安倍政権は「一億総活躍社会」を目指す、と抽象的な言い方の「将来ビジョン」らしき目標を、3年経ってから掲げている。
政権交代を果たした直後に「1本目の矢」として掲げたのならば、スジが通っていると見えるが、はじめは【お金の流通のこと】しか関心がなかった。
リスクを度外視して異次元の「超金融緩和」を実施したり、「公共事業を倍増」させて、土建国家の復活を目論むような、コンクリート重視の「2本目の矢」だ。
「3本目の矢」は将来ビジョンもないままの「成長戦略への民間投資」を掲げたが、【研究投資や大企業の設備投資】を減税で優遇する「お金のこと」だけだ。
結局の所、お金ばかりを動員しても、大企業も富裕層も【海外の投資利益率】が良い所に回すだけで、日本国内の経済活動は冷え込むばかりの様相である。
現代のグローバル化が進んでいる世界経済では、お金は「資本収益率」の高い地域を求めて自由に移動するのは当然の流れだ。
日本国内のように、【労働分配率を20年間以上も下げ続け】て、「賃金の総体的な減少傾向」を定着させた市場には、新規の投資をしないのは経済理論どうりだ。
それを「大手の経団連加盟企業経営者」に、御願いをして「賃金引上げ」をさせようとしても、経営者は株主の意向に沿うしかない。
社会的な評判を落とさない範囲の、申し訳程度のベースアップがせいぜいだ。
社会的評価よりも、自社の存続と従業員の生活保障が最優先の下請け企業では、発注元の大企業の様子を見ての、【最小限度の給料引上げ】しかできない。
要するに「親企業にお金は届いても、中間の企業、下請け企業にはわずかしか届かない。」ことは、だれでも知っている。
それを知らないはずのない「政治家や経済専門家」は、表向きだけは、経済の好循環のためには「超金融緩和」は必要だ、今でも肯定して、追加の政策を迫る。
日銀はついに「マイナス金利政策」にまで踏み込んで、とにかく企業に「おカネを使うようにし向ける金融環境」に何が何でも、突っ走るしかない。
「消費購買力」の大元を減少させておきながら、その方面の『働く人への潤沢な還元』には、何も手をつけないで「デフレ脱却が最重要」と言い張る。
言うことを探し回って、抽象的な「一億総活躍社会」を言いだす始末である。
それならば、[非正規雇用社員]の待遇を、まず『正社員化を促進する法制度』を実現すれば、最前線で働く人の『やる気を引き起こす効果』がでるであろう。
少なくとも、「ユニクロのファーストリテイリング社員」の様に、希望を聞き入れて、「地域限定正社員」に登用すれば、活躍度は大きく向上する。
それを、民主党政権で3年半、安倍自民党政権で3年もたってから、「同一労働同一賃金」などのタテマエ論議を、今から始める「ノー天気ぶり」を晒している。
人を大事にしない「金満頼り政権」では、デフレは延々と続くだろう。(続)