あらゆる人が心を込めて絶賛しているので、もう何も書くことはないけど
見終わって、映画館を出て、スマホを開けたらすぐにツイッターに
「今見た映画があんまりよかったので、なんじゃこれはーーーー!と叫びたいっ!」
と書き込んだくらい、本当に素敵な映画。
映画を見る喜びに震える。ストーリーは、なんてことないラブストーリーなんだけど、
ワンシーンワンシーン、登場人物の一人一人、みなみな素晴らしい。
評判以上期待以上に良かったので、すっごく機嫌よく帰った。
わたしは美青年恋愛モノ、いわゆるBLにあまり興味がない。
いわゆる腐女子の趣味というものが、全く理解できないのです。
きれいな男の子より、きれいな女の子のほうが好きなのですね、どうも。
だから、この主人公の美しい少年と青年のラブに萌え萌えみたいなのはないの。
この美少年好みじゃないし。
いや、目の前にいたら世界の空気が変わるほどきれいで卒倒するかもしれんけど。
でもまあ、そういうわたしでもひたすらうっとりするほど
何もかもきれいな映画でした。
景色も家も家族も街も食事も人々の気持ちの有り様も何もかもきれい。
この映画で一番驚いたのは、この主人公の家族。
お父さんは大学教授で、家族みんな何カ国語も話し教養豊かで、
息子はピアノやギターも弾くし、文化芸術全般にみんな造詣が深い。
でも、いわゆるインテリ家族というものは映画の中でなくてもよくあると思うけど
思春期を抜けた頃の知的で多感な少年が、家族関係にまったく何の問題もなく、
愛しあい尊敬しあい理解しあってるのびのびした家族、というのが、
映画や文学ではちょっと珍しい感じで驚いたのでした。
普通、思春期や青春期には、葛藤や鬱屈が描かれることが多いですよね。
先日見たばかりの「さよなら僕のマンハッタン」でもそうだし、
先月見た、同じように男の子同士の恋愛を描く「彼の見つめる先に」もそうです。
親への反抗や認めて欲しい自立したい鬱屈した気持ちや、それでも消えない愛情、
そういうのが青春映画にはつきものなんだけど、
この映画では、大人はわかってくれない、的なところが、なんとゼロ!
ここでは大人は全部わかってくれて優しく見守って慰めてくれる存在なのです。
すべてわかって理解して受け入れてくれて、でもそれをことさらに押し出しもせず
少年の成長も、恋の出会いも別れも、そっと見守ってくれている。
それを少年もごく自然に当たり前に感じ受け入れている。
この家族関係が、もう完璧すぎる!こんな家族って、ある!?
親との間に何の抵抗も摩擦もないまま育つ少年でも、映画の主人公になれるのね〜。
とにかく、もうそういうあまりに美しい関係の家族だけでなく
出てくる他の人もみんな素敵な人や素敵な子ばかりで、
どこかの天国をしばし垣間見た気分になりました。
特に好きなシーンは、お母さんが18世紀のフランスの恋愛小説を朗読するところ。
ソファに父母と息子が膝枕的な形でくっついて座ってて、仲良く文学を楽しむんです!
そしてその本が、あら、フランス語版がないわ、いいわテキトーに訳して読むわって、
フランスの小説のドイツ語版を英語に訳しながら読むんですよ。(うろ覚え)
美しくて暖かくて、でも高尚すぎるシーン・・・
しかし、美しい人しかいない天国でも、悲しいことはあるのね。
でも悲しささえもひたすら美しいわ、という映画ですね。
あと、ラストの方で、悲しみに打ちひしがれる主人公にお父さんが話すシーンも
もう優しくて暖かくて美しくて、
このお父さんのように「痛みを葬るな」と教えてくれる人がいる幸福が
悲しみの中にも常にあるのがいいなぁ。
監督は『ミラノ、愛に生きる』のルカ・グァダニーノですが、脚本は
『日の名残り』『最終目的地』のジェームズ・アイヴォリー。ああもう大好き。
アカデミー賞脚色賞受賞しましたが、彼もう89歳。
もうすぐ90歳という人が描く世界ですかこれ!年取らない天使か。
1983年夏、北イタリアの避暑地。17歳のエリオは、アメリカからやって来た24歳の大学院生オリヴァーと出会う。彼は大学教授の父の助手で、夏の間をエリオたち家族と暮らす。はじめは自信に満ちたオリヴァーの態度に反発を感じるエリオだったが、まるで不思議な磁石があるように、ふたりは引きつけあったり反発したり、いつしか近づいていく。やがて激しく恋に落ちるふたり。しかし夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づく……。
(公式サイトより)
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