地球温暖化問題に対する取り組みで、アメリカと中国の首脳が発効に前向きで、年内にも動き出せるようにしたのは、この対策が経済効果を発揮するからである。
ところが、安倍政権が「パリ協定」に最後まで抵抗して、協定締結後も2018年の発効に遅らせるように後向きでいるのは、経済活動にブレーキがかかると見ているからである。
なぜ経済活動にマイナスの影響が大きいとみているかは、政権与党の体質が「旧時代産業の代表である「経団連加盟の大企業」の支援を受けているからである。
その大スポンサーたちが「パリ協定」の締結には最後まで反対していた。
最後の段階で日本政府も譲歩して「パリ協定に署名」をせざるを得なかった。
それでも、協定の発効はギリギリまで遅らせて、経団連などには最大の努力の払っている姿勢を見せる必要があった。
そのようなわけ、先の「G7の伊勢志摩サミット」では、景気対策のために、「財政出動の必要性」を角国首脳にアピールしたが、取り合ってもらえなかった。
その反面で、世界の首脳陣は「経済対策にも効果が期待できる温暖化対策には力点を入れる」方向で、首脳宣言がまとめられた。
安倍首相としては、本来の主張を蹴られた上に、やりたくない課題を優先するように押し付けられた格好である。
そのためか、その後の安倍内閣の経済対策は方向性が全く見えない状態である。
今回のG20に先立っての米中首脳による「パリ協定の発効を年内に」の合意発表は、日本が完全に【環境先進国の座から追放された】形である。
安倍首相は、G20の写真撮影では、先進国の座から遠ざけられて、2列目にならばされた。
中国政府はわざと日本を辱める場を作ったようなものである。
これで、尖閣諸島での紛争に対して、中国を「優位な地位を印象つける機会」を、日本は作らせてしまったのは、国際的にも大きな失点であろう。
安倍首相は、国内の大企業を守ることばかりを優先するために、新産業の出番を遅らせて、経済成長の芽を育てる機会をますます先延ばししている。
たしかに、目先だけの経済対策を重視すれば、旧時代産業にもう少し頑張ってもらわないと、経済停滞がさらに長期化するだろう。
石油業界が、統廃合を繰り返しても再び活性化する可能性は毛頭ない。
原発業界が息を吹き返す可能性はほぼゼロである。
国民の安全に対する信頼感は失われたまま、延命に苦労するだけであろう。
電力業界は、再生可能電力以外は、新規投資の意欲は全く無い。
かろうじて、発電コストが安価だとの売り込みで【石炭火力発電業界に新設の動き】があるが、これも「パリ協定の発効」によって、今や風前の灯である。
旧時代産業を守っても「経済成長の芽」は、全く生まれないのは明らかである。(続)