帚木蓬生氏の「守教」を読み終えた。
一番最後にある主要参考文献は約80冊あり、それに目を通していくとやはりあった。
帚木氏が作中人物に語らせたマザーの言葉はいなますさんが訳された「マザー・テレサ 日々のことば」からの抜粋だったようだ。
このいなますさんの訳された本は以前彼女より10冊ほど送っていただき、友達に配ったこともある、私にとって思い出深いものである。
作家と言うものは一冊の本を書き上げるのにどれだけの心身を入れ込むのであろうか、それを思うといつも敬服する、主要参考文献だけで約80冊あるのだから、ほかにもきっとたくさんの本を読んでいるはずに違いないのである。
例えば、参考文献にはラインホルト・ニーバーの本などはなかった、しかしこれはあまりにも有名な祈りなのでわざわざ文献などを載せる必要などはなかったのだろう。
帚木氏もこのラインホルト・ニーバーの祈りが好きだったのだろう。
「神よ、変えることのできないものを静穏に受け入れる力を与えてください。変えるべきものを変える勇気を、そして、変えられないものと変えるべきものを区別する叡智を与えて下さい」
「守教」を続けていく上でこの言葉・祈りを作中人物に語らせるところはほんとうに信仰の美しさが光っていた。
潜伏キリシタンとカクレキリシタンとは実は違う、しかし多くの作家はすべてをカクレキリシタンとしてしまっているようで未だに統一性はないのである。
禁教が廃止されてもなお、先祖代々の教えを守り続けている人たちがカクレキリシタンであり、そして禁教廃止により、また新たに洗礼を受けカトリックになった人たちは禁教時代を潜伏していたと言うことである。
現在も長崎にいるカクレキリシタンの人たちとその信仰は受け継ぐ人もなく、もうすぐに無くなってしまうのだろう、どうか記録として可能な限りにその存在を残していってほしいと私は切に思うと同時に願う。
ちなみに小説には記載はなかったが今村ではすべての潜伏キリシタンがカトリックになった稀なケースである。
それだけ信仰のもとで一致団結していた証しかどうかは分からないがその意味をこの小説「守教」を通して内省する価値はあるだろう。