とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

「母」の予言

2013-09-08 15:15:26 | 日記
「母」の予言




撮影: Leszek.Leszczynski

 落雷の瞬間を捉えた映像は数多ある。実際の落雷は音と光による二重の怖さを感じさせる。有無を言わせない自然のエネルギーを感じ、この地球の不可思議な力にただただひれ伏すはかりである。


 長雨が降り、そのお蔭か、最近は夜の暑さを感じなくなりました。ありがたいことです。秋はやはり訪れそうです。そんなある日、京都の「母」から連絡がありました。連絡 ? いや、正確には秘書というか、付き人というか、その例の男からの電話でした。その男は「母」のメッセージをメモして読み上げていました。何故直接話ができないのかと私は尋ねました。予言の時はいつもこうして読み上げています、という返事。予言 ? 私は何の事かさっぱり分かりませんでした。ただ、静かに聞いていました。

 では、読み上げさせていただきます。
 「親愛なる畝本さん、いや、親愛なる我が息子よ。これから私が述べる内容は、述べる私自身にとっても辛い内容です。これが真実だと信じているから貴方にぜひ伝えたくなりました。明日の真夜中、午前零時ごろに出雲の地で、具体的にはご縁市場の付近で奇跡が起きるでしょう。それは具体的には述べられません。私の力の限界です。しかし、確かに何か不思議な現象、不吉でもあるし、喜ばしい現象でもあります。貴方はそれをじっと見守る初めての人となります。いや、誰かと一緒に見ても構いません。結果として地元の人々に知れ渡っても構いません。何故かというとそれは不幸をもたらすものでもあり、幸福をもたらすものでもあるからです。私は今まで様々な予言をしてきました。信ずる人は事前に何か行動を起こしました。信じない人は無視しました。私はどちらも責めませんでした。何故かと言うと、的中することもあるし、的中しないこともあったからです。私は、天からのお告げをただそのまま伝えているだけです。お前が信じるか、信じないか、それはお前の自由です。ただ、私はありのままを告げたいのです」
 以上でございます。・・・男の電話はそれで切れました。私は、一人では心細いので、翌日の夜中、長柄さんと一緒にご縁市場の駐車場で辺りを見回していました。


 おい、あの婆さん、頭おかしいんじゃないか、と長柄さん。

 いや、私はそうは思わない。

 じゃ、何かがここで起きるという・・・。

 そう私は思っている。

 夜空に浮かんでいるのは月と星。おい、おい、そのほかに何かお化けでも出るということか。

 今、午前零時きっかり、何かが起こる。

 おい、お前はいやに落ち着いているな。

 いや、怖い、逃げ出したい気持ち・・・。そう言うと、急に雷の音と光が二人に襲いかかりました。

 来やがった。こんなに晴れているのに雷か。・・・長柄さんがそう言うと、二つ目の雷が襲い掛かりました。すると、市場の裏山から火の手があがりました。炎は次第に市場に向かって広がってきました。

 おい、このままでは市場が焼けてしまう。大変だ、消防署に連絡しなくては。・・・長柄さんが携帯を取り出すと、こんどは東の方の山に落雷し、バーンと大きな音がして、そこから火柱が立ちました。

 あっ、あそこは観音さんの山だ。観音さんに落ちた。こりゃ、大変なことになった。・・・私がそう言うと、その山から美しい三筋の光線が湧き上がり、一瞬のうちに市場の上に届きました。すると、それに呼応するように西の空から三筋の光線が美しい光を放ってこちらに近づいてきて、市場の上で六つの光線が交わりました。それからその光線は互いに絡み合って、市場の上に大きな光のサークルを作りました。次の瞬間大空に翼の音が響きわたり、金色の光を帯びた巨大な鳥がその光の環の上を飛び回りました。

 こりゃ、どうなってるんだ。・・・長柄さんが言いました。私は、その鳥をいつか見たことがあるような気がしました。

 火の鳥だ。

 なに、火の鳥。・・・長柄さんがそう言うと、火の鳥は大きく翼を揺らして燃え広がる山火事の炎をあおりました。火の鳥から起こる風は霧雨となって山に降りかかりました。

 あっ、火の勢いが次第に弱くなっていく・・・。

 出雲の守護神だ。

 出雲の守護神・・・、大黒さんじゃないのか。

 大黒さんの使いかもしれない。・・・私はそう呟くように言って、心の中で感謝の気持ちを込めて祈りました。火は間もなく消え、火の鳥も姿を消しました。それを待っていたかのように六筋の光も消え、もとの夜空が眼前に広がっていました。

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