穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ヘミングウェイ「武器よさらば」終局へ

2014-08-28 03:13:52 | 書評
余談が二回ほど入ったが、ヘミングウェイ「武器よさらば」の第四部と第五部について簡単にふれる。

敵前逃亡の罪を着せられてイタリア憲兵に軍法会議(裁判)なしの即決銃殺をされるところを逃亡した主人公はミラノへたどり着いた。恋人の看護婦のいる病院へ行くと彼女は休暇で友達と北部の湖畔の観光地に行っているという。

友人の家で私服をかりて北部のストレーザに向かい、恋人に会う。例によって彼女の同僚の看護婦から恋人を引き離ししっぽりと濡れていると、ある夜、ホテルの老ウェイターが深夜、明日早朝当局が逮捕に来るという情報を伝えにくる。

主人公を前に見知っていた市民が軍服を脱いで私服でいる主人公を見て脱走したのではないかと警察(憲兵)に通報したらしい。主人公と恋人はウェイターの手助けでて手漕ぎのボートで深夜35キロの湖を渡ってスイスに入る。

スイスへ無事入国出来た二人はモントルー郊外の山中の山小屋で幸せな一冬を過ごす。雪解けとともに、かねて妊娠していた彼女の陣痛が始まり市内の病院に入院。難産で帝王切開をするが、子供は死産、彼女も出血多量で死亡するところでエンディング。

第四部と第五部はがらっとトーンが変わるが筆は軽快に走っている。とくに出産場面はいい。ドストエフスキーの悪霊の出産場面を思い出した。まったく設定は違うが、小説の出産場面で印象的で記憶に残る。