河原を巡回している警備員に様態の悪い彼が発見されるまで、どのくらいの時間があったのだろうか。
きっとそうなるまでに身体の調子は日々どんどん悪くなっていただろう、彼は「助けて」と誰にも言えなかった。
その孤独と恐怖は如何なるものであろうか。
しかし、私はこうも思う。
彼はいつどうなろうと、その覚悟はいつもあったのではないかと。
給付金のことを彼と話した時、彼は笑って言った。
「もうはなからもらおうなんて思っていないよ。本籍地だけでしょ。実家なんか、もう何年も帰ってないしね」
金に執着がなく、何の未練もない、誰も羨んでいない、すぅっと良い風が吹いているような潔さすら感じる笑みで彼は言った。
多くのものに執着しながら生きている私には頭が下がるばかりだった。
次の週、またあの男性が私のところに来て、こう言った。
「Sさん、亡くなったみたいだよ。警察がSさんのテントに来て、いろいろと調べていたって聞いたよ。死なないと警察がそこまでしないからさ」
{つづく}