先週の土曜日は月末のこともあり、白髭橋の炊き出しには多くのおじさんが来ていた。
その炊き出しの列を見て、これはカレーが足らないかも知れないと思った。
いつものようにカレーの列に並ぶおじさんたちに挨拶をしていった。
一人ひとりのおじさんたちの表情を見ながら挨拶していくなか、列の後方に粋な帽子をかぶり、作務衣を身にまとい、素足に雪駄を履いてくるおじさんの顔を見つけた。
私は彼に近づき、お互いに寒さに負け、彼はランニングシューズを履き、私の足元はブーツだった。
それを見て、彼は向島の芸者の話しをし始めた、向島では粋な芸者は冬でも素足に下駄であると笑いながら話していた。
ふと大きな指輪のある彼の右手の小指が目に入ると、半分になっていた。
彼と出会ってから、数年になるが、初めて小指を詰めていたことに気が付いた。
私は何を見ていたのだろうか、彼はどんな人生を送って来たのだろうか、そのようなことが脳裏に渦を巻いていった。
{つづく}