自分の想像は現実にはならなかった。
昨日は雨が小降りになったこともあり、おじさんたちは650人くらい来てくれた。
カレーは550個、それと冷凍ビビンバが450個ほどあった。ビビンバは野菜のみ、なかにコチジャンとゴマ油が入っているものだった。
施設ではブラザーがそれをカレーと一緒に配ると言うので、足らなくなるのではないかとスペイン人のシスターが心配して話しかけてきた。
まず、向こうに行って、おじさんたちの数を確認してからブラザーに一緒にそれを配るか、別にして配るかを伝えると答えた。
白髭橋まで行くと、一目で分かった。550では足らないことが。
ゆっくりとおじさんたちに挨拶しながら列の最初まで行き、ブラザーに今日は絶対に足らなくなるから、別々に配った方がいいと伝えた。
550個のカレーを配っても、100人くらいは足らずにビビンバだけをもらって帰った。
韓国語表記のみのビビンバだったので、何人ものおじさんにどうやって食べれば良いのかを聞かれた。
自分はそのビビンバを一つ開けて、おじさんたちに見せながら、食べ方を伝えていった。
まだビビンバを凍ったままだった。箸を用意していくことを忘れていたことに配りながら気が付いた。
おじさんたちのなかには小枝を拾い、まだ解凍しきれていないビビンバをそのまま食べていた人もいた。自分は思いやりのなさを痛切に感じた。
おじさんたちはほとんど帰ったあと、一人のおじさんが覚束ない手でビビンバを食べていた。彼は拾ったしけもくを耳に挟んでいた。持ち物は何もなく、やせ細り、足と顔に転んであろう時に作った擦り傷があった。
話をすると、その彼は一日一食しか食べるものを口にすることは出来ないと話していた。
濡れた髪の毛と洋服が物悲しさを強調する。
「おじさん、タバコ吸う?」
「うん。」
「今日は雨のなか、良く来てくれたね。いつもあげないんだけど、今は誰も居ないし、良かったらタバコを吸って。」
そう言って二本のタバコを渡した。
彼は申し訳なさそうに、それを手にし、濡れないようにして、ポケットに仕舞った。
耳に挟んだ濡れたしけもくのせめてもの代わりにとタバコを貰ってもらった。
木曜の山友会の炊き出しも、雨のなか、420人ほど来たとのことだった。雨なので350個で足りるだろうと用意した食べ物も足らなかったとのことだった。
おじさんたちは増えている。派遣切れで職を無くしただろうと人たちも目立つようにもなってきている。
自分たちに出来ることへの限界はある。しかし、思いを込め丁寧に行いをする。そのことへの限界はない。
傷付くほど愛す。そのことへの限界はない。