湘南新宿ラインが上尾に近づいて行くと、窓の外は明るくなっていった。
天気予報はあたった。
雨は止んだようだ。
手首に掛けたビニール傘が何だか重たく感じ始めた。
上尾駅のプラットホームを降りると、冷たい風があたってきた。
料金を精算機で精算していると、隣には2年ぶりに来たコウキチがいた。
背中からはアサダの妹、トモコの声がした。
アサダの魂がキュッと集まり始めた感じがした。
改札を出ると、いつもの場所に少し早く着いた友達がいて、アサダの両親が笑顔でいた。
しかし、そこは寒かった。
ビル風が通り抜けるその場所は、あまりにも寒く、2人の友達はインナーを買いに行った。
アサダの父ツヨシは「てっちゃん、いつもありがとう。それで、後は誰が来る?」と変わらずにせっかちに聞いてきた。
私は「後はたぶんイナイの家族が30分遅れてきて。ほかの4家族は霊園の方に直接向かうようです」と答えた。
「じゃ、あと少しだから、待っていようか」
「良いですよ」
すでに10数人、そこに集まっていた。
タマの息子がカメラマンとなり、タマのスマホで写真をたくさん撮っていた。
来年のアサダの命日にアサダ家に贈るアルバムのカメラマンになっていた。
すでにもう3回、アサダ家にはこのアサダの飲み会の写真とその場に来れなかった友達の写真なども入れて、毎年、アサダの命日に合わせて、お花と一緒にアサダ家に贈っていた。
写真は私たちのグループラインにも送られてくる、それらはいつかきっと酒の肴にもなるだろう。
四台のタクシーに別れて乗り、霊園に向かった。
私は山形から来たトシと2年ぶりに来たリーコとアチュコと一緒にタクシーに乗った。
リーコとアチュコとは物忘れが酷くなった母親の話しになった。
母親と普段一緒に住んでいない2人には、たまに実家に帰った時の母親の変容ぶりにショックを受けるようだ。
私は2人の話しを聞き、老いていく親を看ることは、ただ悩みを持ちながら、時に失敗と思ったことを後悔し、それを反省しながら、試行錯誤し、自分たちも歳を重ねていくしかないのではないかと話したりした。
こうした会話が出来ることが私たちの癒しにもなっていることに間違えないだろう。
{つづく}