カルカッタより愛を込めて・・・。

次のアピア40のライブは9月13日(金)です。また生配信があるので良かったら見てください。

アサダの命日。

2009-07-17 13:20:57 | Weblog

 今日はアサダの命日。今日で七年になる。

 あの日はこの時間、雨が降っていた。次第に空が明るくなり、晴れ間も見えていた。雨が止むのを空を眺めながら待っていた。

 その時の感じをいま感じている。意識のなかで時が前後を行き交っていた。未来、ほんの少し先のことばかりが意識されてしまって、いまと言うときをつかめないままで、もう別れなければならない不安と恐怖が胸をただ重くしていた。

 雨上がりを待っていたのは、もしかすると、少しでも、その心を晴れさせたかったのか。それを覚悟にするのに自分の力だけでは到底足らないことを感じていたからなのか。

 そうかも知れない。出来ることなら逃げたかった。

 どこに逃げる場所も無かったろうに、にもかかわらず、アサダの居なくなる世界から逃げていた。

 心をつかめないまま、足は病院に向かっていた。同時に向かいたくない意識が要らぬ寄り道をさせた。

 病院に着くとアサダの戦いをほんの十分前に終わっていた。

 力が抜けた。緊張は解け、新たな緊張を直ちに作り出していた。夢のなかにいるような感覚で立ちすくんだ。

 まだ涙を流しているナースを見ては、現実に引き戻された。

 あのとき、アサダはどこに行ったのだろう。亡くなった身体に触れても、そこには、お前が居ないように思えた。

 あれから、七年、あっと言う間だった。いまでもお前には語りかけている。

 「そろそろ、にぃーさんの幸せそうな顔を見たいだろ。」

 お前は見ているだろう。どこかからな。

 茶化したい言葉を瞬時に放っているだろう。そして、自分を笑顔にしてくれるだろう。

 「アサダ、この前まで自分と同じ背丈だったひまわりは、もうその頭は見上げるくらいに伸びていたよ。ときのなかで、お前も俺も成長しているんだって、なんかひまわりを見て、さっき考えていたよ。それは悪くないって思えたんだ。

 住む世界が違ったりしていてもな。もうそれはあまり関係ない。自分は自分でしかなく、ここにいるよ。それも悪くないって思えるんだよ。このいまも良いってさ、思えるんだよ。
 
 な、アサダ。」

 今日はアサダへの感謝の特別な日。穏やかに呼吸を続ける。
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帰ってきたブラザーノアス。その3。

2009-07-16 13:19:32 | Weblog

 ノアスとシスタールークの話しをした。
 シスタールークはカーリーガートで長い間委員長をしたナースのシスターで、マザーが亡くなる前、マザーの車椅子をいつも押していたシスターである。彼女はマザーが亡くなったあと、母国シンガポールに移動した。

 「シンガポールでシスタールークに会ったでしょ。どうだった?」

 「怖かった。」彼は苦笑いをした。

 「どうかしたの?」

 「彼女にしなさいと言われた仕事をしないで、違う仕事をしていたら、あなたは今、何が大切で、何をしなければならないのか、分かっていない!って怒られたよ。」

 「そうなんだ。やっぱり彼女は怖いね。でも、凄いシスターだよね。その時はもう70代なのにね。」

 「うん、凄いシスターだよ。」

 ルークは厳しくて有名だった。しかし、患者のことを何よりも大切にしていたシスターだった。

 以前、日曜に患者をカーリーガートに運んだことがあった。日曜の午前中にはカーリーガートではミサがある。当時は二階の御堂でミサを行っていた。その時間に患者を運ぶと大抵のシスターは良い顔をしない。祈りを大切にしようとする。

 しかし、ルークは違った。運んだ患者に自らが点滴をし、大切に扱い、こう言った。

 「今日は彼のために祈りましょう。」そう言ってミサに遅れて参加した。患者を運んだ自分たちはその姿に感動した。

 {つづく}
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梅雨明け。

2009-07-15 09:23:44 | Weblog

 目覚めて、カーテンを開けると梅雨明けの一番目の朝の青空がきれいだった。風も気持ち良い。

 夕顔と夜香木に水をあげた。
 夕顔の葉っぱの後ろを見ると、何か小さな虫がいた。

 葉が少し枯れすぎだと思っていた原因だった。

 早速、消毒をした。元気良くなって欲しい。

 今日はこれからミニの車検に行く。晴れてて良かった。最近はミニを車検に通すためにいろいろなところを直していた。やっと昨日、仕事に行く前に整備が整った。

 仕事に行く前にかなり疲れたが、石垣島にいる岡さんからマンゴーが届いた。

 その甘い香りに元気をもらい、笑顔になり、仕事に行けた。岡さん、ありがとう。

 梅雨明け初日の朝、ミニの車検。

 うまく通ることが出来たら良い。きっと大丈夫だろう。

 こんなに良い天気だから。
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祭りのあと。

2009-07-13 12:06:23 | Weblog

 土曜、日曜といろんな人に会った。どちらもほんとうに楽しかった。

 今日もいつもと変らぬような夏の陽が差している。音を立てる少し強く吹く風だけが自分に語りかけているように思う。

 祭りのあとの寂しさを拭い去ってくれようとしているのか。

 畑を歩く。
 相変わらず、コリアンダーには油虫が居座っている。油虫が嫌うと言うマリンゴールドを近くに植えても、タバコの灰を回りにもまいても、彼らに旅立つ装いがない。

 一度は綿棒で取ったりもしたが、またそれをしなくてはならないのか、強い日差しの下、コリアンダーをじっくりと眺めていた。

 昨日、救世主が現れた。

 二匹のてんとう虫が油虫を食べていた。「これは良い。がんばれ、てんとう虫。お互いの利点は一致している。」

 今朝、コリアンダーを眺めた。二匹のてんとう虫は今日も居てくれた。「これは良い。まだまだ仕事はあるよ。」

 自分のうちに欲が出てきた。もっとてんとう虫はいないかと畑中を探してみた。

 がしかし、その欲はすぐに熱風に飛ばされた。どこを探してもてんとう虫は居なかった。

 それならそうと、なおさらにてんとう虫を応援した。星を背負った丸い背中がとっても可愛い。

 「全部食べれなくてもいい。好きなだけ、ここに居ると良い。」ほっぺたを上げて、またしばらく眺めていた。

 気が付けば、祭りのあとの寂しさは夏の風がどこかに連れ去ってくれていた。

 
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シオン。

2009-07-12 12:25:01 | Weblog
 昨日はシオンに会いに行った。
 シオンはニルマルの三男、まだこの世に生まれてから二ヶ月、とっても小さい人間です。にもかかわらず、愛をたっぷり皆に与えていた。愛をたっぷり吸収していた。

 小さな瞳に見詰められると愛広がる宇宙のようなものへ吸い込まれそうになる。その純粋性は汚れがない。疑いはない。

 信じるだけ、受け容れるだけ、与えるだけ、愛だけがオーラとして輝いている。

 自分の腕のなかに居る短い時間ですら成長している。自分を成長させている。

 命の力に畏敬の念を抱く。

 今日はこれから親友アサダのお墓参りに行く。

 自分たちは生と死を抱いている、とともに人を愛している。愛さずには居られなく作られている。
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小さな手。

2009-07-11 08:23:51 | Weblog

 車を止めると、向かいアパートの部屋の網戸越しに小さな女の子が立っていた。

 仕事を終え、車に乗り、Uターンするためにゆっくり車を出すと、その小さな女の子の小さな手がバイバイをしていた。

 笑顔で会釈した。

 その子が生まれる前から、その場所には行っているが、そんなことは初めてだった。

 少し照れて、もう一度会釈して車を進めた。

 笑顔になった自分は想像した。

 小さなあの子の瞳に映る世界はあたたかなものなのだろう。自分の心にそれを移した。

 多摩川沿いを走ると、夕焼けの雲が美しく見えた。夕日に照らされた雲が刻々と色を変えていくその姿は、時の儚さを美しく描き出していた。

 壮大なスクリーンに見惚れた。

 この世界は美しいと感じた。ゆっくりと呼吸しながら、それを贅沢に味わった。

 穏やかな一日が暮れて行く。この命が嬉しいと夕焼けに答えた。
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帰ってきたブラザーノアス。その2。

2009-07-09 12:55:26 | Weblog

 カレーを配る場所ではブラザーベネディクトがおじさんたちに何かを話していた。

 持っていた小さなダンボールを彼が開けると、なかにはプラスティックの券が入っていた。それをおじさんたちに配り、カレーを作ってきた数だけ配り、最後になってから、もらえなかった人がいなくなるようにし、割り込んでくる人もなくなるようにするとのことだった。

 彼は昨日シスター{西新井MC}からもらったと言いながら、そのプラスティックの券の数を行き成り数え始めた。

 彼は誰にもそうしたことをすると事前に話すこともなかった。

 すでにおじさんたちは長い時間列を作り待っている。施設で今日はチケットを配ってみたいとでも話していれば、どういう風にしようかと話し合えたのだが、それをせずに始めた。

 「ブラザー、今日は無理だよ。みんな、もう並んでいるし、来週からにしよう。」彼に言った。

 「数えて。数えて。」周りを見ることなく、彼一人チケットを持ち、数えていた。

 他のボランティアもその行動に少し驚いていた。

 そこでノアスが言葉荒立てることなく、ゆっくりとした口調で、彼に来週からやることにしようと話してくれた。

 ノアスが居てくれて良かったと思った。ほっとした。

 おじさんたちには来週からチケットを配るということを伝え、挨拶をしていった。

 {つづく}
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七夕の満月。

2009-07-08 12:53:40 | Weblog
 昨日のお月さまはほんとうにきれいだった。心奪われるほどに見惚れた。
 
 仕事帰りのとき、お月さまは雲に隠れていて見えはしなかったが、その姿がそこにあることが分かるほど、夜空は明るく、雲の切れ間から光りが夜空に映し出されていた。その光景も美しかった。

 家に帰ってきて、まず、ベランダの夕顔に水をあげた。

 透き通った夜空にはさっきまで雲に隠れていたお月さまが独りでこの夜を見守るかのように限りない優しさを持ち、夜空に現れていた。

 深くゆっくりと息を出し続けた。身体に触れていく心地良い風を味わいながら、胸を膨らませた。

 きっと誰かの願いは叶えられたのだろうと思った。

 こんなにも美しいお月さまが静かにこの世界を照らしていた。

 きっと誰かは癒されたのだろうと思った。

 こんなにも美しいお月さまはこの世界に優しさを映していた。

 心満たされる瞬間に祈りを添えた。
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帰ってきたブラザーノアス。

2009-07-07 13:05:10 | Weblog
 13年ぶりにノアスが山谷に帰ってきた。気が付けば、もうそんなになるかと思う。13年前、シンガポールに行く彼を成田まで見送ったことを思い出す。その時と何ら変ることのない姿で彼は山谷に帰ってきた。少し白髪は出てきたが、愛らしい笑顔はそのままだった。

 彼が山谷に帰ってきたことを自分はとても喜んでいる。仕事の面でもいろいろと自分たちの話しを受け容れてくれるだろう。おじさんたちのためにも、そうあれることを望んでいる。

 またベンガル語で話せることは嬉しい。少し教わろうと思っている。ベンガル語も使わなければ、すぐに忘れてしまう。
 忘れてはまた勉強して、その繰り返しで、なかなか上達はしないが何よりも諦めないことで、どうにかカルカッタでも生活できるようになったのだろう。

 それでも、言葉に頼らず、言葉だけが前に出ず、心から現れる愛ある態度で、またカルカッタに行くことがあれば仕事をしたいと、そんなことを彼との再会をきっかけに思ったりもしている。

 {つづく}


 話は変わるが、さっき天気雨が降った。キツネの嫁入り?どこどこと見渡したりして笑った。七夕にキツネの嫁入りがあるのは、なんか夢があったりしていい。縁起がいいような気がする。

 こんな夏の空がアサダとの別れを思い出させる。今度の日曜はみんなで墓参りをする。近づいてくるアサダの命日に、今年は何を感じるのだろう。

 何をアサダと話そう。

 夏の青空がそのステージのように自分たちを迎える。

 
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その姿。

2009-07-06 13:20:43 | Weblog

 食べ終わったカレーの容器を集めるために、あの喋れないおじさんがいる公園に行った。

 久しぶりの陽射しに喜んでいるような青々した木々や花たちを見渡し、おじさんたちの様子を見ていた。

 公衆トイレの前には市の清掃局の車が止まっていて、係りの人たちのトイレの前を掃除していた。

 その掃除をあの喋れないおじさんが見ていた。
 彼が何を見ているのかを見ていると、掃除をして出てきたアルミ缶を拾っては少し離れた場所に持って行き、それを潰していた。

 その姿に心を奪われた。その姿はカルカッタでよく見たような光景の記憶を呼び起こした。ゴミのなかからリサイクル出来るものを拾い出す人たちと同じだった。

 カルカッタの貧しい人は大きなずたぶくろを持ち、早朝から街を歩き回り、お金と換えられるものを拾い、生活をしている。彼のその姿はそれとまったく同じだった。

 話すことの出来ぬ彼はただ待つしかない。しかし、少し経つの清掃員の人も少し離れたところにおじさんが拾いやすいようにアルミ缶を投げてくれた。

 おじさんに声を掛けた。
 「アルミ集めているんだ。」
 彼は頷きながら、悪くない方の右足のかかとでアルミを潰していた。アルミは悪臭がしていた。なかにゴミがあるものは公衆トイレの水道を使い、なかを洗い流していた。

 自分もゴミのなかから悪臭のするアルミ缶を何個か拾い、おじさんの足元に置いた。彼は表情を変えず、ただアルミを潰していた。

 手伝って欲しいなどと彼は語ってはいない。自分にそんなことをして欲しくもなかったのかもしれない。答えは分からなかったが、それでも、自分も何も言わずにアルミ缶を持っていった。

 「もうアルミはないですか?」

 「知っているの?」頭を丸め、下駄を履いた男がなぜ彼の手伝いをしているのかが不思議に思った清掃局のおばさんは聞いた。

 「知っていますよ。」微笑みながら答えた。

 「そこに置いとけば、取り来るよ。」おばさんも少し微笑んだ。

 「ありがとう。」

 おじさんはその間もひたすら缶を潰していた。自分は胸のポケットからタバコを一本出し、彼に差し出した。そして、火を点けて上げた。彼は少し頭を下げお辞儀をした。

 タバコを吸いながらも、彼は仕事を続けた。続けながらタバコを吹かすその姿は以前何らかしらの職人をしていた感じを受けた。様になっていた。

 自分もタバコを吸い始め、アルミがなくなるまで拾い集めた。そして、5本ぐらいしか残っていなかったが、タバコを彼の胸のポケットに入れた。

 彼はそれを受け容れてくれた。あまり無理はしないようにと伝え、最後に握手をして別れた。

 清掃局の人たちにも挨拶をして、その場を離れた。

 いつも5個ぐらしか持っていなかったアルミ缶だが、その日は30個ぐらいは集めただろう。彼の普段の生活は知りえることは出来ないが、彼はあのようにして生活していることを見た。健気な姿を見た。

 この今もそうしているのだろう。生きていくために不自由な身体を動かしているのだろう。

 もちろん、それは彼だけではない。彼だけではないが、誰もがかけがえないその命を繋ぐために今を生きている。

 記憶のなかにはその人たちの健気に生きるその姿がいろいろな瞬間に語り出す。それに答えるように今を自分は生きている。呼吸をし続けている。
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