min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

尻啖え孫市

2006-09-05 23:21:42 | 時代小説
「雑賀衆」といえばやはりこの方、『鈴木孫市』が登場しなければ収まりがつかないと言うものです。


司馬遼太郎著『尻啖え孫市』講談社文庫 2000.9.13 59刷

「尻啖え」とは現代語では何と表現すべきでしょう?
さしずめ、「ケツをまくる」「一発かませる」とでも表現するのでしょうか?やはり、ずばり汚いですけど「糞食らえ」でしょうか。英語では「Kiss my a**」てなとこでしょうか、いずれにしても上品なお言葉ではないようです。

さて、本編の主人公、雑賀孫市とは一体何者なのでしょう。姓を鈴木と称して、今の和歌山県和歌浦あたりに勢力を持っていた地侍集団ともいうべき雑賀衆の頭目であります。雑賀衆は近くの根来衆とともに「鉄砲」を武器とした一種“傭兵部隊”で、あちこちの大名に金で雇われて戦闘するという特殊部隊。
更なる特徴はこの雑賀の国の人々の大半が一向宗の信徒であったという点。こうなると自然、敵対するのは織田信長。
浄土真宗石山本願寺を中心に信長との長~い、確執に満ち満ちた戦いが繰り広げられ、当時比叡山の焼き討ち以来、“魔王”と呼ばれた信長に痛烈な一撃を加えた、そう、“尻啖わした”のが孫市率いる雑賀の鉄砲衆であったわけです。

この孫市、服装からして奇抜。最初の登場シーンが「真赤な袖無羽織、真白になめした革ばかま。羽織の背中には黒く染めぬいた3本足のカラス、“熊野の神鳥、ヤタガラス”の家紋」の大男、てな調子です。
当時こうした連中は『かぶき者』と呼ばれたそうです。
服装ばかりではなく、孫市はこの当時の地侍の典型ともいうべき、小地域戦闘のうまさ、底抜けの楽天主義、倣岸さ、明るさ、そして愛すべき無知、すべて孫市は持っていたと著者は書いています。
とにかく、破天荒な反権力主義者で、その言動は小気味良い。かくも痛快な怪男児がおったこと自体が奇跡のようです。


この感想も過去の読書録からの引用です。

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