min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

雑賀六字の城

2006-09-04 22:18:35 | 時代小説
津本陽著『雑賀六字の城』文春文庫 1987.7.10 第1刷

司馬遼太郎著『尻啖え孫市』が雑賀の頭目である孫市を描いているのに対し、本編では雑賀衆の年寄衆(300余の家人を持つ)のひとり、小谷玄意の末っ子七郎丸を軸に、彼の目を通しての信長との死闘を描いている。
彼が16才で初陣を飾った浄土真宗石山本山を巡る攻防戦から、更に後年、信長が雑賀の荘に攻め込むまでを描いた壮絶な雑賀鉄砲衆の戦記であると同時に、苛酷な戦闘を経験する過程で、七郎丸が少年から若き雑賀の戦士に成長してゆく過程を見事に活写している。

本編では雑賀鉄砲衆の火縄銃の“手練手管”を描くばかりではなく、雑賀衆の“船戦さ”の巧みさについてもたっぷりと披露してくれる。
当時の海戦の模様を描かせると津本陽は達者だ。読むうちに瞼に合戦の様がまざまざと浮かんでくるようだ。
それにしても何故、雑賀衆がかくも浄土真宗に帰依したのかが未だに謎である。一向宗はキリスト教が神の前では全ての者が平等と説いたと同様、阿弥陀の前では身分の上下へだたりなしに成仏できる、と説いたものだから、それは封建領主としてはこの上なく都合の悪い宗教であったわけだ。
また、死ぬと“極楽浄土”へ行けると信じ込む門徒宗には死への恐れがない。戦う相手として、かくも不気味な相手は存在しないであろう。

石山本山の攻防戦の場面も凄いが、最後、僅か1万弱の手勢で10万余の信長軍を迎え撃つ雑賀の荘で繰り広げられる戦闘場面は圧巻だ!

もうお分かりのとおり、題名の六字とは「南無阿弥陀仏」のことである。


上記は過去の読書録から引っ張り出してまいりました。


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