛情があちらこちらに見られ、同年代の娘を持つ自分にとっては共感を寄せずには観られない。討ち取りに行く日の朝、二人の子供達が寺子屋に通うために家を出るシーンで、戸口からそっと顔を出して見守るシーンなどは山田洋次ならでは。討ち取られる側は家に篭ったきりで清兵衛が来るのを予期している。暗い部屋の中で顔半分に光があたり、のどの筋が浮いてみえるところなどは、当人のやつれ果てた状況をよく映し出していて、寅さんシリーズには観られなかった迫力ある映像も楽しめた。
主題曲には尺八をつかい、その変奏をフルートで映画中にも用いて、ものかなしい雰囲気を醸し出していた。

監督:山田洋次
脚本:山田洋次
主演:真田真之、宮沢りえ
音楽:富田勲
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「モウは人間を計るのに基本的に三つの物差しがあるという」

2005年01月01日 | パルプ小説を愉しむ
『幻のペニー・フェリー』(リック・ボイヤー)で語られる台詞ー
「モウは人間を計るのに基本的に三つの物差しがあるという。その人間が何であるか、何をするか、何を持っているかの三つである。この三つの中では最初の物差しが最も重要であり、二番目はさほでもなく、三番目はほとんど意味がない。」

主人公の”ドク”チャールズ・アダムズには憧れを覚える。腕の良い口蓋外科医でありつつ(当然裕福でボストンに住宅、ケープコッドに別荘、そしてヨットも持っている)、冒険心あふれ冒険に飛び込んでいくことをためらわない。
そんなふうに書くとヒーローのようだが、本人が与える印象はヒーローとは無縁で、好奇心をおさえられない(またはちょっとお節介)性格が災いして事件に巻き込まれていく極めてお人よしな主人公である。
探偵の素養がある訳ではなし、訓練を受けた訳ではないそんな’ど素人’が余計なことにクビを突っ込みたがる持ち前の性格からどんどんと事件の中心へと入り込み、読むのが中断できなくなる。
必ず相棒となる友人(これが常に主人公よりも強いのだが不思議と主人公の方が目立ってしまう)が現われては一緒に事件が解決されてしまう。今回は殺されたメッセンジャーサービスの相方が一緒になって解決。
奥さんのメアリーも十分に魅力的。決して若くはないのだが、コケティッシュかつ愛情あふれ、そしてイタリア系らしく気が強い。
裕福、あふれる冒険心とぶち当たる冒険、魅力的な奥さん、こんな主人公に憧れない方が無理だろう。
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