医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

医療費の行方

2006年05月24日 | 薬・総合
前回、病院・診療所の診察料についてお伝えしました。情報がそろってきたところで、少し具体的に考えてみましょう。

高血圧症と糖尿病でタナトリルというACE阻害薬を朝1錠、アマリールという糖尿病の薬を朝昼1錠ずつ1月分処方されている場合を考えてみましょう。タナトリル(5mg)が82円、アマリール(1mg)が23円ですから、1月の「薬剤費」は2,296円+1,288円=3,584円です。

前回お伝えしたように、病院に支払う診察料は月1回の再診を受け2種類の薬を28日処方してもらう場合は570円(再診料)+420円(処方料)+650円(加算料)=1,640円です。

次に処方してもらった処方箋を持って薬局に向かいます。
大きな病院の近くの薬局に行けば「調剤基本料」は210円です。2種類の薬を28日分調剤してもらうわけですから、「調剤料」は800円x2=1,600円です。さらに薬剤服用歴管理・指導料 170円、特別指導加算 280円、薬剤情報提供料 170円を加算して合計2,430円です。

つまり診療所・病院に1,640円、製薬会社に3,584円、薬局に2,430円のお金が流れていることになります。

「薬剤費」は製薬会社に支払われるのですが、製薬会社もその薬の開発費や宣伝費などの経費が必要です。会社四季報を見ますと2005年の時点での大手製薬会社の利益率(経常利益を売り上げで割ったもの)の平均は約20%ですからこの場合3,584円のうち20%の717円が製薬会社の利益、80%の2,867円は薬の開発や宣伝に必要な経費です。利益率といえば、あのトヨタ自動車でさえ9%ですが、武田薬品工業はなんと39%です。

この場合、2種類も処方されているからだとか、高い薬を例にだしているからだとか、病院で検査する場合が考慮されていないなどと言わないで下さい。そういう事は承知で、あくまでも1つのモデルとして計算しています。実際にもっと高い薬はたくさんありますし、毎回検査するわけでもありません。

診療所・病院、薬局の利益率はそれぞれの経営状態によって異なるため一概には言えないのですが、一連の受診行為で支払う合計額7,654円のうち21%が病院や診療所、47%が製薬会社、32%が薬局に流れます。もちろん実際に支払うのはこの額の3割なのですが、何度も言っているように、残りの7割も私たちの税金や保険料から支払われるのですから、私たちが支払っているのと同じことです。むしろ自己負担が3割であるがために、私たちは医療費の流れを深く考えないように仕向けられているとも解釈できます。

一部のマスコミがいまだに病院は儲かっているから医療費を削減するにはまず診療報酬を下げることが必要などと言っていますが、これらの数字をみるとそれが全く的外れであることがわかります。特に、お金が診療所や病院よりも薬局に流れていることには私自身も今回初めて知りとても驚きました。

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コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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Unknown (H-dentist)
2006-06-11 10:36:12
近所の薬局さんが、年に何回も海外旅行に行き、突然休むのに、休み返上で研修しながら機材も更新できないのは、社会奉仕にもならないんです。院内処方にすると、在庫抱えて、赤字です。薬屋さんのほうがいつの間にか、物言う存在になっていました。医療は、負け組みですね。
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処方につき (零細開業医)
2006-06-10 00:16:45
院内処方ですと、処方料のみです。調剤料はかかりません。院外処方の推進がいかに医療費を押し上げているか分かってもらえると思います。

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意外でした (medwriter)
2006-05-30 09:47:21
製薬会社にそんなにお金が回っているとは、知りませんでした。意外ですね。病院経営がどこも苦しいというのは、わかる気がします。それが、サービス低下や医療ミスにつながるとしたら、怖いですね。

(リンク、貼らせていただきました。どうぞよろしくお願いします)
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