今日も多くのおじさんたちがカレーを食べに来てくれた。
あの84のじぃーちゃんも、ナンクルナイサーのおじさんも会えなかった。
今頃、彼らは何を見ているのだろう?何をしているのだろう?そんなことを思い浮かべる。
きっと、心強く生きていること。自分にとって都合の良いものであろうが、そう考える。そう願う。祈る。
そう、すべては希望である。
しかし、彼らは強いのも事実である。きっと、また会える、そんな気を感じる。
また逢わせてくれるだろう。・・・誰かが。
今日は仕事を終えて配った場所から帰ろうとすると、一人のおじさんがうなだれていた。
「どうしたのよ?身体の調子が悪いの?」
「いやー、飲んだんだよ。友達から焼酎もらってね」
「そうか、良かったね。ご飯、食べた?」
「一日一食食べればいいよね?お弁当を食べたよ。友達から、今朝、焼酎もらってさ。有り難い。飲んだよ。オレなんか、5、6円しか持ってないから買えないしさ。でも、友達が買ってくれたんだよ」
「そうか、そうか、良かったね。でも、ここで寝ないでね。雨も降って寒いし、風邪引くよ」
「いやー、これから、上野の炊き出しに行くんだよ」
「そうか、気をつけていくんだよ。ほんと、気をつけてね。それじゃ、またね」
彼はまだうなだれていた。
彼にとって、友達が嬉しいのか、焼酎がうれしいのか、さて、どうなのだろう?焼酎を買ってくれた友達がいることが何より嬉しいことで、彼の生きる力の一つになっているのだと思った。
あまりいいことのない毎日、辛いことの方が多い毎日のなかで、その一つの出来事が彼を意気揚々とさせるのだろう。酔いどれているが、彼の生きる力は彼が輝かせている。傘も持たず、雨に濡れた汚れた服を着ていても、輝かせている。
「友達が・・・、友達が・・・」そう連呼した彼はその友達の気持ちがほんとうに嬉しかったのだろう。
それは身にしみるようにして感じた。そうした友達がいることが、彼が自分に分かってほしいことの一つだった。
自分たちは生きていく上で何を持っていればいいのだろう?
そんなことをあたたかく考えた。言い訳も誤魔化しもなく、自分を責めることもなく、ただあたたかく考えた。
降る雨を見ては、いつか止むだろうと思いながら。