このサンダルが何かを物語っている。
至る所、針金で止められている。
それも何種類かの針金である。
その針金の一つひとつに物語りはあるのだろう。
ずば抜けて物持ちの良いこのサンダルの持ち主は土曜日の白髭橋のカレーの炊き出しに二年前ぐらいから来るようになった。
立っているのが疲れるのだろうか、片方のお尻に重心を寄せ、いつも腰を降ろしている。
アパート暮らしだと言うが、いつもマスクは煤けて黒くなっているものを付けている。
「お父さん、新しいマスクを付けて。あげたでしょ」と私が言うと、ニコニコしながら、少し前にバッグに押し込むようにしまった新しいマスクを出した。
このサンダルの写真は先週撮ったものである。
インドしか見たことがなかったようなサンダルだったので、「お父さん、このサンダル、凄いね。写真に撮って良い?」と聞き、笑顔の承諾を受けて撮影したものである。
あなたはこのサンダルから、どんな物語りを読み取るのだろうか。