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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:香港製造(メイドインホンコン)

2018-05-07 | 映画


ポスターの男の子が、いかにも安っぽいチャチなチンピラ風情で
なんか見るの嫌だなぁと思いつつ、友達は褒めてるし
映画のはしごの時間に合うしで、見たら、なんかすっかり持っていかれました。
見終わったら、なんともやるせなく切ない、センチな気分に。好き。

映画は香港の中国返還前1997年に撮られたもののデジタルリマスター版。
新人監督が、素人俳優で、期限切れのフィルムで撮ったということだけど、
これ、もう抒情のかたまりだった。
頭も柄もよくないちゃちなチンピラの恋と人生が、もうやるせなくてやるせなくて。
香港には一度だけ行ったことがあって、それは96年か97年、この時代でした。
センチで甘すぎかもしれないけど、
自分も見たことのある時代の、見たことあるような人たちの話だと思うと、たまらん。

中国返還前の香港、喧嘩や借金の取り立てなどをしている主人公の男の子は
いじめられていた知的障害のある青年を弟分にして守りながらふらふらしてる。
その弟分の青年が、飛び降り自殺した少女の遺書を拾ったことから
主人公もその少女の死に取り憑かれるような思いをする。
恋をした、借金取り立て先の女の子は病気で余命いくばくかだし、
借金取りのボスはヤクザで、借金取りより危ない仕事をさせようとするし、
ぐいっと人生が変な方へ出口のない方へと動き出す。

物語もちゃんと面白いけど、それ以外の部分の面白さが、
この映画にはたくさんありました。
飛び降りる少女と青い空、
主人公と弟分と女の子3人で広い墓地を歩き回るシーン、
たくましいおばちゃんたち、ずるい大人たち、
ひょいっと何も持たずに自由に生きている主人公の風のような歩き方走り方、
未来なんてない、希望もない、ただ今だけ、という感じの不安定な軽やかさ、
いつも怒られている母親への思慕、家族を捨てた父への複雑な気持ち、
もう、どのシーンにも叙情があるんですよ。
ごちゃごちゃした狭くて汚い部屋の空気まで叙情にあふれている。
印象的なシーン、印象的な動き、印象的な気持ち・・・
ところどころ、変にこりすぎてたりすぎな部分はあるけど、全体に好きな映画。

華奢といえるくらい細い主人公が、ぴったりしたぺらぺらの派手なシャツを着て
ひょうひょうと動くのを見ているうちに、この青年がだんだん好きになってしまう。
チャラチャラしてるのに、妙に優しくて、妙に強くて、いつもひとり。
未来なんて考えないからなにもこわくない、好きな子が出来ても約束はしない、
会いたい時に会いに行く、何にもどこにも属さないことの自由と頼りなさ。
こういう男子の造形は、古いフランス映画などにもある気がするけど
この子の魅力で、映画がさらに良くなっている。
また、彼が恋に落ちた女の子はベリーベリーショートの髪も服もすごくかわいくて
はすっぱなのか純真なのかわからない不思議な透明感のある役がすごくいい。
映画の中では美人と言われてるけど、かなり変わった顔で、美人ではないな。
でもすごくかわいいの。

思い出したらきゅんとしてつらい。
わたしは同じ映画を何度も見る方ではないし、
この映画が好きすぎて、というわけではないんだけど
これはわたしにとって何年かおきにまた見たい映画かもしれない。

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