経済の活性化には【超金融緩和による円安誘導】ではなくて、円安による物価高を上回る『賃金の引上げ・ベースアップ』である。
安倍政権も政権発足時には、企業の利益を増やせば、自然と国民の給料増加に波及するものとみて、いわゆる「トリクルダウン効果」に期待をしていた。
しかし、昨年の前半は、金持ち層が臨時に儲けた(株価上昇のよる資産増加)お金の一部が、ぜいたく品の購入に流れて景気が良くなった様な話が、マスメディアに流されて、気分だけは景気回復に期待が寄せられた。
しかし経済活動は、その様な気分だけでは持続できないので、昨年後半の経済成長率は年率で0.7%に落ち込み、企業の投資意欲は停滞したままである。
慌てた安倍政権は、やっとデフレ経済の最大要因は、【賃金デフレ】にあることに気がついて、経団連に対して賃金の引上げを、政府の立場から要請した。
これを、軽薄なマスメディアは「官製春闘」なる呼び名を冠して、異例の要請であるかの様に、批判的に皮肉を込めて報道した。
長年に渡って職務怠慢に浸っていた「大手企業の労組幹部」も、やっと賃金のベースアップ(基本給料の増加)要求に動かざるを得なくなった様である。
そして統一要求水準は、最低レベルの0.6~1%程度の要求額で、横並び方式で、責任をできるだけとらないで済む、護送船団方式である。
最大の業績をあげている「トヨタ自動車」も、他社の経営に悪影響が出ない様に低い賃上げ額の回答をしている。
これに引きずられて、民間各社の回答は、2013年度の物価上昇率にも達しない様な、低水準のベースアップ回答に留まってしまった。
これでは、【賃金デフレの解消】には、ならないのは明らかである。
その一方で、経済産業省の動きは、着実に「賃金デフレの解消に一歩でも」との狙いで、東証一部上場企業1800社へのアンケートを始めている。
3月末までの各社の『賃金引上げ実施状況を公表』するのが狙いで、ベースアップや一時金の妥結額を一覧表にして、国民全体に広く認識してもらう。
その際には、各社の収益状況も併せて、そのまますべてを公表する意向である。
つまり、大手の民間各社の成果を、業績に連動して「従業員の給料アップ」に、配慮(労働者への分配)が適切に実行されているか、が一目で判る様にする。
政府が経団連各社に「賃上げの要求」を要請する「官製春闘」は一時的な効果もあるが、業績公表に匹敵させて「給料引上げの成果」を見える化する。(続)