Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

レンタルなんもしない人は本当になんもしないってわけじゃなかった

2019-08-31 | Weblog

何しろ自分が「なにもおきない」という新作に取り組んでいるので、「レンタルなんもしない人」という存在を知り、著書「レンタルなんもしない人のなんもしなかった話」(晶文社)と「〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。: スペックゼロでお金と仕事と人間関係をめぐって考えたこと」(河出書房新社)を読んでみた。

レンタル無料、だけど「なんもしない」。「ただ1人分の存在だけが必要なシーンでご利用ください。ごく簡単なうけこたえ以外なんもできかねます」という、twitter発「レンタルなんもしない人」という「人材派遣」サービスを2018年6月3日に始めた著者。10ヶ月で10万人ものフォロワーを集めたという、そのネット記事等をまとめ、書き加えたもの。既にテレビや媒体で取り上げられ、コミック化もされているという。

一人で入りにくい店の付き添い、ゲームの人数あわせ、花見の場所とり、自分が被告の裁判の傍聴席に座ってほしい、誰にも言えない話を聞いてほしい、私のお見舞いに来てくれませんか? 謝罪の見守り、離婚届提出の同行、行列に並ぶ、ただ話を聞く、絵画のモデルになる、一人カラオケに付き合う、掃除をしているのを見ている、ドラマに出演する、行けなかった舞台を代わりに見る、カレーを一緒に食べる、ヘッドスパを受ける、映画を見る、ボウリングに付き合う、ブランコをこぐのを見守る、ラーメンを食べる、深夜の徘徊に同行する、言われたとおりのコメントをDMで返す、なんもしないホストになる、⋯⋯等々の依頼が来る。

「“なんもしない" 人にも、存在価値はあるんだろうか? 」「何もしない人が生きてたっていいんじゃない?」というフレーズだが、おそらく物書きとして生きていきたいと思った著者の、ネタ拾いの日々でもある。

芝居の稽古を見てくれという依頼は、けっこう拷問だったはずだと思うのだが、この人は易々とこなしている。りっぱだ。

つまり、この「レンタルなんもしない人」は大真面目な人で、「なんもしない」どころか、しっかりいろいろなことをこなしているように見えてしまうのが皮肉だ。「なんもしない」をきっちり成立させるためには努力が必要ということである。彼は「いま」を象徴的にあらわし、批評してる存在ということになるのだろう。

ただ、残念ながら、私が考えている「なにもおきない」というコンセプトには、ほぼあてはまらず、あまり参考にはならないのであった!

舞台「なにもおきない」の紹介は、以下。

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/185c59e0343198a7e34233cbf63c6f7d?fbclid=IwAR2VH0-eya65fHXNioWexqgFNiRxt72Gb5cn2u9AJ6vopdj_AKTu3s-XoUU

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南太郎さんの冷蔵庫とのお別れ

2019-08-31 | Weblog

冷蔵庫というものにも寿命があるわけで、私が東京に出てから所有した冷蔵庫の、これは二台目である。さすがに今はもう、どこにもないのだが。

私の一台目の冷蔵庫は、学生時代に寮を出て初めて入った大田区の下宿の下の階の住人が引っ越し時にくれたすごく小さな白いワンドアのもの。その下宿には共同の冷蔵庫と洗濯機があったが、別に自分の冷蔵庫があるというのは嬉しかった。

二台目の緑色のこれは、大学時代に一年だけ在籍した演劇研究会の先輩、南太郎さんがご結婚されたさい、引っ越しを手伝いに行って、新婚の部屋には新しい冷蔵庫が用意されていたわけで、南さんのアパートに鎮座していたのを何度も見かけたことのあるこのツードアを、私がいただくことになったのだ。

やがて私も一九九五年に都営住宅に引っ越して、その時に生まれて初めて冷蔵庫を自分で買った。「安売り王」として当時有名だった「城南電器」本店が、その都営住宅の前の前の住処である西永福時代の私のアパートのすぐそばにあったのであるが、そこで買わせていただいた(この冷蔵庫はおよそ四半世紀の稼動に耐えており、昔の家電はしっかりしているな、と言われるラスト世代のものだろう)。なのでその時に移動させたこの緑色ツードアが、晴れて梅ヶ丘BOXの楽屋の冷蔵庫となったのである。ドアの下部には一九八九年に貼った高橋よしあき君のバンド「THESE」のステッカーが貼られていたのを憶えている人もおられると思う。

写真で御覧になって想像がつくように、そう大きいものではない。ただ、私が学生の頃、ツードア冷蔵庫を持っている人は少なかったのではないか。考えてみれば冷凍庫はそんなに使うこともなかったが、西永福時代に同居していた照明家・竹林功が一気に百個くらい餃子を作ったとき、それを保存したりして、それなりに活躍はしていた。

私の西永福〜永福町のアパートで十年余り、梅ヶ丘で二十年余を過ごしたこの冷蔵庫は、最初の持ち主の南さんの所にいたのは十年未満だろうから、ほとんど私が使わせていただいたということになる。この緑色に慣れてしまったので、私はフツーの冷蔵庫を見ると無意識に「あ、白い」とか「あ、メタルだ」とか、感想を持ってしまうのである。

南さんは上京してすぐにこの冷蔵庫を手に入れたはずだから、一九七八年に購入されたはずである。廃棄したのは二〇一六年の夏である。この冷蔵庫は、三十八年生きたのだ。古い冷蔵庫だから電器消費量が多いはずだとも言われたが、なかなか手放せなかった。

先日、演劇研究会の同期の仲間である、東映ビデオの常務取締役である加藤和夫君が開催した、OBと現役とでやるバーベキューというのがあり、今夏は彼に『熱海殺人事件 VS 売春捜査官』のアフタートークに出てもらったりしたこともあり、初めてそういう場に顔を出した。……やはり南太郎さんのことを思い出してしまった。南さんは加藤君よりも二年前に東映に就職されていたのである。同じ演劇研究会からは関井稔也さんが松竹に就職されていた。映画会社への就職が重なったわけで、やはりそういう時代だったのであろう。その日、S百貨店に就職したYさんが今月定年退職される話も聞いた。ほんとうに、一つ時代が巡ったのだと、思わされてしまった。

この写真をアップする気持ちになかなかなれなかったのは、この冷蔵庫を廃棄したときにも淋しかったのだが、二〇一四年に亡くなった南太郎さんに、なんだか本当にお別れを告げることになるような気持ちにさせられたからである。じつは燐光群が『トーキョー裁判』を初演した頃にお世話になった関井さんも、亡くなられている。

燐光群の人たちにとっては「あの、楽屋の冷蔵庫」なのだろうけれど、私にとっては南太郎さんの思い出と共にあるものだった。

感謝しかない。

一年だけ在籍した演劇研究会の御縁が、ありがたいものだと、最近あらためて思っている。

 

南さんの思い出を記した過去ブログは、以下の通り。

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/11fdcc1a80f361dd86442c00a78c1c54

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/26d4b4571494a06cf2bae23891dd7243

 

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東京弁護士会「表現の不自由展・その後」展示中止を受け、表現の自由に対する攻撃に抗議し、表現の自由の価値を確認する会長声明

2019-08-30 | Weblog

東京弁護士会が「表現の不自由展・その後」展示中止を受け、表現の自由に対する攻撃に抗議し、表現の自由の価値を確認する会長声明を出した。

「4」に記された内容は、表現活動の自由に、「芸術」「政治」の線引きなどされてはならないのだということを、法律の専門家として明確に述べている。

「憲法21条で保障される表現の自由は、自己の人格を形成・発展させる自己実現の価値を有するとともに、国民が政治的意思決定に関与する自己統治の価値をも有する、極めて重要な基本的人権である。政治的表現が芸術という形をとって行われることも多く、芸術を含む多種多様な表現活動の自由が保障されることは、民主主義社会にとって必要不可欠である」
「我々は、思想信条のいかんを問わず、表現の自由が保障される社会を守っていくことが重要であるという価値観を共有したい」
「よって、当会は、正当な言論等によらずに展示中止を求める不当な行為や、公権力が表現内容に異議を述べてその中止を求めることに対して、強く抗議するとともに、多種多様な表現活動の自由が保障され、ひいては民主主義社会が維持・発展するよう努力する決意を表明する」


東京弁護士会「表現の不自由展・その後」展示中止を受け、表現の自由に対する攻撃に抗議し、表現の自由の価値を確認する会長声明

2019年08月29日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

1 本年8月1日から10月14日までの予定で愛知県で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が、開始からわずか2日後の8月3日に中止された。
 この企画展は、従軍慰安婦を象徴する「平和の少女像」や昭和天皇の写真を含む肖像群が燃える映像作品など、過去に展示を拒否されたり公開中止になったりした作品を展示したものであった。
 これらの作品は、観る人によって、好悪さまざまな感情を抱くものであろう。人それぞれの受け止め方があることは当然のことながら、異論反論その他主張したいことがあれば、合法的な表現行為によって対抗するのが法治国家であり民主主義社会である。

2 ところが、実行委員会会長である大村秀章愛知県知事の会見等における説明によると、実行委員会事務局や県庁に対して、「ガソリン携行缶を持ってお邪魔します」「県庁等にサリンとガソリンをまき散らす」「県内の小中学校、高校、保育園、幼稚園にガソリンを散布し着火する」「県庁職員らを射殺する」などのテロ予告と言える電話やFAX、メールが殺到したとのことである。
 このようにテロを予告して展示中止を求める行為は、脅迫罪や威力業務妨害罪などに該当する犯罪である。自己の思想信条と相容れない表現活動を、正当な言論によらず、犯罪行為をもって抑え込もうとすることは、決して許されることではない。
 大村知事は展示中止の理由として、「芸術祭全体の円滑な運営、安心安全」を挙げた。卑劣な犯罪予告に対しては、警察の力を借りて毅然とした対応をとるべきという理想論はあるものの、芸術祭及び県政の責任者として、来場者や職員の生命身体の安全に配慮する責任がある立場から、大村知事が展示中止の選択をせざるを得なかった事情は十分に理解する。
 とはいえ、表現行為が脅迫に屈するという悪しき前例が模倣犯を生まないよう、警察による徹底した捜査がなされることを要望し、警備体制を見直した上で展示が再開されることを期待する。

3 一方、河村たかし名古屋市長は、展示中止発表前日の8月2日、「日本国民の心を踏みにじる行為」などと述べて、大村知事に対し、展示中止を含む適切な対応を求める抗議文を提出した。しかし、公権力が、表現内容に異議を述べてその中止を求めることは、表現活動に多大な萎縮効果をもたらすものであり、到底許されるものではない。
 この点、補助金を支出していることから、公権力が介入することを肯定する意見がある。しかし、補助金の支出が特定の団体に有利になされるようなことがあれば格別、予め設定された基準や要件を満たしたとして支出された以上、個々の展示内容の選択については、専門家から成る実行委員会で決めるべきことであり、展示内容に対して、補助金の支出を根拠として公権力が中止を要求することは、まさに不当な政治介入と言うべきである。

4 憲法21条で保障される表現の自由は、自己の人格を形成・発展させる自己実現の価値を有するとともに、国民が政治的意思決定に関与する自己統治の価値をも有する、極めて重要な基本的人権である。政治的表現が芸術という形をとって行われることも多く、芸術を含む多種多様な表現活動の自由が保障されることは、民主主義社会にとって必要不可欠である。 
 我々は、思想信条のいかんを問わず、表現の自由が保障される社会を守っていくことが重要であるという価値観を共有したい。
 よって、当会は、正当な言論等によらずに展示中止を求める不当な行為や、公権力が表現内容に異議を述べてその中止を求めることに対して、強く抗議するとともに、多種多様な表現活動の自由が保障され、ひいては民主主義社会が維持・発展するよう努力する決意を表明する。

 

https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-546.html?fbclid=IwAR2yrAy2MtDhegskrZCJAtSt3R2VifvZGd5oCBjs_p7mrDSRS_Yr_Md3UyE

 
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島ぐるみ会議東の政府交渉

2019-08-30 | Weblog

去る28日、衆議院議員会館第2多目的会議室にて宮城秋乃さんによる「北部訓練場周辺の環境」と題した院内集会に続いて、16時30分より、水源地問題、環境問題を中心に、島ぐるみ会議東メンバーと、防衛省・外務省・環境省との政府交渉が行われた。出席者は、仲嶺眞文・島ぐるみ会議東共同代表、高江住民の会の伊佐真次・島ぐるみ会議東共同代表、田丸正幸・島ぐるみ会議東事務局長、アキノ隊員こと宮城秋乃・蝶類研究家、そして沖縄選出の新議員、屋良朝博さん、高良鉄美さんら。れいわの渡辺照子さんも応援に来てくれた。

防衛省・外務省・環境省は、若き官僚たちに対応を押しつけている。内容は、無責任そのもの。答弁中、多かった物言いが、「繰り返しになりますが」。自分たちの決めつけた内容を壊れたテープのようにくり返すだけで、同じことしか言えない、ということだ。どうしても抜けられない会議があって、私は遅れて参加したが、追い詰められた官僚たちの酷い防御ぶり、最後には沖縄の人たちよりも「米軍との関係」の方が大切であるという主旨を恥ずかしげもなく言い続けたのは、じかに聞いて、あきれ果てた。

議員会館には憲法に関するメッセージのあるものを持ったり着たりしていると注意されるという噂だったが、私が日常的に着用している〈非戦を選ぶ演劇人の会〉の「9」が大きくレイアウトされた「9条シャツ」も、入場ゲートで「注意」された。上着を着ていたからよいということになったのか、着用したまま入れたが、いったい何がいけないというのだろう。国会で「憲法」の内容を示すことに注意されるなんて! 

他の事例でも聞くが、その国の憲法についての支持を表することが「政治的メッセージ」とされるのだとしたら、「表現の不自由」の問題どころではなく、どうやらその国には「その国の憲法とは関係ないスタンダードの政治的立場」があることになってしまう。いったいここはどこなのだか、わからなくなってくるではないか。国会に於いておや。

 

動画が見られます

https://ken023.blog.so-net.ne.jp/2019-08-28?fbclid=IwAR2nKeFtVAL8Fql83jmRWOLx2_TPD1mLH-8p08ESpwlKIc5tkNAz9b-YelQ

 

 

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シナリオ作家協会「「表現の自由」に関するアピール ―「表現の不自由展・その後」の中止を巡って―」

2019-08-29 | Weblog

協同組合日本シナリオ作家協会が、本日付で「「表現の自由」に関するアピール ―「表現の不自由展・その後」の中止を巡って―」を出した。

 


「表現の自由」に関するアピール
―「表現の不自由展・その後」の中止を巡って―

 

 私たち協同組合日本シナリオ作家協会は、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」が、様々な圧力や脅迫により中止に追い込まれ、いまだに再展示されないことに危機感を覚えています。

 この企画は、過去に公共の文化施設で「排除」された作品を集めたもので、展示不許可になった理由とともに展示されていました。
「慰安婦」問題、天皇と日本人の戦争責任、政権批判など「タブー」とされがちなテーマの作品なのですから、不快に思ったり、展示すべきじゃないと主張する人もいるでしょう。
 しかし、匿名の抗議や多数の脅迫メール、「ガソリンをまくぞ」というテロ予告もありました。京都アニメーション放火事件があったばかりです。
 こういった状況に陥った時、行政と政治家がやらなくてはならないのは「断固としてテロは許さない」と発信、警備強化などを行い、展示継続できる環境を作ることではないでしょうか?
 ところが、河村たかし名古屋市長は「どう考えても日本人の心を踏みにじるものだ。即刻中止していただきたい」と述べ、菅官房長官は「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と、むしろ反対世論を煽り、展示会は中止になりました。
 暴力をちらつかせながら抗議すれば表現の場を奪えるという前例を作ったことは許しがたいです。
 菅官房長官は自らの発言が中止の判断に影響を与えたかどうかを問われ「全くない」と否定しています。
 しかし、この発言が看過できないのは影響力以前に、憲法21条で禁じられた「検閲」につながりかねないからなのです。
 行政と政治家は自分と違う意見でも守る立場に立たなければならないのです。自分が不快に思うものにも表現の機会を与えることが表現の自由なのです。
「表現の不自由展・その後」が中止になったことで、それらはなぜ不快なのか、なぜ公共の施設で展示できなかったのかを自由に考えたり議論する機会が失われてしまいました。
 それは表現者だけでなく、鑑賞する機会を奪われた人たちにとっても不幸なことなのです。
 見たくない人は見なければいいのです。それが自由です。しかし、見たい人に見せない、見てはいけないと不自由を押し付けるのは間違いです。
 大村愛知県知事はこう発言しました。
「税金を使っているからこそ表現の自由は保障されなくてはならない」
 なぜか?
 ドイツの国立劇場の方の言葉を引用します。
「ドイツはかつて大きな過ちを犯しました。国家が過ちを犯した時に、最初に声をあげるのは芸術家です。国は、自分たちが間違えそうになった時に声をあげてもらうために、芸術家にお金を出すのです」

「表現の不自由展・その後」の展示再開を求めます。
 すべての表現者、そしてすべての人たちのために。

 

2019年8月29日 

協同組合日本シナリオ作家協会 

http://www.j-writersguild.org/entry-news.html?id=284734&fbclid=IwAR2DS_TgbYDE_BjA24WkyCv02wLqngh5MHddKQdOOZgNBShKdMEh043isUo


こちらは、8月6日に劇作家協会が〈「表現の不自由展・その後」の展示中止についての緊急アピール〉を出した内容

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/0a8f050e5395e6c1da730d966d3dc71b

 

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映画「WALKING MAN」の「いま」

2019-08-29 | Weblog

今夏、上田映劇での演劇の演出はしたけれど、映画館に、「観客」としては、とんと行っていない。さいきん観た映画は試写室で観たこの「WALKING MAN」だけ。

「WALKING MAN」は、「極貧の母子家庭で育ち、幼い頃から吃音症でコミュ障の青年・アトムが、ヒップホップと出会い、最底辺の生活から抜け出すべく奮闘する姿を描いた青春映画」ということである。映画のアトムの妹の名はウランである。そんなー、と思う方もいるだろうが、私の知り合いの劇作家で本当に子供にアトムとラムとつけた人がいる。カタカナでなく当て字だったはずだが。

若者の成長を描くラップ映画といってもエミネムの『8 Mile』(‘02)とはだいぶ趣が違う。ヒップホップを軸にした映画なら『ドゥ・ザ・ライト・シング』(‘89)という傑作があるが、そういう方向でもない。描かれる世界は、七十年代の東映のB級青春不良映画ふうだったり、『19歳の地図』ふうだったり、『ビリギャル』ふうだったり、いろいろだが、日本青春映画の王道である。主人公の俳優はちゃんと吃音者を演じようとしているし、石橋蓮司の怪演は、せりふは最初の一言だけでいいのにという個人的な感想はともかく、相変わらず呆れてしまうおかしさだ。芦澤明子撮影監督のとらえた川崎の風景は今の空気を映し出していて、奇跡のようなワンショットもある。誰も助けてはくれないという実感、「自己責任」という言葉への反発は納得できる。作り手の真剣さも伝わるし、いろいろ苦労の跡が見受けられる。あと、主人公の職場として、残置物・遺品処理・特殊清掃の仕事を選んだのは、慧眼である。

かなりの試行錯誤の末に作られていることも想像できるが、「いま」を描くという、映画としての主体性のあり方は、理解できる。その「いま」を「ここ数十年」と見ていくべきだという気持ちが、自然と湧いてくる。七十年代以降の青春映画を感じさせる既視感が、巧まずしてそのようなリアリティを持っているのだと思う。私たちの社会は、あれから何も進めることができていないのではないか、という哀しき実態。

日本で「ラップ映画」を成立させたこと自体、評価すべきことだが、 どういう観客層が対象になるのだろう。関心のある方は足を運んでいただきたい。シナリオは梶原阿貴さん。10月11日公開。

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『屋根裏』以来の、演劇の革命『なにもおきない』

2019-08-27 | Weblog

燐光群最新作・情報解禁です。

『屋根裏』以来の、演劇の革命。

 

『なにもおきない』

 

世界一小さな舞台空間が浮かぶ、圧倒的虚無の劇世界。演劇と「事件」の境界線が、いま解かれる。

 

猪熊恒和 大西孝洋 杉山英之  武山尚史 樋尾麻衣子 町田敬介 西村順子  川中健次郎 鴨川てんし 円城寺あや

10.2 Wed. - 16 Wed.

梅ヶ丘BOX  

 

開演時刻

10月2日(水) 19:00(プレビュー)

10月3日(木) 19:30

10月4日(金) 14:00 / 19:30

10月5日(土) 14:00

10月6日(日) 14:00

10月7日(月) 14:00 / 19:30

10月8日(火) 19:00

10月9日(水) 14:00 / 19:00

10月10日(木) 19:00

10月11日(金) 14:00 / 19:00

10月12日(土) 14:00

10月13日(日) 11:00 / 16:00

10月14日(月・祝) 14:00

10月15日(火) 14:00 / 19:30

10月16日(水) 14:00 / 19:30

 

<全席自由> 「なにもおきないの会」会員券

一般前売 3,500円 ペア前売 6,000円 当日 4,000円  U-25/大学・専門学校生2,500円 高校生以下1,500円   ※U-25 以下の割引は前売・当日共通料金。当日受付にて要証明書提示。 【◎は前半割引】10/3(木)〜9(水)の期間は、どの回もどの券種も300円引き! ご予約順に番号をお取りする整理番号付チケットです。開場時に番号順にお入り頂きます。 開場時間を過ぎますと整理番号は無効になります。 

< 前売開始> 9月8日(日)11:00 受付開始|開演の30分前 開場|開演の15分前

10/2(水) はプレビュー、一律2,500円・人数限定・撮影等あり。   坂手洋二とゲストによるアフタートークを予定しています。 くわしくは追って劇団 HP 等でお知らせいたします。

 

【前売扱所】

◆[ 燐光群オンラインチケット ] http://rinkogun.com

    一般・ペア前売のみ扱い。WEB上でご予約頂き、セブンイレブンでチケットをお受け取り頂けます。

    お支払いは現金(セブンイレブン)、またはクレジットカードとなります(手数料はお客様負担)。※会員登録(無料)が必要です。


◆[ ご予約・お問合せ ]燐光群/(有)グッドフェローズ

    03-3426-6294

    当日精算予約フォーム  https://www.quartet-online.net/ticket/nh1002box

    ①<お名前/電話番号/希望日時/チケットの種類と枚数>をお知らせください。予約フォームでは自動返信にて予約完了となります。

       メール不着の際はご連絡ください。

    ②開演直前は受付が混み合いますので、開演の10分前までにお越し下さい。      

キャンセル・日時変更はできません。未就学児のご入場はご遠慮下さい。

開演直前・直後は(一時的に)ご入場を制限させて頂く場合がございます。

 

照明|竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)

音響|島猛(ステージオフィス)

美術|じょん万次郎

音楽|太田惠資

振付|矢内原美邦

衣裳|ぴんくぱんだー・卯月

舞台監督|森下紀彦

擬闘|山村秀勝

演出助手|中山美里

文芸助手|清水弥生   久保志乃ぶ

宣伝意匠|高崎勝也

協力|浅井企画

制作|古元道広   近藤順子 主催|有限会社グッドフェローズ

助成|文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

 

http://rinkogun.com/Nanimo_Okinai.html

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アメリカの横暴と言えない安倍政権、ではなく。

2019-08-27 | Weblog

アメリカの横暴、と言えない安倍政権。ではなく、言うことを聞くしかない安倍政権。でもなく、自らこの国の生存権を差し出している安倍政権。ということか。

中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います、と、さいきん安倍政権御用局色を増している NHK Web さえもが報道している。ひょっとしたらおかしなことだと思っていないのか、トランプに貢献できたのだから良いことと思っているのではあるまいな。……今回の日米首脳会談を受け、日本がアメリカ産のトウモロコシを追加で輸入することになったという。記者会見でトランプ大統領は米中の貿易摩擦の影響でアメリカから農作物の輸出が減少していることを踏まえ、「中国は約束したことを実行しないため、アメリカのいろんな地域でトウモロコシが余っている。安倍総理が購入してくれるのはとても大きな取り引きだ」と述べたという。害虫がどうのとよくわからない言い訳もしているが、トランプ大統領が重視するアメリカの農家対策にもつながる側面があるため判断したものと見られている。

なにしろ安倍首相とトランプ大統領は8月25日、首脳会談で日米貿易交渉について大枠で合意、牛肉の関税を38.5%から段階的に削減し9%にするこなど今後、協定が締結される見込みである。

鈴木宣弘東大教授によると、日米FTA交渉をめぐって、多くの報道で農産物の開放を「TPP水準にとどめた」かのように強調されているが、これは間違いである、という。(JA-com)

(1)そもそも、TPP水準が大問題だったのだから、TPP水準にとどまったからよかったかのような報道が根本的におかしい。
(2)加えて、米中貿易戦争で行き場を失った米国農産物の「はけ口」とされ、大豆、トウモロコシなどの大規模な追加輸入の約束がセットで行われたのだから、これは明らかな「TPP超え」だ。それにしても、1年間の日本の飼料用の輸入総量に相当する250万tものトウモロコシの追加輸入は驚異的な量であり、どうやって処理するのか理解に苦しむ。

牛肉・豚肉の関税削減で遅れをとった分を早く取り戻したいという米側の要請に応えて、アーリー・ハーベスト(先行実施)的に急ぐものを中心に決め、TPPで合意していたコメや乳製品の米国枠の設定は先送りされたとの一部報道がある。これについては、

 (3)まず、牛肉・豚肉などの関税削減スケジュールを速めて他国に合わせることは、協定としては「TPP超え」だ。
 (4)また、かりに先送りされたとしても、コメや乳製品の枠が再協議されることは間違いなく、これは「TPP超えを回避した」わけではなく、現時点で「TPP水準」と報道するのは間違いだ。TPPで合意していたコメや乳製品の自国枠を米国が放棄するわけはない。ただし、コメについては、すでに、日本が別枠の輸入(SBS米)で米国産米を大幅に買い増ししており、7万tのコメの米国のTPP新設枠がすでにほぼ満たされるまでに日本側が対応している実態がある。

 一方、普通自動車の2.5%の関税は25年後に撤廃、大型車の25%の関税は29年間現状のままで、その間に日本が安全基準の緩和を着実に履行すれば30年後に撤廃するという気の遠くなるようなTPPでの日米合意さえ、米国は破棄するとしている。
 農産物は米中紛争の「尻ぬぐい」も含めたTPP水準超えで、一方で、成果としていた自動車の約束は反故にされたのだから、まさに、得るものはなく、「失うだけの日米FTA」であることは間違いない。自動車への25%の追加関税に脅されて、やはり差し出すだけになった。
 また、「FTAではない」とごまかすために、日米共同声明を捏造してTAGだと言い張ったが、案の定、今はTAGという呼称は消えた。FTA交渉入りをごまかすための方便だったことが明白になった。やらないと国民に言ったことをその場しのぎでごまかして進めていく姑息な姿勢がどこまでも続いている。

……だそうだ。自民党が野党時に、一時でもTPPに反対していたのは、はるか昔。

日経報道によると、安倍晋三首相は、都内で講演し、政府が打ち出した成長戦略の実現で「1人あたりの国民総所得は足元の縮小傾向を逆転し、最終的には年3%を上回る伸びとなる。10年後には現在の水準から150万円増やすことができる」との見通しを示したという。「民間活力の爆発。これが私の成長戦略の最後のキーワードだ」とも強調。成長戦略は「達成すべき指標を年限も定めて明確にする」との方針も明らかにした。「2020年に外国企業の対日直接投資残高を2倍の35兆円に拡大する」ほか、農林水産物や食品の輸出額を20年に1兆円にすることや、3年間で民間投資を70兆円に回復させることなどの目標を掲げた。

……「民間活力の爆発」に期待するというのは、他力本願、責任の押しつけである。外国企業の対日直接投資と日本が買われていくことの違いが、この人の中では線引きされていないのではないか。農林水産物や食品の輸出額を増やせるという確証はいったい何なのか、アメリカから爆買いさせられているのでは、やっていることは真逆ではないか。

 

写真は七年前、沖縄市民によって封鎖された直後の米軍普天間基地佐真下ゲート。


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【日本の戯曲研修セミナー2019】秋浜悟史ワークショップ

2019-08-25 | Weblog

日本演出者協会戯曲部による【日本の戯曲研修セミナー2019】秋浜悟史ワークショップが、ここ数日、開催されている。

なかなか参加することが出来ず、一部の記録映像などを覗いていただけだが、最終日に、覗かせていただいた。一応私も戯曲部の委員ではあるので。

ファシリテーターの詩森ろばさんは、最近は映画『新聞記者』のシナリオを担当して話題の人だが、岩手で育っていて、だから近年、盛岡でのご当地的な仕事も増えている。彼女は、この企画で初めて、秋浜さんが南部弁で戯曲を書く人だと認識したのだという。意外なことだ。その貴重な出会いを大切に、誠実に、丁寧な過程を重ねた講座だったのだろうと思う。

 

私は、秋浜悟史作品は、『冬眠まんざい』を、七年前に演出している。

坂本長利さん、五大路子さんの出演(写真)。リーディングと言いながら、ずいぶん動いた。オリジナル音楽は、太田惠資さん。舞台監督は小川静夫さんで、もともと竹内銃一郎作品の舞台監督をされていた人だが、ずいぶん久しぶりにこの仕事をされたのだった。じつは私のご近所さんでもある。

 

さて、当時思ったことだが、映画『ニーチェの馬』と『冬眠まんざい』は、おそろしく共通項が多い。

吉本隆明氏の「共同幻想論」のことも思い出す。あの時代、社会の変革を考えるとき、日本の土着の共同体がどのようであったかを見直すという作業が必要だった。そういう一連の想像力が即在していた。農地改革や婦人参政権といった戦後の変革は、日本人を抜本的に変えることは、なかったのだ。

 

秋浜悟史さんのことは、私が上京した頃は、清水邦夫作品の演出家として、認識していた。

お目にかかるようになったのは私が関西公演をするようになって、大阪芸大で教鞭を執られていた秋浜さんが観に来てくださったからだ。なにしろ燐光群の中山マリは、秋浜さんとは「三十人会」の頃からのおつきあいがあるのだった。

日本演出者協会戯曲部は、もともと「近代劇」に限定した戯曲研究講座をしていたのだが、何年か前、「現在」に拡大するように働き掛けた。

こうして秋浜作品との「出会い直し」が実現し、このセクションがあることが貴重なことだと、あらためて、思った。若い世代も含めて、もっと多くの人たちと、先輩たちのことを共有したい。

 

引き続き、夜は、宮本研ワークショップが開催される。賑やかである。

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下関市の「鯨類研究室」、本年度末で閉鎖

2019-08-25 | Weblog

下関市の「鯨類研究室」が、本年度末で閉鎖されるという。

室長の石川創さんは、沖縄の小島曠太郎さん、江上幹幸さんと並んで、私をクジラ界に導いてくれる先達である。

南氷洋の調査捕鯨に14回参加し、団長まで務めた。クジラの座礁についても詳しい。いろいろなことを教わった。名護の食堂で、一緒にヒートゥー(イルカ)料理を食べたこともある。戯曲『くじらと見た夢』執筆に当たっては、石川さんの調査による克明な資料や写真を幾つも見せていただいた。劇中に登場する、フィクションと思われがちな「クジラの解体ショー」についても、石川さんの資料にお世話になった。

窪 美澄さんの小説『晴天の迷いクジラ』に登場する「クジラ博士」は、石川さんがモデルである。

山口新聞の報道によると、

下関市の公益財団法人下関海洋科学アカデミーが、クジラの学術研究や啓発を進める「鯨類研究室」を本年度末で閉鎖する方針を固めたことが分かった。唯一の室員の石川創室長(59)が定年を迎えることや市の財政難が理由。

研究室は、近代捕鯨発祥の地として「くじらの街」を掲げる市の業務委託を受け、2012年7月に同市田中町の市役所庁舎に開設した。開設当初から南極海や北西太平洋での鯨類調査で調査団長を務めたことがある石川さんが室長を務めている。

これまでに鯨の座礁・漂着の記録や船からの目視調査などから成果を報告書で公表。市民講座「鯨塾」を50回以上開いて鯨の生態や捕鯨などについて解説するなどの活動をしている。

同アカデミー理事長を兼務する三木潤一副市長は「定年の延長は市の財政的に厳しい。研究の成果をアカデミーで活用していきたい」と話した。石川室長は「残念だが判断を受け入れるしかない。3月までできるだけのことはしたい」と話した。

とのこと。

唯一の室員の石川創室長、という記事の言い方は、まあ、仕方ないが、事実である。私が訪問したのは一昨年か、もっと前だったか。クジラ研究のユートピアであり、クジラと私たちの接点を保持し、捕鯨の歴史を伝えていく、最後の砦のようにも思える場所だった。クジラそのものと、捕鯨史に関心のある方は、この地を訪ねてみることをお薦めする。

自由な立場になった暁には、いろいろな選択肢があるだろう。石川さんの今後の活躍にも、期待したい。

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福島第一原発のあまりにも悲惨な現状 ②

2019-08-23 | Weblog

福島第一原発のあまりにも悲惨な現状。また新しい記事が。

ブログに新聞記事をそのままシェアすることはしない主義だったが、貼り付けます。

東日本大震災のその後の福島をずっと追いかけてきた、東京新聞の片山夏子さんの記事。

 

この猛夏の中、こんな現実が続いている。

「アンダーコントロール」を撤回して、オリンピックは中止すべき。

こうして現実を誤魔かしていく日本は、「嘘つき国家」である。

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韓国、日本との軍事情報包括保護協定を破棄

2019-08-22 | Weblog

ロイター通信によると、韓国大統領府はきょう22日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると表明した。同協定は、更新の判断期限を迎えている。河野外務大臣が前日この協定について「日本としては、しっかり維持していくべきものだと思っている」と発言したのを、真っ向から振り払った。

韓国側は、日本政府が明確な証拠を提示せず、しかし安全保障上の懸念を理由に、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」のリストから韓国を除外したことが、両国の安全保障協力環境に「大きな変化」をもたらしたからだ、と説明している。

「ホワイト国」除外以降、韓国と日本の関係は冷め、経済へのダメージは大きい。日韓の航空便は半減、韓国の観光客をお得意様にしていた九州の温泉などの観光地は、客がいなくなったため半額基準のダンピングを始めたという情報もある。すべて、日本が仕掛けたことの結果である。韓国に対して無神経な方策をとり、国際世論の批判に晒されたばかりか、結果として国内の民業を圧迫している。

そして「ホワイト国」のリストから除外された韓国は、産業的に「それでも今まで同様にやっていける」と豪語している。もしも本当にそうなれば、日本のやったことは全て失策、自滅のため以外の何ものでもなかったことになる。

 

日本政府の方策・発言は、短絡的な攻撃ばかりである。背景にあるのは、安倍政権の「強がり」政策の継続、あるいは国内で現政権の矛盾から国民の目をそらせようとする誤魔化し、いずれにせよドメスティックな目的ばかりだ。そもそも徴用工訴訟問題に真摯に向き合い解決する気がないというところが過ちのスタートだが、まったく後先を考えず感情的に動いてしまったことが、露呈され始めている。

以来、韓国側は、テレビ等で、過去の日本の韓国に対する「援助」「補償」の欺瞞を暴くニュース・ドキュメンタリーを連日のように出しているようだ。それはたんに国内向けではない。「日本に対して要求することの正当性」を、本気で国民的課題として検証し始め、なお世界世論をも味方に付けようとしているのだ。

また、韓国は、福島第1原子力発電所の汚染水処理計画に「情報共有」を求めている。その気になればいくらでも逆襲できるのだ。

 

この諍いの結果は、歴史が証明するだろうが、日本政府は決して勝ち負けにこだわるのでなく、謙虚にこれまでの一方的な態度をあらため、両国が平和的で正当な話し合いのテーブルにつけるよう、努力すべきだ。

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チェーホフさんには似ていません

2019-08-22 | Weblog

今年六月にロシアに行って、遭遇したチェーホフの像や肖像画の写真をアップすると、私がチェーホフに似ているという人がいる。そんなことはあるまい。

チェーホフは44歳で亡くなった。私は彼よりも一回りも長く長生きしているというのに、悶々と書き続けている次第だ。

今、同時に三本の戯曲を抱えている。こんなの三十代以来だ。

 

写真は、六年前、『屋根裏』でヤルタの「チェーホフ演劇祭」に招待されたさい、チェーホフが晩年の最後の5年間を過ごした現在博物館になっている「チェーホフの家」を訪れたさい、表のチェーホフ像と共に。

似てないよ。

このヤルタの地で「桜の園」「三人姉妹」は書かれたのだ。

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/5bc8922247d260f26fde04738dccf07f

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/da936615d826c10ba7084b0478435ce5

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/11e6394d185d9322f36577feaf1ce756

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島次郎さんの仕事への共感を新たに

2019-08-22 | Weblog

劇作家大会 2019 上田大会、終わって帰京し、雑務に追われつつ、不意に振り返る。

あくまでも個人的には、やはり、シンポジウム「 現代演劇と舞台美術 ~島次郎の仕事を中心に~ 」に、尽きる。

鵜山仁さん、松本修さん、舞台美術家の堀尾幸男さん、演劇ジャーナリストの今村麻子さん、内容としては、舞台美術であり、島次郎という才能との関わりであり、だったが、この四十年間の演劇の流れを振り返り、今後の可能性を示唆するものだったと思う。

演劇であり、創作そのものについての踏み込んだ話は、かなりできたのではないかと思う。同時並行でいろいろなプログラムが進む大会故に詮ないことだが、もっと多くの人に聞かせたかったと思う。

堀尾さんの言う、島次郎さんは、一つの油絵を描くように、舞台空間を造形していった、という話の、内実というか中身というか、イメージとその実現過程について、彼と現場を共にした者たちの共感は、深いものがあった。

島さんは、自らが創作者であるだけでなく、私たちの時代の人間たちの交錯するこの現場群たちの媒介者として、濃密に、時代と向き合っていた。

エントランスでの、島さんが舞台美術を手掛けた作品写真群、三十近い作品を一望して見たときに受ける感触が、島さんという人間の存在感、仕事のスケールの大きさ、その片鱗を示していた。

あの写真たちを、また、どこかで展示したいと思う。

 
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「表現の不自由展・その後」展示中止は、「国内問題」ではない

2019-08-21 | Weblog

「韓劇.com」によると、韓国で10月に再演が予定されていた東野圭吾原作の演劇『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が、上演中止と発表されたようだ。
本作の翻訳家イ・ホンイさんは、かつて私が韓日合作の演出の仕事のさいに現場通訳についてくださったことのある人だ。残念だ。

また、現在「芸術の殿堂」で25日まで上演予定の日韓共同制作の人形劇『ごめんね、ありがとう! るる島の秘密』が、地方公演と年末に予定されていた再演がキャンセルされたという。

他にも国立劇団などで日本関連の演目の上演中止の話がある。中止や延期がどんどん増えている。

 

一方で、あいちトリエンナーレで展示中止で問題になっている「表現の不自由展・その後」についても、解決していない。

それなりに名前の知られた表現関係者でもこの件や「少女像」そのものについてデマを飛ばしている人がいて、辟易させられる。

 

私は「表現の不自由展・その後」展示は再開されるべきと思う。抗議して出品を取りやめた別なアーティストたちもいるのだ。なんとかならないのだろうか。

 

この件については、「表現の自由の問題ではなく、政治の問題だ」と、したり顔で言う人がいて、うんざりさせられる。

「政治的な表現」と「政治的でない表現」があったりは、しないのだ。この国の多くの人たちは、「中立」「両論併記」を、いまだに信じているのだろうか。

 

それにしても、このあいちトリエンナーレでの展示中止問題は、全世界の知るところになっている。この国を動かす人たちには、そのことへの恥ずかしさ、情けなさの感覚は、ないのだろうか。あなたが生まれるよりはるか昔の、鎖国時代に戻りたいのであろうか。

ひょっとしたら解決を望んでいない人たちがたくさんいる、ということなのだろうか。

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