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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:オン・ザ・ミルキーロード

2017-12-06 | 映画


クストリッツァとモニカ・ベルッチですよ!
そりゃもうどんだけ期待してしまったか。期待している間の甘美だったこと。
そしてその期待は・・・裏切られたということはないけど、
期待以上にすごかった!ということもなかったかな。まあ期待通りってとこかな。
もっとほめたいけど、期待が大きすぎると難しい。いや十分よかったんだけど。

冒頭の数分で、間違いなくクストリッツァだ!とわかる、
ブガチャカブガチャカした賑やかな音楽と、動物たちの行進があって
そこでテンションあがりまくり。踊りたいくらい。笑

主人公を演じるのもクストリッツァ監督。
過去がある変わり者のしがない色男という風情で、ロバに乗って牛乳を配達している。
この男が最初、なにがいいのかさーっぱりわからなかったけど
見てるうちに、いやぁ、こういう男いるよね、もてるよね、と思うようになります。
なんかキラリと光る色気、みたいなのはないんですよ。
でもじわじわくるの。どうにもその冴えない感じとか、微妙なふてぶてしさや優しさが。
後半になると、モニカ・ベルッチの相手に不足はない、くらいに思えてくる。
何だろうこのいぶし銀的な魅力は。。。

そしてモニカベルッチは、若く見えるわけでも細く見えるわけでもないのに
全体的にはやっぱりとてつもなくきれいなのだった。
お話も、中年を過ぎた二人の逃避行だけど、二人の年なんて一度も考えなかった
年齢とかどうでもいいこと思い浮かべるには、クストリッツァの映画は
パワーがありすぎるのよね。圧倒されてる間に映画は進み終わるんだもん。

巨大な仕掛け時計のある家、魔女のような老女、
ミルクを飲む蛇、踊るハヤブサ、賑やかな音楽のパーティ、
たくさんの動物たちのいるどこか魔術的神話的な風景は、
平和な村の日常のようなんだけど、実は戦時下ということで、銃弾飛び交ったりする。
その中を、大きなミルク缶を持ってロバに乗って傘をさしてゆくミルク運びの男。
彼にはつらい過去のトラウマがあり、今はなんとなく流されるように生きている感じ。
この主人公は、見るからにドンキホーテっぽく、もっさりした道化のよう。
それが、村一番の有力軍人の家に嫁いできた絶世の美女と恋に落ち逃避行・・・
という話と思ってたんだけど、電撃的に運命の恋に落ちって感じでもなかったの。
なんとなく優柔不断な男で、気持ちがはっきりしないし、
別の若い女に振り回されても拒否しないし、よくわからない男。
モニカ・ベルッチの方は、もう少し気持ちが彼に向かってるのがはっきり見えます。
そんな感じで、はっきりしない関係のまま、美女は追われる身になり
男と一緒に逃げることになり、そこからはひたすら逃げる逃げる。

この逃げ出してからの後半が、わたしはつらくて疲れちゃった。
個人的には「ロマンチック」がもっとあったらよかったかなぁ。
そして、ファンタジー的なガチャガチャも後半にもっとあってもよかったのにな。
ラストは、落とし前はついてるし、きれいなまとめ方とは思うけど
もっと現実と幻想がごちゃごちゃになった、
わけわかんないデタラメな終わり方のほうがよかったなぁ。
切なく悲しくきれいなラストだけど、それが少し物足りなかった。
愛の物語としてはこれでよかったのかもしれないけど
「アンダーグラウンド」に比べると、大きなテーマが個人の愛だからか
ちょっと単調な気がしたんですよ。でもパンフレットの中のインタビューで
「僕の映画はいつも、自分がどのように人生を捉えているかを示しているのです。
今後は、自分を愛のために捧げたいと思います」と言ってるので、それはそれで納得。

クストリッツァというのは、映画の撮影用にセルビアの村を村ごと買っちゃって
クステンドルフ(Kustendorf)と名付けて、映画祭や音楽フェスティバルをしたりする人。
エミール・クストリッツァ&ノー・スモーキング・オーケストラという自分のバンドも持ってて
バルカン諸国のジプシー音楽を基にした作品を演奏してて、それはとても楽しそう。
(この映画の音楽もそのバンドと、自身の息子が担当しています)
でも、なんかその才能ってマルチとか、スケールが大きいとかいうのとは少し違って
なんだろう、この映画のラストの主人公と少し似て、
自分の無くしたものの鎮魂や愛や怒りや悲しみや望郷を込めて
コツコツと世界を一つまるごと作ろうとしている人のように思えます。
ユーゴ内戦で故郷をなくした人のひとりだからかな。
だからどんなに賑やかでガチャガチャ騒々しい映画でも、どこかに悲しみがあります。
そういうところは「アンダーグラウンド」の方によりしっかり描かれているかな。
あと、マケドニアが舞台の別の監督の映画「ビフォアザレイン」も少し思い出す。
これもいい映画だったなぁ。
そしてこういう男に弱いなわたし。
調べてるうちにクストリッツァにめろめろになってきた。笑

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