いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

春(出産シーズン)に思う…75編

2005年09月22日 08時33分26秒 | 娘のエッセイ
 真夜中にノラ猫が赤ん坊のような鳴き声をあげる。テレビの番組では、動物
達の産卵や出産シーンが増える。そういえば油壺のマリンパークでも、ペンギ
ンが卵を温めていたっけ。

 そんな新しい生命誕生の春の季節に、ひとつの命が抹殺される場面に出会っ
た。
 小さな産婦人科の待合室。高校生と思われる女の子が、友人の少女と共に
現れた。看護婦さんがその友人に言う。「手術の間、待っていてあげて頂戴。
なんせ電話番号さえも書いてくれていないんですから」

 冷房の直撃を受けてから、ここ五年余り通い続けている産婦人科の医院。
そこで私は何度、このような場面に遭遇しただろう。中絶の同意書に嬉しそう

にハンコを押す若い男の子や、手術室に向かう二十歳前後の女の子達。或
いは、四人目の子供を中絶する中年女性。

 少子化・少産化という時代の流れの中で、こうして多くの命が葬られてゆく。
産む産まないの選択権は女性にあるべきだと思うが、何故産めないのか、
産みたくないのかという原点をーーもっと真剣に考えてもよいのではないだろ
うか。

昨年末に出産をした友人は、産休をとる際、上司に「産休のあと職場に復帰
した女性はいない」と言われたという。

 実際、私の勤務する会社でも、妊娠した女性達は皆、退職していく。それは
女性の側に問題があるというよりも会社の制度が整っていないからであり、
経営者が出産という出来事を受け入れる寛容さがない為だ。

 人間には、出産シーズンがない。故に出産に関する制度は、ケースバイ
ケースの応用力と弾力性に富んだものでなければならないはずなのに、
現実は違う。

そんな現実を目の当たりにすると、ああ、いっそのこと人間にも出産シーズン
があって、その期間中は”女性は無条件で休んでヨシ”なんてことになったら、
少子化も防止出来るし、女性の労働力確保にもなるのにな、と思う。でもそれ
は夢物語。

 さて、私の友人の職場復帰は成功するのだろうか?結果が判るのはまだ
先のことである。
コメント
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