東京以外では、ありえないはずの積雪もあったらしい。四月だというのに。……午前中は雑務と、家のこと。雨で野球の練習のない息子はここぞとばかりにただひたすら寝ている様子。……で、ものすごく久しぶりに、埼玉へ。彩の国さいたま芸術劇場で蜷川幸雄演出の『ヘンリー四世』。開演前、蜷川さんに「珍しいじゃない」と言われるが、じっさい、この劇場は久しぶり。フォルスタッフといえば、私はどうしてもオーソン・ウェルズの監督・主演の映画を思い出してしまい、なかなか先入観抜きに観られない。埼玉、ホリプロ、蜷川陣営の関係はうまくいっているようで、もう六年前になる、私が書いた『エレンディア』の頃からそうでもあるが、日本には珍しい、公共劇場と付属劇団のようにも感じられるし、今回の公演も、奥行きの広い劇場を「アトリエ」のように作っているところが、とても親近感が湧くし、共感できる。感想はいろいろあるが、同劇場の蜷川演出『ヘンリー六世』よりもクオリティは高いと思う。……夜中にたまたまテレビを付けていると、蜷川演出のイスラエルとの合作『トロイアの女』についてのJNNドキュメンタリーをやっている。番組の作り手が妙に批判的なのが、いろいろ複雑だが、まあ自由でよろしいと考えるべきか。ただ、自分たち日本人の立場をイスラエル・パレスチナ問題に関して「よそ者」と自己規定するのはどうなのか。日本人が「小さな緩衝地帯」になるそうだ。そして、演劇にそんな力はありっこない、そりゃそうだ。イスラエルの保守層には「彼(蜷川)は役に立ちたいんでしょう」と、上から目線で言われている。イスラエルの観客たちは戦争の悲惨さを感じた上で「だから戦争に負けてはならないんだ」という声が出たりしている。それじゃ対パレスチナの「戦意昂揚演劇」ってとらえることもあるということなのか? 蜷川さんがパレスチナに「行かなければならない」というのは、どういう意味なのか。ただ、「イスラエルにいるアラブ系の俳優」は、パレスチナの声を代弁することはできない。その辺りの状況は想像に難くない。……私は昨年末話題を呼んだイスラエル作家の『第3世代』テキストを、まったく評価しない。一年くらい前に台本をもらった時から違和感があり、上演を観ても、パレスチナ情勢を少しでも認識している者がいたら、そうはゆかないだろう、と思うはずだ。……蜷川さんが合作の意義について「うん。ある」というが、それを「私にはわかりません」という番組のナレーションは、取材対象を批判しているわけで、かなり大胆である。いろいろと考えさせられる。……アカデミー賞のドキュメンタリー部門で話題の候補作だった『壊された5つのカメラ』を破って受賞した『シュガーマン』は、そんなにいい映画とは思わなかった。賞レースにいろいろとバックグラウンドの政治情勢もあるのかどうかは、私は知らない。『壊された5つのカメラ』を観た上では、必ずしも「イスラエル経由ではパレスチナを理解できない」と決めつける気持ちは、持ちたくはない。……「平和なはずの日本」だが、自民党が徴兵制導入の検討を示唆との報。やれやれ。……サケの缶詰から、1キロあたり22ベクレルが検出。製品は、マルハニチロの「さけ水煮缶」だと。サバの缶詰からも。……六十を超えて再々婚した幸せ絶頂の北村想さんが、ブログで『二十歳のエチュード』をもじって、「六十歳のエッチ度」というタイトルの文を記していて、驚く。最近のブログに難しい話が続いた反動か。夜の生活にも触れていて、「ともかくもimpotenceは治った」「閨房においては嫁さんを討ち死にさせられれば、六十歳のエッチ度としては上出来でしょ」だそうだ。おめでとうございます。二月に「劇王」でお目にかかった時もお元気そうだった。「天才ゆえの狂気」とかも語っておられるが、もうあなたの心配はしないことにしますよ。ほんとに、お元気は嬉しいです。
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過去の責任には謝罪と賠償を持って応えるべき。