映画のドラマに共感したとかじゃなく
同じ時間を過ごしたような気持ちになる映画でした。
現実というか、等身大というか、外側じゃない感じ。同じ世界の出来事の感じ。
パリの街が出てくるのだけど、それも観光地っぽい感じではなく町っぽさでもなく
もっと当たり前の日常的な普通な感じ。
16ミリフィルムで撮影(ロンドン部分は35ミリ)ということで、
それでこういう雰囲気が出るのかな。
2年前くらいに上映してた気がするけど、見逃してたなぁと
何となく見て、何となく見終わってからすぐに、じわっと、
あれ?これ、すごく好きかも、と思って、
しばらく考えて思い出しているうちにどんどんいろんなシーンを思い出しました。
お話は、シングルマザーの女性がテロで突然なくなって
残された仲の良かった男性が姉の娘を引き取るかどうするか、
またその関係などを、風通しのいい風景の中、何ということもない日常の中に
描いたものだったのですが、
その日常の何気ない風景のかけがえのなさ、美しさが
自転車で走る街並みや、散歩する公園、食事するテーブルなどに
後から思い出すと静かに溢れていたのでした。
最初の2、30分は、仲のいい姉弟と姉の娘との日常、弟の恋の始まりが優しく描かれていて
姉弟の近しさや、姉とその娘の良い関係が自然な感じに描写されています。
姉サンドリーヌとその娘アマンダがプレスリーの曲でノリノリで楽しく踊るシーンは
この母娘の日常と、愛情と信頼の深さがよくわかるシーンですね。
そのあと、娘が尋ねる言葉で
Elvis has left the building というのが出てくるのですが、
エルヴィスは去った=楽しいことはおしまい”を意味する慣用句だそうで、
それがこの作品のラストにも重要な意味を持ちます。
この特に何も起こらない25分ですでにこの映画が好きになってた。
このままずっと何も起こらず緑の多いパリの街で平和に暮らす優しい人たちを
何時間でも見ていたいと思う。それじゃ映画にならないけど。
作り事の映画でさえ、何も起こらない平穏な日常が一番いいと思う、
地味でこじんまりとしてつまらない人間なのです、わたしは。
でも映画ではいろんなつらいことが起こるから、
いつも肩が凝って体も頭も緊張しながら見る。
大事な人が死ぬ話は悲しいなぁ。
大事な姉を亡くした24歳の弟が7歳の姪とどう向き合うか。
母を亡くした7才は何より大事にされるべきだけど、24歳なんてまだワカモノで、
自分の喪失を乗り越えるだけで必死なのもわかる。
人は喪失をどう乗り越えるのか、という話だけど
啓蒙的な感じではなく、ドラマチックに感動させるのでもなく
あくまでも自分や自分に連なる人にも起こり得ることとして描かれていて
映画を見ている間は他人事のように見ているけど
見終わった後に、現実の知っている人の話を聞いたような気持ちになる。
時間が経つほどに、良い映画だったなーと思ったので
そのあとすぐに、同じ監督の前作「サマーフィーリング」を見たのですが
これも似たテーマで、大切な人をなくした人たちの話だった。
亡くなる女性の“いつもの1日”をサイレント映画のように描くオープニングから始まり
その後にベルリン、パリ、ニューヨークというそれぞれの場所での
3年間にわたる、なくなった女性のまわりの人々の変化や心情を
丹念かつ繊細に描いていきます。
大きな出来事がほとんど起きなくても飽きることがなく、
心地よく観られるのは、丁寧な演出と美しい画の賜物でしょう。
そこは「アマンダと僕」と共通しているところですね。
テーマも同じなので、この2本を続けてみてしまったら
いつか二つの話が混じってしまう気がします。
でも、混じっても良いかなと思う。
どちらも、後味の良い話で、その後もなんども
流しながら見てしまうくらい好きな映画になりました。
あと、どちらも静かに人の呼吸や歩く速度にあわせて
ゆっくり撮られるシーンが多く、日常の音がよく聞こえる感じで、
足音の映画を思い出させる「シルビアのいる街で」という
静かな映画を思い出させました。
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