いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

曼珠紗華 72編

2005年09月16日 06時48分47秒 | 娘のエッセイ
 『ゴンシヤン・ゴンシャン 何処へゆく。赤い、お墓の彼岸花』と北原白秋も
うたっている曼珠紗華。この花は有毒植物としても有名で、球根を食べて死ん
だという話しもあるという。

 私が子供の頃、隣の天理教の庭に曼珠紗華が咲いていたが、『毒だから触っ
てはダメ』と母に言われていた。しかし、あの放射状にすっと伸びた真っ赤な細
い花びらとおしべ、葉の無いすっきりとした姿。あの美しい花に、その頃の私は
触れたくて触れたくて仕方がなかった。

 最近知ったのだが、この花は別名『死人花』ともいうそうだ。墓場によく咲く
からというのが理由らしいが、『それはあまりじゃないの!』と、私は曼珠紗華
に代わって抗議をしてあげたい。

 ところで、曼珠紗華の毒は『リコリン』というもので、毒であるにもかかわら
ず、実は去痰・鎮咳作用があるのだそうだ。だから、医薬品にも使用されてい
るとのこと。

『綺麗なバラには棘がある。綺麗な曼珠紗華には毒がある』
けれど、私はバラも曼珠紗華も大好き。そして、それは人に対しても同じ。
つまり、一癖ある人間が好きなのだ。

 それゆえに、私のまわりは、きれいなだけの女性も爽やかさだけが売りもの
の男の子も、肩書きをひけらかすだけの人間もいない。みんな多彩なパーソナ
リティあるいはオリジナリティで勝負する。

 彼や彼女達は、私にとってのカンフル剤であり、ビタミン剤である。そして、
彼らにとっても私がそういう存在であったらなら、とても嬉しい。危険だけれ
ど、やっぱり毒は必要だ。でも、それが時として最も役に立つ薬に変化する毒
ならば……の話だけれど。

 私だってただの毒は嫌いだし、醜いだけの毒を持つ人も、やっぱり素敵では
ないからお付き合いしたいとは思わないもの。


 ◎「曼珠紗華」の一般的な読み方は、「まんじゅしゃげ」であるが、ときに
  「まんじゅしゃか」と読まれる方もいる。
   辞書には、「まんじゅしゃ」は梵語でManJusaKaの略とある。

 ◎ 「ごんしやんごんしやん」うたいながら行く
            畦の道えのころ草を手に振りながら
        平成15年11月16日産経新聞掲載
                門真市 吉田哲雄氏作
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コメント
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