彼には毎週必ず声を掛けるようにした。
彼は決まった場所でいつもカレーを食べるようになった。
公園の木の下である。
そこは誰も配られたカレーを食べる者はなく、何本かの木があり、雨が降っていても、少しは雨が防げるところである。
そこで彼は両腕に持ったビニール袋数個とビニール傘二本を置き、三つのカバンは背負ったまま、立ったまま、カレーを食べるのである。
私はそこに行くようにした。
ある時は、カレーのカレーの容器の中に草が入っていた。
たぶん、タンポポの葉だった。
次の週、彼はカレーを食べながら、手にはフキの葉を持っていた。
私はそれに目をやり、「それは?」とだけ聞いた。
「野菜に食べないといけないから、食べています。他にも」と言ってポケットに手入れ、くしゃくしゃになったドクダミの葉っぱを見せてくれた。
私は少し驚いたが、「うん、そうだね。野菜も食べないとね」と言い、彼はいつもそうやって彼なりに健康に気を付けて食事をしてきたんだろうと思い、その日々を思い、胸が痛んだ。
誰が彼に健康に気を付けることを教えたのだろうか。
彼は誰かから大切にされたことがあるのだろう。
その人からの言い付けを守り続けているのだろう。
彼の両親はどんな人だったのだろうか。
彼はどのようにして路上で暮らすようになったのか。
どんなに辛い思いをして来たのだろうか。
どうやって、その辛い思いを乗り越えてきたのだろうか。
彼の喜びはどんな時のあるのだろうか。
彼の楽しみは何だろうか。
死のうとしたことはあるのだろうか。
彼の世界はどんな世界なのだろうか。
私は私の内で、彼の生きてきたドラマを見ようと何度も試み、胸を痛めた。
その胸の痛みは祈りとなった。
{つづく}