日本経済がデフレから脱却して、民間企業の活力を引き出せる状況を作り出さなければ、いつまでも、財政出動による景気刺激策に頼ることになる。
これは、国債の増発によるしか財源を生み出せる可能性はない。
政権交代を増税なき財源の捻出を公約して、2009年に実現した民主党政権は、税金の無駄使いで財源を生み出せると豪語していたが、ほとんどゼロだった。
デフレ脱却対策には無策であったので、すぐに消費増税の路線に転換してしまい、それまでの期間では、公約した『人への投資』は、ほとんど実現しなかったので、国民の気分はデフレマインドに染まりっぱなしであった。
これに対抗する政策方針を、「超金融緩和によるお金の潤沢な流通」を最優先に転換する経済政策を掲げて、民主党政権の無策ぶりを批判した安倍政権に交替した。
確かにはじめの1年間で、「デフレマインドの払拭」に成功したかに見えたが、賃金が上がる前に円安誘導の弊害の物価上昇が起きて、国民の間には「アベノミクスの効果に疑問」が広がってしまった。
この期間にあらゆる政策を動員して、底辺の働く人たちへの所得増加をはかれば、
消費購買力を強化することができて、デフレ脱却に加速力を与えただろう。
しかし、安倍政権の最大の誤算は、大企業の利益が周辺に恩恵もたらすような、【トリクルダウン効果】は、グローバル化時代には通用しないと認識しなかった。
旧時代の経済学では、労働市場をモノの取引市場と同じ原理で取引されると想定してきた。
つまり、賃金水準は、労働者と雇用主との交渉によって、需要と供給の原則の沿って決まるモノで、政府が干渉すべき取引ではない、との思い込みである。
だから、政府が『意図的に賃金の引上げを法制度で規制』すれば、雇用が減少してしまうから、労働者の利益にはならない、というのだ。
ほとんどの経済学者が、最低賃金の引上げは【雇用にマイナスの効果】をもたらす、という理論は、アメリカの最近の研究では間違いである、と証明された。
これは、最低賃金にとどまらないはなしで、賃金は可能な限り引上げるべきなのである。
民主党政権時代に、最低賃金の目標を1000円/時間、としていたのに、雇用が減りそうだとの不安から、民主党政府は何もしなかった。
その影響もあって、民間の賃上げ実績が、惨憺たる状況に推移して、デフレ経済に停滞したままであった。
安倍政権は、上からの利益増加による好循環を期待したが、大手企業の一部しか賃上げに応じずに、【中小企業や地方には賃上げは広がらない】。
この現実を認識すれば、政府のあらゆる政策を動員して、すべての企業の賃上げを引き出すことに、アベノミクスのエンジンを、加速するべきである。
「同一労働同一賃金」の目標は、その手始めの試金石になるだろう。(続)