日本の国民性は、もともと、大量に消費する贅沢志向は、嫌われる傾向にあり、富裕層の豊かな富は、あまり目立たないところに付加価値をつける。
住宅にしても、衣服にしても、絢爛豪華ではなく、名人芸的な仕事の質感を重視する「緻密な仕上がりの高級品」を尊ぶ精神構造である。
その正反対のアメリカ人の成功者は、広大な土地を所有して、豪華な住宅と調度品に囲まれる「見かけの重要さ」をシンボルとしていた。
その成功者のモデルとなっていた「不動産王のトランプ氏」が、次期大統領に選出されたので、目に見えやすい政権公約を、自身の達成目標に据えたのである。
短期間の4年で達成できる「ビジネス目標」を掲げたような政治目標だ。
「アメリカ流の政権目標」は、とにかく「リーダーシップを発揮して見える成果」を掲げることに終始する。
トランプ次期大統領は、自由貿易路線の象徴である「TPP交渉を離脱」して、国内に製造業を呼び戻して、白人の低所得労働者に雇用を確保すると豪語した。
「象徴的な製造業は自動車産業」であるから、現在の段階で「メキシコ生産を計画している企業の経営方針を、取りやめさせることは実行するだろう。
これは目に見える成果として、いの一番に取り組む課題だ。
それだけでは、とてもアメリカの製造業の復活が軌道に乗るわけではない。
錆び付いた「ベルト地帯」を再生することは、いくら不動産王の実績を持ってしても、4年間では成果がでる課題ではない。
それに気がつくには時間はかからないが、代替策となる製造業は、何があるのか。
トランプ次期大統領は、「温暖化問題は中国政府のでっち上げだ」と批判していたが、これは側近や識者からの情報を受ければ、すぐに転換するだろう。
それどころか、温暖化対策に必要な「再生可能エネルギー」への投資が、経済再生と雇用創出の効果的だとわかれば、見解を一気に変更するだろう。
しかし、再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電のパネルは、「中国製のコスト競争力」の前には、どこもかなわないのが現状である。
そこで、トランプ氏は、中国政府の為替操作と、太陽光発電パネルの「ダンピング輸出」に攻撃の焦点をあてる。
アメリカ国内に、「太陽光パネルの大量生産工場を誘致」して、中国製を締め出す策略を考え出すに違いない。
太陽光パネルの製造技術の革新は、日本メーカが得意としてきた技術だが、経済産業省が、2002年頃から日本国内での設置補助を打ち切ってしまった。
困った各企業は、海外の市場に活路を見つけ出す経営にせざるを得ない状況で、中国市場の将来性に目をつけて、中国に製造拠点を設置してきた。
その製造技術を真似て、現在では中国が世界で最大の製造拠点となっている。
この製造をアメリカ国内で実施するのは、数年のうちに成果が出る施策だ。(続)