農業は自然を相手にする天候任せの「付加価値の少ない製品」を作る仕事で、収入も多くは得られないと、思いこんでいる人が多いでしょう。
全体的な水準はどうなのか、と関心を持つならば次のデータを参考にすると、農業に対するイメージは変わる。
OECD(経済協力開発機構)の調べでは、全部の職業の世帯平均を100とすると、日本の農家所得は120で、アメリカは110で日本よりも低い。
ヨーロッパの農業先進国のオランダは250、デンマークは170、フランスは160で、生産性の高い農業を経営している国は、世界の平均を大きく上回る。
この事実は、これから日本の農業を高付加価値農産物にシフトして行けば、働く人たちの世帯収入は大きく向上することが期待出来る。
その反面では、大量生産の工業製品を作る業種では、これから技術力をつけた新興国と製造拠点の奪い合いの競争を強いられてしまう。
懸命に努力をしても、人件費の引き下げ圧力は高まるばかりで、世帯収入が向上出来る見込みは大変に厳しい状況でしょう。
日本の製造業は、日本独自の商品にすることや、高付加価値の少量生産品に力を入れて、需要層を開拓しなければ、収入は増加する見込みが立たない。
では農業の分野の成長可能性がどうかというと、次のデータを参考にできる。
約200万戸の農家のうち、売上額が1000万円以上の農家は14万戸の7%で、この層で全農業生産額8兆円の6割を占めている。
残りの農家は、兼業農家や、余生を楽しむ準農家で、高齢化していくので10年以内に勇退する可能性が高い。
必然的に農地の余剰が生まれて、集約化が進む上に、誰も耕作しない遊休農地が大量に生まれる。
まさに、参入するには絶好の機会がきている状況だ。
農業技術の進歩も著しい上に、お手本になる農業経営の事例は、次々にうまれているので、成功する可能性は高くなっている。
もちろん、基本的な経営知識と農業に対する勤勉性が不可欠であるが、年間売上1000万円以上の規模から始める資金さえあれば、いきなりトップ集団だ。
成熟した製造業の分野で、『高付加価値製品』の開発に成功するチャンスよりも、農業の高生産性、高付加価値化に挑戦する方が、成功率は高いでしょう。
食料自給率の呪縛から離れれば、日本の農業は前途が開けている分野です。