Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『根っこ』

2013-04-07 | Weblog
悪天候を気にせず、赤坂へ。地人会新社の第二弾『根っこ』を観る。アーノルド・ウェスカー作。『カウラの班長会議』に続く、島次郎さんの美術。家を出て都会で働く若い女ビーティがロンドンからノーフォークの家族のもとに休暇で帰ってくる。結婚する予定の恋人ロニイが訪ねてくることになっている、それを待ち受ける人々、という物語。ビーティーと七瀬なつみさん演ずる姉の会話で始まる導入部からして純然たるイギリスのストレートプレイの風情なのに、どこか『ガラスの動物園』『ゴドーを待ちながら』の変奏曲のような錯覚も覚える、不思議な戯曲。作家自身が後にウェスカー夫人となる女性の親族を中心に描いた農村の家庭劇、ということで、強いて言えば、私の書いたものでは『ピカドン・キジムナー』が近いということになるのだろうか。ビーティを演ずるのは占部房子さん、なにしろかつて二人芝居『蝶のやうな私の郷愁』で夫婦(歳の離れた)を演じた仲である。私が観にくることを知っていた演出の鵜山仁さんは、ビーティの母親ブライアント夫人を演じる渡辺えりさんらに、「今日はロニイが来る」と吹聴していたらしい。そんなことは知る由もなかったが、なかなか複雑な気持ちで観る芝居であった。終演後、鵜山さん、出演者の皆さんと劇場一階のパブで一献。劇の中身と経緯に当てられたか、どうも私は鵜山さんに甘えて、「いやみな弟」然として、あれこれ喋ったようである。いささか反省しつつ、風雨の中を帰宅。……今の日本でこの上演が観られることは幸福だし、木村光一さんたちから連綿と続く「脱近代劇」を企図する日本の翻訳劇上演の系譜を知る上でも意義深い。

http://earth-h.at.webry.info/
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