庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

新エネルギー設備による発電コストの実力と原発の比較は。

2011-05-29 | 快適エネルギー社会問題
フランスのサルコジ大統領は、「原子力発電技術は安全性を最優先するべきで、価格を優先するのは禁物だ」と声を大にして、OECD会議で存在感を示した。
菅首相は「原子力エネルギーの安全性への挑戦」を講演で表明したが、力強さは全くなくて、その真意のほどが疑われる状況である。
安全性を強化する方向は、今までの「原発の発電コストは安い」という売込文句を封印する事を意味する。

日本の原発発電コストの欺瞞は、読者にはもう解って頂けたと思いますが、マスメディアで
キチンと公表されるには、時間がかかり、2012年の後半になってしまうのではないか。
都合の悪い情報は、できるだけ出さないし、出すにしても、時間を遅らせて小さく扱わせることに腐心をするのが、経済産業省のエネルギー関係者、そして、悪名高い電気事業連合会である。

その一方、再生可能エネルギー(経済産業省は相変わらず「新エネルギー」と呼ぶ)の発電コストは、割高であるからとして、これを普及させるには、国民負担(電気料金の値上げ)につながると、宣伝にいとまがない。
最近になって、やっと原発を無理押しする事が、自省の利益にならないと悟り、「新エネルギーを導入・推進し資源枯渇の不安がない社会へ」との表題で、キャンペーンを始め、新聞の全面広告を出している。(2011年5月26日)

「新エネルギーとは、太陽、水力、風力、バイオマス、地熱など、資源が枯渇しない再生可能エネルギーのうち、技術的に導入段階にありながら、コストが高いため普及に支援を必要とするもの」をいうと、資源エネルギー庁は説明している。
では肝心の発電コストは、どうかというと、全面広告のどこを見ても、その数値の実績も実力も書いていない。
つまり、公表できるほどの信頼性のあるデータを持ち合わせていないか、持っていても、都合が悪い数値なので出さない。という、相変わらずの国民軽視のエネルギー政策にとどまっている。

そこで、とりあえずは、「再生可能エネルギー電力固定価格買取り制度」の閣議決定案の数値を引用する。
太陽光発電:40円/kWh。(家庭用の小規模は42円/kWh。)
風力、小規模水力、バイオマス、地熱:20円/kWh。
この価格で買取りを保証すれば、各地で設備の導入が促進されると想定していることになる。
発電コストが現時点で、この価格以下の実現が出来ているとみなしている。

太陽光発電については、少し、立ち入って評価すると、この発電コストを算出する場合に、多くの事例では、10年間の発電量で設備費用を償却する事になっている。
しかし、設備の耐用年数の実力は、すでに20年以上もたっているソーラーセル(太陽電池)でも、初期の8割上の発電量が確保されている。
最近の技術では、25年間の発電性能を保証するメ―カ―も表れている。
その場合、太陽光発電の発電コストは、どのように算出するのが妥当なのか。(以下、次回)

1 コメント

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原発とLNG液化天然ガス発電 (アッちゃん)
2011-10-09 12:43:13
 今回の福島第一原発事故の責任(補償問題として考えるのが分かりやすい)が、事故の当事者である東電にあるのか、原子力推進施策や安全保障を行ってきた政府(経済産業省)にも及ぶのか、国会で問われるのは当然であるが、事故の2年前までは原子力推進の主体が自民党政権であったことも問題解決を複雑にしている。

 実態上、経済産業省と電力業界はこれまで一体化して電力エネルギー供給の責任を負い、電力エネルギーのうち3割弱を原子力でまかなってきた。さらに20年後には原子力発電の割合を5割まで高めることを、民主党政権になってからも宣言したところである。この施策に政財界マスコミはもろ手を挙げて賛成してきた。何故これほどまでに、大手マスコミを含めて日本の政財官界は原発に入れ込んでいるのか?


=電力企業にとっては安価な原発発電コスト=
 それは、これまでは原子力発電は彼らにとって儲かるメシのタネであったからと言えよう。最近でこそ火力発電やLNGガス発電などは、ちょっと気の利いた大企業などが各地で気軽に設置するようになってきた(近年、電力企業が保有する送電線網の利用が渋々ながら認められるようになったからだが)。 しかし原発の設置となると、さすがにその危険性から政府(経済産業省など)が特に安全に対して厳しい許認可権を持つことが国民からも認められ、沖縄電力を除く10電力企業のみが原発施設を独占するシステムを作ってきた。一般企業が原発保有することなどはありえないとされてきた。 しかし、今回の事故はそのシステムについての国民の信頼を裏切った。 財界などからは、この夏の電力供給が危ないとの理由で安易な原発再稼働のアピールがされているが、安全神話を助長してきた財界にその反省が全くないのが奇妙に見える。

 原発が電力企業にとって儲けるタネであったということについて説明しよう。 発電用原子炉の法定耐用期限は通常15年であり、15年経てば設備投資は減価償却できるように原発コストが計算されている。 原子力発電所建設申請の際の認可のために経済産業省電源開発調整審議会に電力企業が提出した資料によると、発電コスト試算額は原子炉と立地によってばらつきがあるが19円-7円、平均して13円/kwh程度である。すなわち15年間13円以上で電気を国民に販売すれば元が取れ、そのあとは原子炉稼働して発電すればするほど丸儲けなのである。日本の家庭向け電気料金は約20円/kwhだから、原発は実際には10年くらいで元が取れてしまう儲けのタネであった。

 日本の商用原発54機のうち18機(全体の1/3)が既に30年以上稼働しており、これらはとっくに減価償却して元を取っている。原発建設15年経ったから電気代値下げしましょうという電力会社は聞いたことがないが、日本の電気代はEUの一部国を除くと、事故前の時点でさえも世界で高い部類に入る。如何に電力会社が儲けているかということだ。この巨額の儲けの一部が、原発推進宣伝費として新聞TVなどのマスコミ、推進国会議員への政治献金、パーティ券代、原発立地市町村への寄付、電力子会社の設立資金、電力会社役員や天下り官僚への高い給料に回っているだろうことは容易に推測できる。

 発電コスト見積もりの比較というのがある。経済産業省資源エネルギー庁が出した2010年試算では、原子力5-6円/kwh、火力7-8円、太陽光49円となっている。この数字は宣伝されているので良く見かけるが、実はこの資源エネルギー庁試算では、原子炉建設の際の漁業補償金、原子力に特有な再処理費用、1 kWhあたり1 - 2 円の燃料費等のバックエンドコストは含んでいるが、電源三法による地元への交付金 (税金)、電力企業からの地元対策寄付金、原子炉廃炉解体費用、原発事故の際の賠償金等は含んでいない。 これらの経費や、国が開発支援する高速増殖炉もんじゅや国際熱核融合実験炉ITERの研究費も必要経費に算入すると、国民全体として支払う原子力発電コストはさらに高くなるはずであり、この資源エネルギー庁の原発コスト試算は低すぎるとの声も強い。

 一方で、米国エネルギー省が2016年に稼働させる予定の発電コストを試算したところでは、改良型の原子力10.3円、LNG火力5.9円、石炭火力9.8円、太陽光19.0円となっており、すでにここでは原子力発電のコスト優位性は失われてしまっている。 おそらく日本の古い原発は、自動車に例えるとエアバッグもシートベルトも装備せずに、安全性軽視の安上がり設備で運転してきたようなものであろう。自動車だったら即リコールだ。
 今回の津波では全電源喪失が原子炉破損重大事故を引き起こしたが、そもそも停止後もウラン燃料棒が炉心熔融するほどの熱が発生するものなら、その余熱エネルギーを活用して自家発電するなりして、原子炉へ冷却水を回すくらい至って簡単な技術のはずであり、それを知らなかったとは言わせない。

 このような古くて安い原発を30年どころか40年超も稼働させようとするのであれば、水素爆発しないように原子力建屋天井に水素ガス抜き穴を開けたり、津波浸水防止として原子力建屋前に土嚢を積んだりドアに浸水防止のゴムパッキンをつけたりするだけで済まされるものではない。 高い頑丈な津波防波堤建設は当然のこと、それ以外にもしっかり金をかけて、新設米国原発並みの安全設備を具備させたあとで再稼働させてほしいものだ。
 実のところ、地震国日本の原発は今回の原発事故で米国よりさらに高価な設備にしなくてはならず、今後は政府や財界がどれだけ新規の原発建設を勧めようとも、電力企業自身が原発は採算が取れないとして建設を拒否すると思う。 コストメリットがなくなり、経済産業省からは箸の上げ下げまでうるさく監視され、地元自治体からはことあるごとに寄付を強要され、万一の事故の際には莫大な補償を支払わなければならないやっかいものになった原発を新規に建設する電力企業が1社でもあるとはとても思えない。

 追記するが、原発事故を受けて政府が2011年8月に新たに試算した原子力発電コストは16-20円/kwhであったと電気新聞社が報道し、日本学術会議では早速この数字を取り入れて将来の日本の電気料金体系を試算したという。 この政府試算の原発コストには、これまでの原発立地補助金、原子炉廃炉費用や原発事故の際の賠償金、プルトニウムリサイクル費用その他一切合財が含まれると推測されるが、それにしても今回の政府試算16-20円/kwhは、従来の経済産業省資源エネルギー庁の原発コスト試算5-6円/kwhよりも 3-4倍も高い。 これほど原発コストが高くなってしまえば、今後原発新規建設を希望する電力企業などはもはや日本にはおるまい。


=原子力発電施策の解決すべき課題と、安価なLNG発電の活用=
 今解決すべき課題は、まずひとつめは、すでに建設してしまった原発について国民が再稼動に納得する安全基準を確立すること。あとひとつは、原発はどれだけ修理しても寿命は例えば50年と決めてしまうことだ。廃炉化コストが高額だからといって、いつまでもズルズル原子炉を稼動させることは許されない。50年と決めてしまえば50年後には日本の原発はゼロになることになるが、それくらいの期間をかけて原発脱却し、液化天然ガス火力発電(LNG火力)や再生エネルギー発電に置き換えて行くくらいの知恵はまだ日本にはあるだろう。 今年の夏や冬の電力需給を乗り切るために、点検停止中の原発を安易に再稼働させようと希望する者が財界、マスコミ、官界、政界に多く居るようだが、その人達は万一再び原発事故があった場合には、補償の無限責任を誰に取らせようとしているのだろうか。

 米国エネルギー省の試算では、2016年頃のLNG発電コストは原発の半分程度であり、安価なことはすでに述べた。現在は幸いなことに、非常な円高であり、LNGの輸入コストも低い。LNGは石油と違って世界中のあちらこちらに埋蔵産地がある。米国やカナダで、2-3年前に地下オイルシェール(頁岩層)からのLNG採掘法が開発されて以来、LNGの価格はそれまでの半値以下になり、日本はアメリカからLNGを安値で長期購入する契約の交渉中である。 また将来は、日本近海でLNGの一形態であるメタンハイドレートの採取ができるようになる可能性さえもある。
 LNGは二酸化炭素の発生量も石油よりだいぶ低いので、地球温暖化対策としての二酸化炭素抑制を政府が急ぎ過ぎなければ、日本の電力企業や大電力使用企業、地方自治体などは、今後は100万キロワット級の原子力発電所に相当する巨大LNG発電所を建設して安価な電力を確保するとともに、余剰電力は東京電力などに売電供給してゆくことになると私は推測している。 すでに川崎市では東京ガスなどの巨大LNG火力発電所が稼動しているし、東京都も巨大LNG火力発電所建設を計画していると聞く。


=太陽光ソーラー発電=
 太陽光発電に関しても、資源エネルギー庁では49円/kwhと異常に高く見積もっているが、米国エネルギー省では19円/kwhと試算しており、原発の2倍程度の発電コストである。 高価な昼間電気料金として19円程度であれば、他の発電と比較しても十分に対抗可能なコストであるし、技術開発によりさらなる低コスト化も見込める発電方法である。 なお太陽光に関しては、今はやりの広い土地が必要なメガソーラー発電所を作るよりも、小規模分散ソーラー発電が望ましいと、私個人は考えている。
 なぜならば、日本の地方に行けば過疎地の農地(急傾斜地や大型耕耘機が入らない分散地で大規模集約化は無理な土地である)は、耕作者が高齢化して農作業が困難になり、鹿や猿やイノシシの害もあり、耕作放棄地になっている。 このような耕作できなくなった南向きの急傾斜地や休耕田畑の10mx10mほどの土地に防雑草用の黒ビニルシートを敷いてソーラパネルを敷き詰め、土地にかかる税金は農地扱いのままとすれば、農地を放棄するよりも太陽光ソーラー発電に投資してみようとする農家の需要は多いと思う。

 重要なポイントは、高齢農家向けとしてソーラーシステム投資を5年間で回収できるように安価にすることだ。狭い家の屋根に載せるわけでもないので、パネルの発電効率や枠強度などは少し劣っていても良く(その様な農地用ソーラーパネルの日本標準規格を政府は早々に準備すべきである)、20万円/kwパネルを農家用として供給できれば5年間で投資を回収することが可能になり、高齢農家も農地を放棄するよりもソーラー投資をして月に2万円程度でも収入を得ようと考えるのではないか。 

 農産物とは太陽の恵みの産物だが、その産物はコメ・ムギや野菜などの食品ばかりではない。木材バイオマス生産も、綿花栽培や花卉栽培もタバコ・薬草栽培もある。 これらと同じように、太陽の恵みで生産されるソーラー電気は農作物であると農林水産省が認定しさえすれ
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