20世紀の後半を通じて、世界は大きく二つの陣営に分断されて、経済政策は競争環境に晒されてきた。
欧米の先進国家が採用した資本主義経済国家と、国家の官僚が支配する「全体主義経済」「社会主義経済」「共産主義経済」の争いである。
1990年までに、この経済制度の優劣は、ほぼ決着がついて、ソ連を代表とする社会主義国家は体制崩壊した。
一部の小国が「社会主義経済国家」として、生き延びているが、経済制度の優劣は歴然としている。
これをもって、「歴史の終焉」などと、最終的な結果が出たとした経済評論家がいたが、無学浅薄のはなはだしい典型である。
資本主義経済は、全体最適な世界制度を狙った官僚支配に対しては、成功している制度であるが、至るところに多くの問題点を抱えている。
対抗する社会主義制度が存続している間は、資本主義経済は「労働者への利益の還元」を、できる限り優先してきた。
労働環境の悪化を防ぐ、「労働組合法」などで、労働者の給与を高くする方策を実施して、政府は労働者の不満を最小にする政策を優先的に実施してきた。
経営者側も利益の配分を、労働者の給与や労働環境の改善、社会福祉の充実へ回して、資本家側への利益還元を後回しにする。
資本家は、労働者の不満が高まって、社会主義への革命でも起きたら損失が莫大だから、資本主義経済は資本家の利益よりも労働者への恩恵が大きかった。
このように、政府が積極的に労使関係に口を出して、制度的に労働者への配分を増やす努力を重ねた結果が、社会主義経済の非効率を打ち破ったのである。
これは、資本主義の原理から外れた『修正資本主義』と呼ぶべき制度で、20世紀後半には最も世界の経済を促進させた政治的な制度である。
ところが、アメリカ人の生活が世界一豊かになった成果は、「資本主義制度の貿易の自由化、投資の自由化、人の移動の自由化」が、効率的だからと勘違いをした。
それに便乗した【新自由主義経済】が悪乗りした【浅薄な経済理論】で、政府の介入が市場を歪めると非効率で、経済活動に介入するのは悪だ、と決めつけた。
規制緩和を徹底的に進めて、市場原理の競争環境に任せることが、効率的な経済制度だ、として世界的な自由化路線を推し進めてしまった。
資本主義の徹底が世界を豊かにして、紛争を最小にすると豪語した「新自由主義経済」は、世界の先進国での【収入格差の拡大】を招いた。
【資産格差の無制限の拡大】が、マネーゲームの横行を増大させて、経済活動の不安定化を冗長させている。
このようにして、20世紀後半に『成功した修正資本主義』を、愚かな【新自由主義経済論者】が、世界的に不安定な社会に向けて突っ走っていた。(続)