白髭橋の上で久しぶりにナンクルナイサーおじさんに会った。
もう何ヶ月ぶりになるだろう、今年になってから会うのは初めてかもしれなかった。
彼はカレーを食べることはせず、橋を渡ろうと歩いてきた。
自分が近くまで行き、声を掛け、彼は顔をあげ、自分に気付くと花を開くように笑顔を見せた。
握手をして再会を喜んだ。
自分の丸めたばかりの頭を触って「寒くないの?」と言って笑っていた。
久しぶりにあった彼は汚れていた。髭は伸び放題、顔はかさかさであり、つやなどはない、あるのは汚れだけ。髪の毛は何日も洗っていないようだった。
お酒の匂いがしたので「飲んでいるの?」と聞くと「鬼ごろし{日本酒}を友達にもらって飲んだ」と言っていた。
「カレーは食べないの?」
「列に並ぶのが嫌なんだよ。気持ち悪くなる。オレ、デリケートだから・・・」
そう言って照れ笑いをしていた。
確かにデリケートなのだろう。それも極度にそうあるのだろう。だから、そうあるのだろう。
傷付くことも多いのだろう。
独りで下を向きながら歩くことをせずにはいられないのだろう。
だけど、空を見て欲しかった。青空を見て欲しかった。
あんなにも愛らしい笑顔があるのだから。
太陽にその笑顔を見せて欲しかった。
次にまたいつ会えるかなんて分からないけど、いつものような言葉で別れた。
「またカレーを食べに来てね。顔を見せに来てね。身体を大事にしてね」
「うん、うん」
彼はしっかりと頷いた。
そして、彼の背中を見送った。
祈る思いで見送った。
自分が伝えた言葉のほかに約束など何一つない先を歩き出して行った。