sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:プリシラ

2024-04-28 | 映画


プレスリーの伝記映画はバズ・ラーマンが監督したのを数年前に見たけど
エンド・ロールのノリノリキラキラ具合がさすがバズ・ラーマン!さすがプレスリー!と思った。
この監督とプレスリーという題材が合ってて、楽しく作っただろうなと思った。

一方この「プリシラ」も題材がプレスリー夫婦なので、
部屋や生活は派手で彩度の高いどぎつさもあって、
ソフィア・コッポラの世界ではあっても、ソフトなふんわりさ満載ではない。
プレスリーという存在がソフィア・コッポラとぴったりって感じには決してならないのよね。
でも映画に常に漂う孤独感は、子どものように小さく華奢なヒロインのよるべなさに拍車をかけて、
その彼女を主人公にした映画となると、やはりソフィア・コッポラの本領発揮である。

その反面、プレスリーという人物に関しては前半、既にスターの彼が素敵なのはわかるけど
後半になると、どこがいいのかさっぱりわからない男になってくる。
スターの孤独ってよく映画になるしかわいそうにも思うけど
プリシラ視点で見ると要はモラハラDV男でしかない。
(今の価値観で見るからそう見えるだけかな?)
説明的なことは言わず言葉を飲み込んで黙ってることが多いプリシラの孤独は
見ている側にはなんだか染み入るように想像できるけど
プレスリーにはそういうのがない。彼の内面はあまり描かれてないというか
なんか実体のない、心のない脇役のように見える。
彼がなんでプリシラに惹かれたのかも、結局よくわかんなかったな。
若くてかわいくて無垢で従順な子供だったから?

ソフィア・コッポラならではの色彩世界で、
ファッションは見ててすごく楽しいしプリシラ役の女優さんは超かわいいけど
とにかく、とにかく、小さいんです。
今ググったら155センチ。わたしくらいだ。笑
そしてプレスリー役のジェイコブ・エロルディは196センチ!でかっ!
実際のプレスリーは182センチで十分大きいけど、実際のプリシラは163センチだから、
この映画の中のふたりの大きさの差はリアルではないですね。
(実際は19センチ差で映画ではなんと41センチ差!)
この実際よりはるかに大きな身長差がプリシラを余計小さく頼りなく見せるのは
ソフィア・コッポラの計算のうちだったのかな。
その小さなプリシラが大きな家の中でひとりぼっちで小さな白い犬を抱いて
やることもなくぽつんとソファに座っているシーンが印象的だった。

この映画を見た数日後にたまたま読んだ吉本ばななの小説に
とても小さい女性と長身でがっしりした男性の出会いの短編があって、
そこには具体的な数字はないけど、とにかくその小ささに男性が恋してしまうのです。
(短編集「ミトンとふびん」の中の「SINSIN AND THE MOUSE」)
子供の頃に彼の孤独を救ってくれた、絵本の中の小ネズミを思い出して
小さい生き物への憧憬や愛情が溢れて、小ネズミのような小さい女性に恋してしまう。
バーのスツールに腰掛けると、彼は大きくてはみ出し、彼女は小さくて足がぶらぶらと浮くふたり。
その短編を読んでいる時に「プリシラ」を思い出したのでした。
映画一本の中にはたくさんの要素があるし、ソフィア・コッポラのことや
プレスリーのちょっと歪な家庭環境や家族関係など語りたいことは他にもあるのに
この映画でわたしが最後まで覚えてるのはこの二人の不思議な身長差のことだろうな。

あ、あと音楽の使い方もいちいちソフィア・コッポラ風味がかかっててオシャレでした。

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