Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

猪瀬のオウンゴール

2013-04-30 | Weblog
米紙ニューヨーク・タイムズは、2020年夏期オリンピック招致を巡る猪瀬東京都知事のインタビュー記事を掲載。猪瀬知事は「アスリートにとって、いちばんよい開催地はどこか。インフラや洗練された競技施設が完成していない、2つの国と比べてください」と、他の立候補都市に言及、「イスラム諸国で人々が共有しているのは唯一、アラーだけで、互いにけんかばかりしている」という内容の発言をしたという。他にも日本が「高齢者が多く生きやすい」旨のとんちんかんな発言をしているようだ。IOC=国際オリンピック委員会の行動規範は、各都市は互いに敬意を払うべきだとして、ほかの立候補都市との比較を禁じており、「すべての候補都市にルールを守るよう強調したい」と声明、今後、東京都に真意を問いただすという。トルコのクルチ青年スポーツ相はツイッターで「発言は公正ではなく、悲しいこと。オリンピック精神に反している。イスタンブールは他の立候補都市に対して否定的な声明を出したことはないし、これからも出さない」「われわれは日本の人々を愛しているし、日本人の信仰心や文化を尊重している。そして若者も、高齢者も同じように尊重する」と発言、おおいに株を上げた。猪瀬知事は「記事の焦点が、あたかも東京が他都市を批判したとされているが、私の真意が正しく伝わっていない」、他候補都市との比較は固く禁じる規定について「十分理解しており、順守してきている」「イスタンブールは個人的にも好きな都市。他の立候補都市を批判する意図は全くなく、このようなインタビューの文脈と異なる記事が出たことは非常に残念だ」そうだ。3月13日の東京都議会予算委員会で、猪瀬知事は早坂義弘委員の質問に対して「トルコは、イスタンブールは、三十年前にボスポラス海峡に橋をかけたのは日本の会社なんですね。イスタンブールの海底、地下をヨーロッパ側とアジア側を結んでいるトンネルを今やっているのは日本の会社なんですね。それはそれなんです。今、いいたいこといっぱいあるけれども、イスタンブールとマドリードの悪口はいっちゃいけないんです。ネガティブキャンペーンはしちゃいけないことになっている。だから、東京のいいところをきちんといわなきゃいけない」と答弁。認識していたのに比較発言してしまったというのは事実である。猪瀬の弁明を受けてニューヨーク・タイムズは「記事の取材に絶対の自信を持っている」とコメント。インタビューをした記者は2人とも日本語を話すうえ、猪瀬知事はインタビューのために自ら通訳を用意した。記事で引用した言葉はその通訳が話した内容で、録音もされているという。釈明会見で猪瀬は「誤解を招く不適切な表現で、おわびしたい。認識が甘かった。発言は撤回したい」というが、発言じたいは嘘ではないので撤回は無理だろう。……私の周囲には仕事上でオリンピック誘致に期待している人もいるが、そうとうに落胆しているようだ。経済関係者はとくにそうだろう。「猪瀬辞任」の声も出ている。もう東京開催はあり得ないという結果は見えているということか。オリンピックが重要だと強調してきたのは、猪瀬自身だ。自分の失言で自滅した彼がどう責任を取るかは、本人次第ではあるのだが。……男子陸上100メートル予選で、高校3年生の桐生選手が10秒01。日本歴代2位でジュニア世界記録タイ。日本人初の9秒台も不可能ではなさそうだ。努力が結果に結びつくのがスポーツであり、純粋にスポーツそのものについて考えたいが、世の中がそれを許さない。猪瀬の発言はスポーツそれじたいについて関心のある者の発言ではない。……日本政府が「主権回復の日」式典を行った二十八日の同時間に沖縄県宜野湾市で開かれた「屈辱の日」沖縄大会には、主催者発表で一万人の県民が参加。報道によれば、若い世代の中には、政府の式典をきっかけに、四月二十八日が沖縄にとって「屈辱の日」だと初めて知った者もいるという。「知らなかった自分に一番ショックを受けた」という彼らが、これからをどう見据え、どう考えていくか。……牧伸二さんの自殺は、考えたくない、せつない話だ。高齢者と若者、それぞれが自分の立ち位置を見つけにくい時代ということなのかもしれない。……政治家も首長も国民の代表であり代理人であるに過ぎない。現役として身を挺して現場にいる者、未来を託された人たちのことを、考え、支えていくべきなのではないかと思う。それが高齢者にとっても生きやすい環境をつくりだすのではないか。経済の浮き沈みで一喜一憂する社会は、それを妨げる。
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戦後民主主義の自殺

2013-04-29 | Weblog
「主権回復の日」の政府式典。天皇皇后退場時に、出席者から突然声が上がり、壇上の安倍晋三首相ら三権の長がそろって両手を上げ、「天皇陛下万歳」と唱和。出席した国会議員や政府関係者約390人の一部も同調。天皇陛下は壇上で一瞬立ち止まったという。ありえない。憲法にある「政教分離」の原則を踏みにじるな。安倍・自民党は、天皇を担いで右傾化を正当化したいと考えているのだろう。これもまた、天皇を担いだ日本の侵略戦争の過去を忘れない他国の人たちの神経を、逆なですることだろう。天皇の政治利用、天皇の権威を借りようという意図だが、「象徴」である天皇に、そういう政治利用されるような「権威」があるはずはない。「翼をください」などの児童合唱団による合唱も、出席者に向かって舞台上で歌うのではなく、出席者と同じ舞台下から、天皇皇后・首相などが並ぶ舞台上に向かって歌ったのだという。まったく戦後の教育というものが踏みにじられている。「戦前」に戻ろうというのか。政治の場での「天皇陛下万歳」は、民主主義の自殺行為である。……清水弥生と渡邊学さんの結婚披露パーティー(写真)を終えた梅ヶ丘。洗濯機のホースが外れて水漏れ事件の報。現場にいってみると初期対応が良かったのか、まあそれほどでもない。安堵。……天気予報が変わってくれて、ここしばらくは自転車移動の日々。下北沢駅前劇場へ。サスペンデッズ『エレノア』を観る。作・演出の早船聡君は新国立劇場で『マッチ売りの少女』を演出した時についてくれた。ウエルメイド方向の作風だがちょっと不条理が入る持ち味。出演の野々村のんちゃんは私は青年座公演でお世話になっている。『ウンズロウ・ボーイ』に出た佐藤銀平とも久しぶりに話すが、なんだか大人の感じだ。同じ回を観た鈴木聡さんがしきりに「エロかった」と言っていた色香溢れるともさと衣さんら、出演者はみんな感じがいい。一色凉太さんの亡霊も面白い。衣裳の大野典子、制作の上田郁子のお二人も燐光群なじみの方々であり、鈴木聡さんと一緒に関係者の飲み会に混ぜていただき、聡さんの演説にあおられて私もいろいろ話したわけだが、喋りすぎたかなと、やや反省。
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めでたい

2013-04-28 | Weblog
このたび、燐光群の清水弥生が渡邊学さんと結婚することになり、劇団アトリエの梅ヶ丘BOXで披露パーティーを行った。前夜に設営準備は始まっていたが午後に稽古を早めに終えてから続けて大慌てでセッティング。大勢の皆さんがいらして祝福してくださる。娘が嫁ぐ父親の心境ではないかと言われるが、当たらずとも遠からずか。どうやら強く結婚を勧めたのは私だということになっているのだが、このタイミングでの決断は彼ら自身の勘の鋭さゆえ。たいへんお似合いの二人である。行動派で論客の新郎。これからも支え合い、鍛えあって(?!)ゆくことだろう。末永くお幸せに。……安倍総理は、閣僚の靖国参拝等、これだけひどい露悪的外交音痴の行動を繰り返しておきながら、しゃあしゃあと「歴史認識に関する問題が外交問題、政治問題化されることは望んでいない」と発言。「韓国や中国をはじめとする近隣の国々は、日本にとっても重要なパートナーだ。これらの国々との関係強化に引き続き努力し、地域の平和と繁栄に積極的に貢献していく」だと。だったらちゃんと相手の言うことに耳を傾けよ。「歴史認識に関する問題が外交問題、政治問題化されることは望んでいない。歴史問題は歴史家、専門家に任せるべきだ」というが、沖縄の反対を無視して4月28日を「主権回復の日」として政府主催の式典を開くことは「歴史問題の政治利用」だし、皇室を出席させることは政教分離に反している。
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言葉への不信を利する権力

2013-04-27 | Weblog
平和を守ろうとする者たちは久しく、基本的に憲法9条を守るということを主眼としてきたが、憲法改悪勢力は、それ以外の部分での突き崩しを進めようとしている。まず、憲法自体のルールを定めた96条をいじろうとしている。衆参両院の3分の2以上の賛成で国民投票、過半数賛成によって憲法を変えることができる現行に対して安倍政権は衆参両院の過半数へとハードルを下げようとしている。次の参院選で定数242の3分の2、162議席以上になれば、現行憲法のままでも国民投票に持ち込まれることになる。憲法を変えようとしているのが、憲法に守られるべき国民ではなく、憲法に縛られている権力者たちなのである。「国民が国家権力を縛る」という憲法の立ち位置からすると、政治家たちにとって「憲法を変えやすい」ということじたいが、憲法の精神に反している。「公共の福祉に反しない限り」という現行憲法のフレーズに対して自民党は、「公共の秩序に反しない限り」と、変えようとしている。その「秩序」を判断するのは誰なのか。国家権力の恣意的な判断を信用しないからこそ、憲法があるのだ。「国家権力が国民を縛る」構図への移行を、なぜ国民は見過ごそうとしているのか。そこには、言葉に対する不信がある。その不信が、権力の側に利用されている。むしろ権力側が「言葉に対する不信」をプロデュースしているといっていい。……自民党は、次の参院選が対抗馬なしの楽勝と考えているからこそ、「憲法改正」も「原発再稼動」もマニフェストに明記しているわけであり、じっさいに自民党が勝てば、国民が「憲法改正」「原発再稼動」を支持したことになってしまう。そこの部分が鈍感になっている国民は、自らの主体性を放棄しているわけであり、その背景にあるのは言葉を軽視する風潮だ。……安倍総理は「村山談話」を否定しようとしているが、「村山談話」はたんなる意見提出だったわけではない。かつてこの国が、国家として国際社会に対して、そのような認識を持っているという「約束」として、提出された言葉である。それを無視・軽視・否定する安倍発言が、無視・容認されているということは、言葉というものがおそろしく軽く受け止められ、受け流されるようになっているということでもある。……選挙前に公約にしていたことを平気で裏切る議員も、続出している。言葉でする「約束」が、信じられない社会になっている。
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『カウラの班長会議』戯曲掲載

2013-04-26 | Weblog
『カウラの班長会議』を見逃された皆さん。『カウラの班長会議』の戯曲が掲載されている「シアターアーツ54号 2013春」が、発売中である。年間回顧のさまざまな特集号である上に、戯曲が二本で、分厚い。文字通り、読み応えのある一冊である。突筆すべきは、『宇宙みそ汁』の清中愛子が、「劇評家が選ぶ2012優秀新人アーティスト」の最多票(2票だが)を、獲得していることだ! ……稽古。入り方に個人差があって、なかなか足並みが揃わない。そういう時期ではあるだろう。方言問題もクリアしていかねば。……幾つか戯曲を渡されたり新たに届いたりしていて、読まねばならないのだが、なかなか時間がない。というか、集中して他者の言葉を受け止めるのには、不向きな状態の時もある。……「NEWS23」のスクープ。鹿児島南大隅町に福一の放射能廃棄物の最終処分場を作る計画について、森田俊彦町長と、民主党の原子力部門担当の細野、仙谷らが、密かに会っていたことなどがわかる。そして同町長が原子力関係施設設置の委任状を「書いたんでしょうね」と認めた。結局は詳細も白状し、町長就任当初に書いていた。「前の町長も書いた」そうである。誘致推進派に押しきられたのだというが。しかしこれは「原発関連施設は作らない」という彼の公約とは反する。そしてこれまで否定していた、細野、仙谷ら当時の政府側からの最終処分場設置の打診は、あったのだ。この報道が、民主党政権下のことであり、結局同じことをやるつもりに違いないにも関わらず自民党を利することになるのではないかという気もする。それにしても放射能を逃れて九州に引っ越した人たちは、この騒動に、さぞかしうんざりしていることだろう。……「NEWS23」は今日もこのスクープの続報を出すという。マスメディアも捨てたものではないと思わせるのは、珍しいことだ。「シアターアーツ」も、ミニコミというしかない媒体だが、誇りを持って粘り強く続けてほしい。演劇そのものもまた然りだが、形状や対象の数がどうであれ、人から人に伝わるメディアであることに、変わりないのだ。
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「非核」守れぬ「唯一の被爆国」

2013-04-25 | Weblog
スイスのジュネーブで開催の「NPT=核拡散防止条約会議」。非人道的な核兵器の使用を放棄する共同声明が出されたが、「唯一の被爆国」とされている日本(もちろん他にも被爆国はあり、このフレーズが本当に皮肉な反語に響いてしまう)はこの声明に署名しなかった。「いかなる状況でも核兵器を二度と使わないことこそが人類生存の利益につながる」として、核兵器の不使用を訴えています。軍縮会議日本政府代表部・天野万利は「核兵器が使用された場合の影響が非人道的なものだという点では賛同している」「いかなる状況でも使用しないとしている点が、日本の安全保障政策と相いれない」。アメリカの「核の傘」で守られているから当然ということか。その矛盾に向き合って「非核」を打ち出してきたのがこれまでの日本ではなかったのか。「非人道的だけど攻められたら怖いから自分は使えるようにしておきたい」と言っているわけで、なんとも恥ずかしい。……東京新聞によれば、福一原発事故の影響とみられる現象で、野生のサルの白血球が減少しているようだ。人間も同様でないはずがない。こんな時期に「放射能を使う兵器もアリ」というのは、どうかしている。……沖縄県選出の島尻安伊子内閣府政務官(参院議員)以前に、西銘恒三郎衆院議員も既に米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題について、「県外移設を求める」とした昨年の衆院選公約を翻し辺野古移設の容認に転じていたことがわかった。県民の意思より首相の意思を尊重するのである。……石破は「普天間を固定していいのか」という恫喝に出ている。大量の核兵器が持ち込まれていたことが明らかになっている沖縄の基地。基地がなくなるべきなのは当然のことであって、何かの「駆け引き」の材料に使われるもののはずはない。……午前中は演出者協会理事会、午後は稽古、終えて大慌てで方言の検討。慌ただしい。
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あり得ないことばかりだが

2013-04-24 | Weblog
沖縄県選出の島尻安伊子内閣府政務官(参院議員)が参院予算委員会で、米軍普天間飛行場を名護市辺野古沖に移設するとの日米両政府の合意について、三年前に参院選で掲げた「県内移設反対」「県外移設」との選挙公約を事実上撤回し、辺野古移設を容認する考えを示した。「沖縄の発展のため、日米合意に基づいて進んでいくことが道である」という。「流れをつぶさにみる中、沖縄の取るべき道は間違いなく、日米が合意して進めようとしている道だと確信している。曇りなく、確信をもって進めていきたい」という。内閣に入るためには自分の主張を曲げるということか。彼女は靖国神社にも参拝した。沖縄の人たちはもちろんだろうが、私も怒りがおさまらない。……「「相手の言いなり」だけが外交ではない」と題した産経新聞の社説が、気が狂っている。島津義弘軍と徳川の戦いをネタに(なぜ?)、「特攻」を賛美、 「日本のリーダーが靖国神社を参拝、英霊たちに感謝するのは当然のこと」「参拝によって日本人の勇敢な戦いぶりを思い起こさせる。そのことは、日本を敵視する国に対する十分な抑止力となると言っていい」。これはひどい。韓国の抗議行動についても、「この過剰な反応こそ、韓国が日本の「底力」を恐れていることの証拠と思えばいい」そうだ。日本の大新聞が、こんな子供でさえ思いつかない見当違いの自惚れに基づいた愚かな思い込みを社説にするとは、なんと恥ずかしいことか。……麻生副総理が米国の戦略国際問題研究所(CSIS)での講演で「日本の水道を全て民営化します」と発言したり、もうこの国は、国民の暮らしを守る、最低限の人の生活を保証する、という責任を放棄した。……誤解のないように付け加えておくと、劇場に現れず新国立劇場『効率学のススメ』を中止させてしまった田島優成という俳優のことは、私は知らない。ジャッジする立場でもない。人は間違いを起こすものだ。そこから何を学び、どう生きるかだ。……私たちにできることは、あり得ないことが起きたからといってなし崩しに流されないで、その後を生きることだけだ。
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稽古以外もいろいろ

2013-04-23 | Weblog
午前中、杉並区役所で会議。……午後、稽古。……夜、いろいろ雑務が多いが、かなり遅れて、石原岳ライヴへ。翌日からの国立地球屋のシリーズへは行けないので、この日にした。やんばる高江から遠征してきて、ギターを背負い、五十キロ近い機材をトランクに入れて運んでいる、タフな旅の中の一日。このトランクを飛行機に積んだ時の超過料金はどのくらいなのだろう。本人に訊くのを忘れた。……夜も更けて、中津留章仁と話。この人は懐が深い。最近よく会ってますね、と言われてみると、確かにそうだ。……今日も自転車移動の日。寒い日々が続くが、私は寒さよりも雨がいやだ。……靖国神社春季例大祭。これまでに麻生太郎副総理兼財務相ら3閣僚が参拝し、安倍晋三首相は参拝は見送ったが、供え物の真榊を奉納。それを受けて、韓国の尹炳世外相は訪日予定を中止した。公式参拝は憲法20条の政教分離原則に抵触するし、東京裁判でA級戦犯と認定された者が合祀された靖国への参拝は、「過去の侵略戦争の肯定」と受け止められることは、わかりきっている。安倍首相はA級戦犯分祀や無宗教の国立追悼施設建設には関心がないようなので、東京裁判について「連合国側の勝者の判断によって断罪がなされた」とした本人の発言は、「A級戦犯とされている者たちには、罪がない」と考えているということだ。安倍本人が公式に発言した以上、本気でそう思っているなら、彼らに「罪がない」ことを公式に「証明」し、国際的な理解を獲得するための努力をするべきだと思うが、そうしているわけではない。「靖国参拝」そのものが、論理のないパフォーマンスである。超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」も追随するようで、この国が「論理のない、過去に学ばない、子ども国家」であることが、あらためて世界中に知れ渡ることになる。……新国立劇場『効率学のススメ』が、出演者・田島優成が劇場に現れず、公演中止。所属事務所によると本人の「時間の大幅な勘違い」が理由。連絡がつかず、関係者が家まで行ったがいなかったという。彼は前日に、さいたま彩の国芸術劇場で蜷川演出『ヘンリー四世』を観劇したという。東京まで帰り着かなかったのか。損害負担はどのようになるのだろう。この件に関連し「アンタースタディ」について言及する人たちがいるが、この制度は日本にはまず、ない。ブロードウェイやウエストエンドなどで、「アンダースタディ」と呼ばれる制度では、その代役の俳優は、本番のあく前の一定の時間までに、劇場まで三十分か十五分以内に辿り着ける場所で待機することが義務づけられている。「アンダースタディ」から本公演の主演に昇格した人もいる。かの地では演劇が「ビジネス」、ろくすっぽ稽古をしていない人がいきなり代役で出ることも成立するとしたら、やはり演劇がどうも「商品」としてしか考えられていないのではないかという疑問もある。以前、ケビン・ベーコンの一人芝居を観たが、これにも「アンダースタディ」がいて、ごくたまの平日のマチネに、その「代役」の人が出演する回もあったようだ。一人芝居だと「代役」というのは、確かにヘンである。だが、そもそもこの仕事は、「交換可能」であるはずがない。
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日曜日の過ごし方がわからない

2013-04-22 | Weblog
東京以外では、ありえないはずの積雪もあったらしい。四月だというのに。……午前中は雑務と、家のこと。雨で野球の練習のない息子はここぞとばかりにただひたすら寝ている様子。……で、ものすごく久しぶりに、埼玉へ。彩の国さいたま芸術劇場で蜷川幸雄演出の『ヘンリー四世』。開演前、蜷川さんに「珍しいじゃない」と言われるが、じっさい、この劇場は久しぶり。フォルスタッフといえば、私はどうしてもオーソン・ウェルズの監督・主演の映画を思い出してしまい、なかなか先入観抜きに観られない。埼玉、ホリプロ、蜷川陣営の関係はうまくいっているようで、もう六年前になる、私が書いた『エレンディア』の頃からそうでもあるが、日本には珍しい、公共劇場と付属劇団のようにも感じられるし、今回の公演も、奥行きの広い劇場を「アトリエ」のように作っているところが、とても親近感が湧くし、共感できる。感想はいろいろあるが、同劇場の蜷川演出『ヘンリー六世』よりもクオリティは高いと思う。……夜中にたまたまテレビを付けていると、蜷川演出のイスラエルとの合作『トロイアの女』についてのJNNドキュメンタリーをやっている。番組の作り手が妙に批判的なのが、いろいろ複雑だが、まあ自由でよろしいと考えるべきか。ただ、自分たち日本人の立場をイスラエル・パレスチナ問題に関して「よそ者」と自己規定するのはどうなのか。日本人が「小さな緩衝地帯」になるそうだ。そして、演劇にそんな力はありっこない、そりゃそうだ。イスラエルの保守層には「彼(蜷川)は役に立ちたいんでしょう」と、上から目線で言われている。イスラエルの観客たちは戦争の悲惨さを感じた上で「だから戦争に負けてはならないんだ」という声が出たりしている。それじゃ対パレスチナの「戦意昂揚演劇」ってとらえることもあるということなのか? 蜷川さんがパレスチナに「行かなければならない」というのは、どういう意味なのか。ただ、「イスラエルにいるアラブ系の俳優」は、パレスチナの声を代弁することはできない。その辺りの状況は想像に難くない。……私は昨年末話題を呼んだイスラエル作家の『第3世代』テキストを、まったく評価しない。一年くらい前に台本をもらった時から違和感があり、上演を観ても、パレスチナ情勢を少しでも認識している者がいたら、そうはゆかないだろう、と思うはずだ。……蜷川さんが合作の意義について「うん。ある」というが、それを「私にはわかりません」という番組のナレーションは、取材対象を批判しているわけで、かなり大胆である。いろいろと考えさせられる。……アカデミー賞のドキュメンタリー部門で話題の候補作だった『壊された5つのカメラ』を破って受賞した『シュガーマン』は、そんなにいい映画とは思わなかった。賞レースにいろいろとバックグラウンドの政治情勢もあるのかどうかは、私は知らない。『壊された5つのカメラ』を観た上では、必ずしも「イスラエル経由ではパレスチナを理解できない」と決めつける気持ちは、持ちたくはない。……「平和なはずの日本」だが、自民党が徴兵制導入の検討を示唆との報。やれやれ。……サケの缶詰から、1キロあたり22ベクレルが検出。製品は、マルハニチロの「さけ水煮缶」だと。サバの缶詰からも。……六十を超えて再々婚した幸せ絶頂の北村想さんが、ブログで『二十歳のエチュード』をもじって、「六十歳のエッチ度」というタイトルの文を記していて、驚く。最近のブログに難しい話が続いた反動か。夜の生活にも触れていて、「ともかくもimpotenceは治った」「閨房においては嫁さんを討ち死にさせられれば、六十歳のエッチ度としては上出来でしょ」だそうだ。おめでとうございます。二月に「劇王」でお目にかかった時もお元気そうだった。「天才ゆえの狂気」とかも語っておられるが、もうあなたの心配はしないことにしますよ。ほんとに、お元気は嬉しいです。
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『帰還』ぼちぼち立ち稽古

2013-04-21 | Weblog
稽古。木之内頼仁の初立ち稽古。木之内さんは基本的には二枚目の線なのだが、じっさい黙ってじっとしていればそう見えなくないのだが、いざ動き始めると、うー、アングラ世代であることがあからさまである。それがどういう意味かは、まだ内緒。素晴らしいのだ。そのことが。……にしても、二十歳頃に出会った人たちと一緒に、ある種の「初心」を共有しながら芝居ができるのは、幸せだ。俺はひょっとしたら、世界一、幸せなのかもしれない。……しばらくは、午前中は事務、午後は稽古、夜は諸々の観劇や打合せの予定。いろいろ問題山積なのだが、珍しく、というか、台本を書いていない故にできる、独特のペースで日々を生きる。それもありがたいことか。
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『帰還』チラシ

2013-04-20 | Weblog
朝から書類仕事に追われ、連絡も多々、でも十時過ぎには家を出て、高円寺で劇作家協会運営委員会会議。淀みなく喋り続けるが時間が足りない。とにかく皆とこれからについて考え、集中する。……午後は稽古。台本は離さないが、初めて動いてみる。藤井びんの演技に木之内頼仁が笑う。この空気感は三十一年ぶりなわけだ。『帰還』チラシも完成。三田晴代さんのイラスト、各所で好評。仕上がりを見てあらためて思うが、高崎さんのデザインも、すっきりして、とてもいい。……そしてまた、高円寺へ。……どうにも、がっかりなことの重なる夜。気分を変えたくて、老舗店で讃岐うどんを食べるが、そこでも、私が直接被害を受けたわけではないが、無神経な大声の客に消耗させられる。そいつはトイレのドア開けっ放しという暴挙も。帰りしな、そっと店先まで出てきての先代のご主人の詫びに、職人の気概。感じ入る。……さらに呼び出されて、親しいバーで定番のギムレットとシングルモルト一杯ずつ、変わらぬマスターのもてなしに、気持ちをリセットして帰る。……つまり今日は自宅→高円寺→梅ヶ丘→高円寺→荻窪→自宅と、自転車移動の日。天気予報に「前日に比べ極端に寒くなる」と脅されていたわけだが、冬に戻るわけでなし。チャリンコ族には快適な日。それより地震が多すぎるのが気になる。……米上院軍事委員会(カール・レビン委員長)は、日米両政府が合意した普天間飛行場の名護市辺野古への移設について「地元の反対で達成できそうにない。できるにしても相当な時間と費用が要る」と発言。同飛行場在沖海兵隊のグアム移転事業については国防費の自動強制削減で「グアム移転計画が確実に遅れる。議会が支出凍結を解除しても24年まで完了しない」。その上で普天間飛行場は「今後10年の任務遂行能力のため多大な設備改善投資が要る」。継続使用を念頭に、日本側に負担増を求める構えだ。菅義偉官房長官はあらためて名護市辺野古への県内移設を強調。オスプレイの訓練も「本土でもできるだけ分かち合っていく」というが、もう完全に沖縄の頭越しにものを言っている。……もともと安倍首相の喋りは、たぶん彼自身の「演技くささ」「自意識過剰」のため、多くの人が生理的に違和感を表明しているが、今回の「女性支援」を打ち出す発言の、猫なで声の気持ち悪さといったら……。……まあ、ともあれ、これから広く行き渡るはずの、『帰還』チラシを御覧ください。

http://rinkogun.com/Next_files/帰還%E3%80%80東京チラシ.pdf
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カレーが入ったらカレー料理

2013-04-19 | Weblog
稽古場最寄りの床屋へ散髪に行くつもりで早く着いたが待ち客でいっぱい。散髪は夜に行くことにして珍しく稽古場最寄りのやや気取った洋食屋で昼飯を食べることにする。ランチメニューからそこの店名を冠した「~流」と銘打たれたオムライスを注文。なるほど、上品に量は少なめ、それはそれなら仕方ない、上に乗っているタマゴはオムレツ式にかたまりで半熟を強調、それもよろしい。しかし、下のご飯が、チキンライスでも白飯でもなく、カレーライスなのだ。カレーピラフやカレー炒飯ではない。大阪の「自由軒」のように、ルーに混ぜ合わせてあるのだ。しかしメニューは「オムカレー」ではない。「オムライス」である。上にかかっているのはケチャップでもデミグラスソースでもなく、液体感の強いさらさらのソース。決しておいしくないわけではない。しかしこれは概念としては「オムカレー」であろうし、「オムライス」によほどのことがない限り多かれ少なかれの「ケチャップ感」「トマト感」を期待する向きには、うーむ、ということになる。「オムライス」とは洋風「タマゴご飯」と訳す人もいるかも知れないから、卵料理なら仕方ないだろう、ということでもあるが、カレーというのは強力な主張を持った食べ物であり、一応提供する際には「カレーが入っている」ことは記すべきではないか。などと暢気なことを考えているぶんだけ、お昼の時間にのんびりできたということか。……ここに食べ物のことなど記していると、じつはなにか隠しているのではないか、とよく疑われるのだが、じっさい、いろいろな計画が進行中である。それはそのうち、また。
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シアターピープルといっていいか

2013-04-18 | Weblog
午前中から方言に取り組む。熊本出身の木下智恵さんと。彼女はつかこうへい最後の門下生の一人で、中津留章仁『背水の孤島』等でも活躍している俳優、方言関係の仕事は初めてという。私はかつて『セパレート・テーブルズ』で共演している。一緒に出ている場面はなかったが。……午後、稽古。慌てない。……夜、行けるうちにと思い、急遽「庭劇団ペニノ」の「はこぶね作品」と銘打つ『大きなトランクの中の箱』を観るため森下スタジオへ。Bスタジオに三ヶ月籠もって作ったという、劇。笑えるところ多し。タニノクロウの自意識とのたたかいを見守る1時間半。出鱈目さが愉快だがとにかくセットの凝り方が半端でない。舞台美術志望者は必見。……タニノ君に誘われ関係者と居酒屋へ。こういう飲みの席の会話は一部関係者には「飲み屋外交」といって疎んじられることも多々なのだが、諸外国の劇場での終演後の劇場カフェでのコミュニケーションと、何が違うというのだ。たまにはこういう席もいいなと思わせる面白い若者たちはいる。初めて会う人にもシアターピープルという共有意識は持てるのだ。舞台監督の三津久さんともっと飲みたかったけれど森下は意外と遠いので、翌日のあれこれを考え、よい子になって帰宅。そのうち三津さんとはとことん飲みたい。
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嫌な世の中

2013-04-17 | Weblog
読み合わせ。慌てず、少しずつ時空と人間をみつけてゆく。……大阪府教育委員会は、入学式の司会をしていた府立高の教諭が、君が代斉唱時に「歌っていなかった」と発表。「気付いた来賓が校長に通報」したことによって、わかったという。歌を歌うことが義務だなんておかしい。それを告げ口することが肯定・奨励・義務化させられてゆくということか。気持ちが悪い。ひどい話だ。……リトアニアで日立製作所が事実上受注した「ビサギナス原発」の建設の是非を問う国民投票が行われ、建設反対票が62・70%に達し、建設賛成の33・96%を上回ったという。東京電力福島第1原発事故が原発への安全性への懐疑を生んだのだと思うが、もっとも懐疑の念を抱いていないのが当事国である日本ということだとすれば、なんと異様なことだろうか。……山田 勝仁さんがFB上で「広告代理店が(反TPP)キャンペーンを引き受けるなら、きっと「平成の不平等条約」というキーワードを全面に押したてて猛烈な反TPPキャンペーンを展開すると思うんだけどなあ。反対派は戦略下手」と指摘、それはその通りだと思う。だけど考えてみれば「広告代理店的に戦わないといけない」という現実じたいが理不尽。マスコミのあり方の問題でもある。そして、沖縄の「基地反対」の表明はどう考えても、既に広告代理店的なものをはるかに超えて広がっている真摯なものであるはずなのに、それもヤマト社会には反映できないという現実か。いろいろ考えさせられる。……ボストンマラソンで爆弾事件。いたましい。しかし、この事件がどう政治的に扱われてゆくか、事実が明らかになっていく過程をも、直視していかないと。アメリカの友人は既に「この件でアメリカは一つに結束する方向になっている。不穏だ」と言っている。
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神田川沿いを犬と散歩する三國さん

2013-04-16 | Weblog
三國連太郎さん亡くなる。「国」という字は「王様」が入っているからいやで「國」という字を使っていたという。舞台は『ドレッサー』は観たけど、清水邦夫さんが彼に当てて書いた新作が実現しなかった(他の俳優が演じた)のは残念だ。私の実家が『カンゾー先生』のロケ地近くだったので、饅頭をもって陣中見舞いに行き、柄本明さん、唐十郎さん、天願大介さんらと飲んだのを覚えているが、あの映画も三国さん主演の予定であった。その一週間前に健康上の問題で柄本さんと交代されたのであった。成城(と聞いている)に引っ越される前は、近所に住んでおられて、神田川沿いを犬を連れて散歩されているのによく遭遇した。「神田川沿いで出会う人」として三國さんを挙げるというのは、戯曲『神田川の妻』の中でもそんな台詞を書いた。もう二十年前のことである。私自身が東京という街に馴染んでゆく当時の過程で、神田川沿いといえば三國さん、なのであった。いろいろ思うけれど、日本という社会のある部分がどんどん失われていくことと重なる。三國さんがいるといないとでは、神田川沿いの空気だって変わるのだ。……渋谷に最新作を観にいって、アフタートークも聴いて、久しぶりに廣木隆一監督に会う。まわりに若い人たち、生徒さんたち(?)が多かったので、飲みに行かず帰る。翌日は稽古初日なのだ。
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