今回の安倍政権の成長戦略は、前回の不評を挽回するつもりで焼き直しをしたが、内容が伴わないことは、以前から少しも進歩していない。
産業界の要請に応えることばかりが目立って、国民の要望を実現する戦略的な取り組みは、全くと言ってよいくらいに見えない。
国民には負担増の消費税アップや、医療費の増加がのしかかり、さらに、福祉関連は削減する手直しが負担増となる。
結局、大企業が儲かった利益を、給料で従業員に還元しなければ、経済の停滞に落ち込むコトは確実である。
この働く人への還元をする戦略は、安倍内閣の骨太の方針からは欠落している。
この4月の消費税増税の景気落ち込みを防ぐために、大企業にベースアップの要請をしたのは、確かに安倍内閣の姿勢を示す意味があった。
大企業が率先して、従業員の給料へ還元する動きを活発にすれば、中小企業や下請け事業者の従業員の給料も増加すると、思い描いていたとすれば甘い。
大企業といえども、コスト削減の動きを緩めるわけにはいかない。
当然、外注に出す仕事の発注額は、コストダウンを要求するだけで、中小企業の従業員に報いる余裕が生まれるわけがない。
上からの恩恵で、働く人への労働分配率が増えることは、期待出来ないのだ。
資本主義体制では、賃金上昇の手段は、下からの押し上げが、課題なのである。
それが、まったく考慮されていない「ノーテンキな経済成長戦略」は、砂上の楼閣であって、経済活性化の流れは一時的な現象に終わる運命にある。
グローバル化された大企業の利益は、経済成長が著しい海外の市場に向けて、新規投資をする元手に回ってしまうだけだ。
日本国内市場は、働き手が減る一方の「少子化社会」であり、賃金も上がらないから「消費購買力は低迷する」のが確実な、縮小に向かう市場だからである。
大企業の経営陣は、日本の国内の需要は停滞するとみて、事業発展の戦略は海外での市場開拓に向けられている。
それを、法人税を減税したからといって、国内への投資を考える理由はない。
その上、総需要不足の根本的な対策は、何も打たれていないのだから、株式バブル、金融バブルが凋んでいけば、景気低迷に落ち込むのは確実である。
その様な市場に、新規投資を積極的にしようとする経営者はまれである。
経済成長の根本は、消費意欲の高い若年層、子育て世代の収入増加が必須だ。