ロシア側からすれば、現在の北方4島を日本に返還した後で、日米安保条約を盾にして、アメリカ軍基地が建設されては危険極まりない。
ミサイル発射基地ができたり、遠隔操縦の無人攻撃機の基地ができては、ロシアの半分がアメリカの軍事支配下に置かれてしまう。
外務省高官が、2000年代のはじめに、「北方4島には、安保条約の規定上では、基地を建設することはあり得る。」と発言した。
ロシアの懸念を逆撫でする「大きな失策発言」が、ロシアとの平和条約締結に完全にブレーキをかけて、両国にとっての大損失であった。
これを安倍首相は、誤解にもとずくロシアの認識間違いだ、と、かわすつもりだが、そうは安易にはすまされない。
軍事力による脅しを政治信条とするアメリカの体質と外交戦略から、一歩でも譲ればそこから徐々に侵食されるのが、外交戦である。
それでもロシアには、今の経済停滞から抜けでるためには、日本の優れた技術と企業力を導入して、積極的な経済開発が急務としている。
アメリカと敵対しながらも、膨大な国土を維持するのが、最大目的であるから、日本の技術革新と産業界の力が、どうしても欲しいのだ。
日本が軍事力依存の国でなく、戦争志向がもっとも少ない国民と見て、
軍事戦略的に重要な北方領土を移管しようとしている意図を、しっかりと活かせる外交戦を控えて、今回は失敗してはならない。