何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

ぶれない経営

2010-01-08 23:17:11 | Book Reviews
「ぶれない経営 ブランドを育てた8人のトップが語る 首藤明敏・編著、ダイヤモンド社、2009年2月26日

p.i 会社とは、「ゴーイングコンサーン」すなわち持続的に活動する組織である。短期的にでも儲かればいい、という姿勢は会社の本来の姿とは言えない。

p.ii 個性の多様さとは裏腹に共通していたのは、どの経営者も自分なりの明確な経営哲学を持っていること、そして短期的な利益の拡大よりも自分なりの理念を守ることを優先してきたことである。さらに、一見矛盾するが、徹底してこだわる部分がある一方で、時代の変化に的確に対応する柔軟性を兼ね備えていたことである。

p.iii ぶれないというのはただ固いということではない。芯は確固としているからこそ、逆に動きは柔らかいし、早い。
 そして、変化に適応するぶれない経営と実践するためには、時代の変化に合わせるだけでなく、自ら時代を引っ張っていこうという気概も必要だ。受身ではなく能動的。

p.18 職人さんとの緊密なものづくりができないと、作られるものは限られてくるし、一方で消費者の商品を見る目がどんどん上がっていますから。

p.36 遠い先じゃなくて、近い目標があればそこに対して努力するという、その積み重ねしかないんですね。だから私は、いつもスモールステップなんです。これしか夢の実現はないんじゃないかと思っています。企業でも人でも「身の丈に合う」という事柄を、確実に努力していく。これ以上のセオリーはないんじゃないかと私は思ってやっています。

p.39 私たちの会社の規模が変わっていっても、「どうだ、大きくなっただろう」なんて言ってる社員がいたら、もう会社は続かないですね。お客様の目線から見たときに、お客様がその会社を必要だと思ってくださるようにならないといけない。

p.40-1 (お客様であろうと経営者であろうと)「偉い人は間違ったらいかん、普通の人は間違っていい」という社会でなく、もう少し冷静に見ていかないといけないのではないでしょうか。
 やっぱりお客様がもし間違われているときには、しっかり説明させていただき、間違っていると言える勇気がいるということです。それは言わなきゃいけないと社員には伝えています。なぜなら、間違っているものまで正しいとしたら、今度正しいことがつぶされていきますよ。お客様だから何でも聞き入れればいいかっていうと、これは違うと思います。

p.46 時代の変化を察知するためには、常に勉強して理解しておくことです。そして、今一番大切なのは、そういう変化が来たときにすぐに対応できる企業の体質を作っておくこと。それを作るのは何か。それが「今ある現実の中で最善を尽くすこと」なんです。今起こっていることに常に手を打つ、そして中長期の変化に全部対応できる体質を作っておく、と。

p.61 軽井沢の社員が仕事を楽しみ始めてくれたと実感したときがあったのですが、それが経営者になって最初の達成感を感じた瞬間でした。

p.65 満足度を上げるのはコストをかければ簡単にできます。短期的に利益を高めたければ、顧客満足を犠牲にすればこれも達成できます。しかし、顧客満足と利益率を両立させることは簡単ではなく、そこがプロの運営会社としての実力が問われる部分。

p.68 効率を上げるということは当然のようでありながら、特に再生の現場では思っている以上に組織内で反発が発生します。長いあいだ行なってきた方法へのこだわり、無駄がある手順のほうが結果的に質が高いのではという思いなどから、お客様への気持ちが強いスタッフであるほど、「効率化」という名のもとの変革には納得できない部分も多いのです。
 よい経営とは何かを考えるときに、顧客志向のスタッフのこだわりや納得度を優先したい気持ちが常にあり、それは経営者としての葛藤でもあります。
 効率化とは顧客満足度を犠牲にして利益を上げるということでは決してありません。生産性を上げることで、新しい魅力の創造、そしてよりよい労働環境の整備につなげ、それは顧客満足度と収益率の両立につながっていく。

p.70 よき経営とはあくまでも長期的に競争力を維持し、社員とその家族が安定的に生活できる環境を守ることであるとすれば、会社にとってリスクがあっても、社員にとって辛くても、やるべきことをやるということが必要だと思っています。

p.76 女性ってよく「かわいい」という言葉を発しながら買い物をしますよね。でも、それは「モノがかわいい」わけじゃなくて、「それを買ってる自分ってなんてかわいいんだろう」なんですよね。

 ジェネリックを使っている自分って、なんてカッコイイんだろう、立派なんだろう、といった感覚になれば、使用促進につなあgるのだろう。

p.81 営業って、会社の方針や自分を売り込む場ではない。お客様の役に立つことと取引することがイコールにならないといけない。

p.88 数が売れた売れないで商品を判断せず、総合的に見て、これは稼ぐ商品、これは見せる商品と。両方あるから「楽しくて稼げる」というわけですね。

p.92 人件費を抑えてます、家賃を抑えてます、それで安く売ります、なんてビジネスをしたくないし、それで戦おうなんて思わない。逆にどれだけ一つの商品に付加価値を載せられるかで戦おうとしているんです。

p.94 同じブランドで縛っていくのって、自分たちのエゴですよね。お客様にとってあんまり関係ない。

p.108 患者様全員が飲んでいいわけじゃないけど、飲んでいい人もやまほどいます。極端に言えば末期がんの方が飲みたいと言ったときに、どうすれば最善でしょうか。「病院では飲めない」という固定観念を取っ払って、「どう飲ませるか」と考える。

p.108 医療なんて「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」ですから。

p.108 ブランディングというのは風土づくりと、この風土づくりがベースにあって、それをプロモーションしていくことだと思うんです。そして、本物の人が来たいと思うところがすなわちブランド。

p.112 医療現場といのはまさにプロスポーツと同じ構造であるとわかる。プロフェッショナルがチームを組むところ、そして選手たちが最も活躍する場を求め歩くところ、そして選手の気持ちがわかる監督が彼らがベストを尽くせる環境を与え、指導する。それがうまくいかなければ勝負に勝てないし、何よりファンがつかないのである。

p.115-6 ただ、医師や看護師を増やせばいいというのは間違いです。そもそも、医師や看護師を増やしても、プロとしての業務でないことをやらされてはモチベーションが上がるわけがない。看護師は看護師の仕事に専念できる環境を整えるのが大事なのです。

p.118 病院というのは町のインフラです。

p.118-9 病院は、料理にたとえると、メインディッシュとはなりえなく、「出汁」なんです。出汁だけの料理はないけれど、料理にうまい出汁は欠かせない。「最高の出汁を提供できるから、メインディッシュを作りたい人は来てください」というように考えています。

p.120 一般的に医師をたくさん雇うと人件費が上がると考えるかもしれませんが、逆なんです。病院経営は、医師の質と量を確保しないと成り立ちません。だから、自治体のような定員制ではなくて、まず医師、看護師、スタッフの適正数を揃えることが必要なんです。

p.120 儲けることに価値を持ってしまったら、もう病院なんてやめたほうがいいんじゃないかな。能動的にチャレンジしているからこの仕事に取り組めるのです。

p.142 環境の変化の中で常にお客様の役に立つ会社であり続けたいですね。

p.147 「山、高きがゆえに貴からず。緑、濃きをもってよしとす」。会社に置き換えてみると、売上や利益が大きくても、禿山じゃどうしようもないわけで、やっぱり小さくても緑がしっかりと繁っている濃い山が尊い山なんだよ、ということ。

p.158 ほとんどの人は気がつかなくても、「あれ、こんなものがあるんだ!」と一部の人が気づけばいい。そうなると、業界関係者等から「そこは外せない」と言ってもらえる。これが陳腐化しないで生き残れる方法論だと思っています。

p.169 「経営者は還元」

p.180-2 「みんながやることをやるな。みんながやらないこともやるな」と。つまり、みんながやることは大企業がやるから絶対勝てないし、みんながやることは危険だからやっちゃダメだと。みんながやるかやらないか考えているところを思いっきりやれ、というわけです。

p.187 いろいろなことがあるかもしれないが、お互いに許す心を持ち、最後には許し合おうなって。厨房の修業はすごく厳しい。だからこそ許す。許しながら叱るんです。叱られるほうは許されると思って叱られる。だから続けられるんです。許さないで叱ったら、その子はいなくなる。

p.190 不景気になるとお客様は出費を抑えますが、そのぶん安全なところに行こうとする。

p.192 彼らが突然の不況や環境変化にぶれがないのは、なによりも、経営者としてこだわるべき軸がはっきりしているからである。売上やシェアといった数字を軽視しているわけではないが、それを第一義の目標として置いていない。目の前の売上を犠牲にしても、絶対譲れない、水亜kらのこだわりをはっきりと自覚している。

p.193 目先の売上や事業の拡大よりも、大切にするものがはっきりとしている。そしてそれを経営者のこだわりにとどめず会社の理念や方針として昇華させている。さらに、それがお客様にブランドの「らしさ」として共有されている。

p.197 これらの経営者に共通しているのは、最終顧客に提供するべき価値を現場で実現してくれる従業員に対して、顧客と同じように真摯に対峙していこうというスタンスであった。事業拡大のビジョンを従業員に一方的に提示して、自分についてこいといった、いわゆるワンマン経営者の態度とは異なる。

p.199 どのような選択をしようと経営者が常に考えなければならないのは、会社は、オーナー家のものでも、社員のものでも、株主対策だけで動くものでもない、社会の公器であるという基本だった。


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