今や先進国の問題で解決策が不透明なのは、「デフレ経済への停滞」に対する有効な解決策が提示されないことである。
日本は20年以上もデフレ経済状態になり、安倍政権の「超金融緩和政策」は、初めの出だしこそは、「円安誘導効果」が功を奏して、株価の上昇を招いた。
円安効果による輸出依存企業の若干の収益増加があるが、輸入依存度の高い企業にとってはマイナスに要因しかない。
今では日本の輸出依存度は15%程度であるから、円安誘導が経済にとって好影響があるとは限らない。
それを、株価の上昇の機運に毒された「マスメディアの論調」が、「アベノミクスの成果だ」と持て囃したので、超金融緩和政策の成果だと勘違いさせる。
それでも、経済の活性化には、輸出依存企業の経営を支援することが、国益にかなうとしているが、今や企業利益の大半は内部留保か海外への投資にまわる。
輸出依存企業の大半の株式は外資系の所有であり、需要の増加が見込めない「日本国内への投資」は、ほんのわずかしか回さない。
株主は、日本の経済の活性化などは「関心の対象外」であり、「投下資本利益率」が最大の市場に興味があるだけである。
だからと言って、「投下資本利益率」を、新興国に対して先進国が優位に保つのは至難のことであり、幻想に近い。
安倍政権は、「TPP交渉が批准」されれば、日本国内への投資が増えることは間違いないと、盲目的に信じているだけである。
ここに来て、アメリカの労働者の反乱ともいえる「トランプ政権の誕生」によって、「TPP交渉の批准」は破棄された。
アメリカ国内に投資を呼び込むとの狙いが、トランプ大統領には理解不能の「盲目的な経済論」として退けられたのである。
これを持って、「保護貿易主義」の経済に逆行していくとの批判が世界中に吹き荒れているが、自由貿易をさらに推進する根拠は疑問だらけである。
自由貿易協定によって、利益を最大に得るのは、NAFTA(北米自由貿易協定)の20年間を見れば明らかである。
隣国のメキシコが経済発展して、製造拠点を喪失したアメリカは、製造業に従事していた「中産階級が激減」した。
トランプ大統領が、「アメリカに雇用を取り戻す」と政権公約して、これから「NAFTAの再交渉」にはいるが、成果の方は不透明である。
そんな状態にありながら、日本の安倍政権は「多国間の自由貿易協定」が、日本の経済活性化に貢献して、将来の中間所得層を充実させる、と盲信している。
安倍政権の経済政策ブレーンは、既に、超金融緩和政策の効果に白旗を掲げ、国内と投資を活性化させる別の政策の必要だというが、何も出ない有様だ。(続)