資料のだいじな3冊が見つからず。他に調べたりまとめたりしなければならない物が多いから慌てず、いつか見つかるだろうと構えていた、しかし発見できない。今日になって、あれは沖縄帰り飛行機で前席背後のシートポケットに入れたのだと気づいた。私はそこに本を入れる習慣があるが、置き忘れたことは一度もない。忘れたことじたいと、どこに忘れたか今日まで思い出せなかった、ダブルショック。……夜中に打合せ、年長者に言い聞かせるみたいになるのはなかなかむつかしいが、斜に構えずきちんと聞いてくれれば必ず通ると信じ、じっさい、そうなった。相手がプライドと先入観に支配され、こちらの目を見もしないような輩だと、そうはいかないが。
蒸し暑い。エアコンは嫌だがついに「除湿」をかけてしまう。……そんな中、読み返して面白いのが、今月お会いした琉球新報・前泊博盛さんの駐留米軍=ウルトラマン論。ウルトラマンは戦って怪獣だけでなく街じたい破壊してしまうが、現状復帰を迫られるのを避けたいのと、これまで沖縄で起こした犯罪が5,600件に及ぶ後ろめたさから、責任を取らず3分で「シュワッチ!」と飛び去る。そもそも身体がでかいぶん大飯食らいで、年間6000億円もの駐留経費=思いやり予算を平らげている。「怪獣(大陸の国々)から守ってあげる」と65年間居座り続けているが今すぐそういうリアリティは乏しいのだから、普段はM76星雲(グアムにあるらしい)で待機してていいはずなのに、という感じ。
午前中、ITIミーティング。座高円寺地下稽古場で、第一回・劇作家協会〈月いちリーディング〉。新作戯曲のブラッシュアップ、発表、発見の場。ニューヨークシアターワークショップの定例リーディングを意識した試み。作品は中澤日菜子『海待ちノ月』、楠原セツ『喫煙所』。この日は燐光群俳優+占部房子出演。満席。追加席を何度か足す。ディスカッション活発でいい感じ。協会からも別役実、永井愛、鈴木聡、篠原久美子、長谷基弘と、賑やか。これからも毎月の最終土曜日18時より、座・高円寺稽古場にて開催。
この秋、新国立劇場演劇部門の鵜山仁芸術監督は三年間の任期を終えるが、同劇場は新たに、芸術監督の選出方法・任期など適正かどうか協議する「外部の有識者らを含めた検討委員会」を設置するという。委員は10名程度、選出方法は明らかにされず、「同劇場が選任する」という。一昨年、芸術監督の選出過程について紛糾したわけだが、ほとんどの演劇人が、新国立劇場が満足のゆく解答・説明を果たしたとは考えていないはずだ。はたして問題点を直視し、その反省と考察を踏まえた結果になるのかどうか。……父の日にもらった鬼太郎の親父の絵の団扇が活躍する梅雨の日々である。
京都産業大学での講演のご案内。来週、6月30日(水)午後1時15分から。演題は「時代と創造性」。京都産業大学中央図書館ホール。在学生、大学関係者だけでなく、一般の方も入場できます、とのこと。同大学図書館長・小林一彦氏は大学時代の同級生。詳しくはhttp://www.kyoto-su.ac.jp/lib/news/2010/20100630_kouen.htmlをご覧下さい。
普天間問題についての新聞論調が「沖縄の負担軽減を実現すべき」「負担の軽減で理解と説得を」みたいなのが散見されて、マスコミはもう沖縄県内辺野古移転を大前提にしている。どうかしている。そもそも「負担の軽減」などというまやかしの言葉にどうしてそんなにやすやすと乗っかれるのだ。……電車に乗っていて、目下の難題の打開策を思いつく。だがここからがまた手間がかかる。
昼を食べそびれて夕方「なか卯」に入りかけるがやめて、古びたそば屋にする。働いている人もお客もみんな六十歳を(大幅に)越えている感じ。不思議だが居心地はいい。……剣幸さん歌う「てぃんさぐぬ花」を聴く。新鮮。沖縄の五音階と伴奏のアコーディオンの調和も見事。
原稿に難渋。内容がむつかしいのだから当たり前だが。新たな校正、新たな仕事の依頼も届く。忙しいけど、ありがたいことだ。……ワールドカップが南アフリカで開催されているのは昔からすると感慨がある。かつて差別国家だったアパルトヘイトの時代、かの国の支配層に日本人が「名誉白人」と呼ばれていた恥ずべき記憶は、教訓として新世代に受け継がれることもなく、まあ年長者にしても、そんなことみんな忘れてる、ということなのだろう。
のどかな日曜の午後だが短髪になった赤澤ムックに呼び出され駅前喫茶店で彼女の新作プロットについて話。戯曲の内容がそうだから仕方ないのだが売春だSMだ元締めだとあれこれ話していたため聞き耳立てたご近所に怪しまれたかもしれぬ。……それ以外は終日原稿。先週からいろいろなことが起きて危機状態なのだが、間に合うだろうか。
『CIELS』が刺激的だったワジディ・ムアワド『頼むから静かに死んでくれ』を静岡まで観に行きたかったが諦める。俳優座稽古場での、劇団制作者・プロデューサーの方々が中心に企画した「劇場法」シンポジウムに出る。正直、気が進まなかった。開催意図が曖昧だし、たんに情報を得たいだけなら、ずいぶん時機を逸している。案の定、若い人はまったくいない。私を含め呼ばれて参加したパネラーと司会の扇田昭彦さんはこの「会」の構成員ではないし、一部に「反劇場法」の旗振りを期待されるのも迷惑な話だ。昭和十六年のファシズム「演劇法」と同一視して批判した気になっている人たち、呑気すぎませんか。演劇・劇場の基盤整備について考えることは必要だし、支配・管理を恐れるなら、的確に反駁してゆくしかない。
午前中、日比谷公会堂。高校行事の合唱。各クラス二曲ずつ歌うのだが、息子のクラスの二曲目「寺山修司作詞」に、驚く。……午後は原稿に戻る。夕方、映画『告白』。映像技術の進歩はよくわかるし、真剣さもあるのだが、突っ込みどころ満載、予告編大会かCM集のようであり、笑って観てもいいはず。作中人物の言葉通り「なんて、ね」なのだろう。……夜、調布で、る・ばるの千秋楽に間に合う。
午前中から演出者協会事務所で会議。午後は芸団協へも行き話をする。前向きであることと筋を通すこと、あらゆる立場を考えるようにすること。しかし限界はある。夜はまた別な打合せ。一日じゅう話をしていた。……相撲業界の野球賭博露見。みんな昔からやっていたようだし、知らない人もいないようだったから、なぜかこの時期に来て、「国技」として守られてきた世界のタブーが破られたということか。必ず理由はある。
多くの人が<スーパーモーニング>を見たと連絡くださる。日中はハードに仕事。……夜は笹塚、半ズボン・サンダル・自転車、近所のおじさんスタイルで、乞局(こつぼね)『裂躯(ザックリ)』。劇団名やタイトルからすれば、根暗いアングラと思われそうだが、不可思議なユーモアもあって飽きさせない。主宰下西啓正氏は大学の十五年後輩に当たる。十五年、と書いていてちょっと参ってしまうが、まあそういうことだ。何度か帰りしなに誘いなおされたりして、けっこう遅くまで皆さんとお話してしまう。
終日机に向かうが思うように捗らず。データ整理進めつつラジオで国会代表質問を聞くが、「言ってみただけ」「受け流しておしまい」の応酬、出来レースにしか聞こえない。ことに普天間基地問題は本気の人間が一人もいない。「役所が強いので指導力を発揮できる状況になっていなかったので辺野古になった」としゃあしゃあ言ってのけた元首相と五十歩百歩。そもそも「政治には国民の命を守る責任がある。地元だけで決まるわけではない」「沖縄の皆さんが『県内移設はやむを得ない』と思う状況をつくっていく」と沖縄県民に宣戦布告した岡田外相を糾弾する人がいないのはヘンだろう! ……別な話。16日テレビ朝日系<スーパーモーニング>で燐光群『ザ・パワー・オブ・イエス』上演が紹介されます。
思うように仕事が進まず。しかし夜は南青山MANDARA、南谷朝子さんライヴへ。りりしく素敵である。同時出演のいわさききょうこさんも、なかなか。……ワールドカップの日本・カメルーン戦はリアルタイムで観られず。私がテレビ観戦していると日本が負けることが多いというジンクスは、また当たった?! それにしても終電車近くの乗客が少なくガラガラだったのは皆さん早々に帰宅して自宅のテレビにかじりついていたということなのだろう。