Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

ストレス抱える自衛官たちの「駆け込み寺」

2014-10-31 | Weblog
ネット上のNHK NEWS WEBに、次のような記事が載っている
……………………………………………………

空自幹部 線路に男性投げ落とした疑い

航空自衛隊の幹部自衛官が29日夜遅く、東京のJR大久保駅で酒を飲んで帰宅途中に肩がぶつかったと声をかけてきた会社員の男性を、ホームから線路に投げ落としたとして、殺人未遂の疑いで警視庁に逮捕されました。
逮捕されたのは、防衛省航空幕僚監部の3等空佐、鶴田義明容疑者(39)で、警視庁の調べによりますと、29日午後11時半すぎ、新宿区にあるJR中央線の大久保駅のホームですれ違った際に肩がぶつかったと声をかけてきた44歳の会社員の男性に対し、「殺してやる」などと言って胸ぐらをつかみ、線路に投げ落としたとして、殺人未遂の疑いが持たれています。男性にけがはなく、電車は駅に近づいていましたが、別の乗客が非常停止ボタンを押したため、電車は駅の手前で止まったということです。
その後、男性と駅員がホームにいた鶴田3等空佐を取り押さえたということです。
警視庁や航空幕僚監部によりますと、鶴田3等空佐は29日、仕事を終えたあと同僚と酒を飲み、帰宅する途中で当時酒に酔っていて、調べに対し「全く覚えていない」と供述しているということです。防衛省航空幕僚監部の猿渡辰也広報室長は、「誠に遺憾で、詳細を調査し厳正に対処します」とコメントしています。
……………………………………………………

まだまだもろもろは企業秘密なのだが、私の新作『8分間』は、とある駅のホームでの8分間の出来事を描いたもので、こういう記事には敏感にならざるを得ない。
http://rinkogun.com/

「別の乗客が非常停止ボタンを押したため、電車は駅の手前で止まったということです」ということだが、えらいよ、別な乗客さん。そりゃ、電車にぶつかったら、まず、死にますから。

噴火した御嶽山の救助活動などで株を上げていた自衛隊だが、このようなことがあると、たんに「不祥事」では片付けられまい。
「殺してやる」と言ってしまえる人間がいるところが「自衛隊」なのだ、と思われても仕方がない。

今回の犯人は自衛隊内でもエリート故の傲慢さが感じられるが、一つの就職先として「自衛隊」を選んでしまった人たちにとっても、新たなストレスを感じざるを得ないであろう新たな事態が続いている。
私が信じたいのは、食べていくために職を選んだ人たちの中に、「人を殺すために自衛官になりたいと思う人」はいないだろうということだ。
現在、安倍内閣が強行しようとしている、「集団的自衛権行使」による「同盟国などの防衛」については、明らかに今の自衛隊法が規定する「自衛隊の任務」ではない。自衛官への「契約違反」であるという考え方が順当だ。
私や周囲の人たちは、そうしたストレスのはけ口、不当な待遇に対する連絡センター、救済施設が必要だと思った。
自衛官たちにも「駆け込み寺」が必要だった。

そうして十一年前に始まった、私も発起人の一人である「米兵・自衛官人権ホットライン」は、今も続いている。

自衛官人権ホットライン http://gi-heisi.doorblog.jp/archives/27316757.html
ホットライン相談室 http://8701.teacup.com/hotlines/bbs

その活動を根底にした小西誠さんの著書最新刊『自衛隊 この国営ブラック企業』(社会批評社)がある。
当時はイラクで人質になった元自衛官・渡辺修孝さんを支えるため、いいだもも、大野和興、小西誠氏らと一緒に「渡辺修孝さんの裁判を支える会」(わったん基金)の発起人にもなった。

「米兵・自衛官人権ホットライン」の初心を忘れないために、開始当時の呼びかけ文を以下に採録しよう。

……………………………………………………


■自衛官と家族のみなさんへ
 ――『米兵・自衛官人権ホットライン』発起人・賛同人・サポーターからの呼びかけ
 
●この「ホットライン」は一過性ではなく、これからの10~20年を見据えて開設しました。  
 私たちは、自衛官とその家族のみなさんの悩み・不安・訴えに真剣に耳を傾け、一緒になって考え、共に解決の道を探っていきたいと思っています。
 弁護士の方々にも法律上の協力をいただいている広範な市民運動であり、相談された自衛官とその家族のみなさんの秘密は厳守します。みなさんの生命・人権・生活問題、どのような悩みや訴えでもかまいません、安心してお気軽にご連絡ください。
 匿名で構いません。相談される方が特定される所属・氏名は言う必要もありませんし、こちらからも聞きません。
 この「ホットライン」は、一過性のものではありません。今後10~20年の長期的なものとして開設しました。今後10~20年にわたって、自衛官と家族のみなさんの生命・人権・生活の問題に取り組んでいきたいと思っています。
 
●スタッフには、二〇年近くの自衛隊勤務経験者など、元自衛官がいます。
 この「ホットライン」は、PKO派兵の時開設された「自衛官110番」の経験を引き継ぎ、より発展、充実させたものとして開設しました。
 相談に耳を傾けるスタッフには、20年近くにおよぶ自衛隊勤務経験者をはじめ、数名の元自衛官がいます。自衛隊用語や隊内生活の細かなところにも対応できます。安心してみなさんの声をお寄せ下さい。
 今後の問題として、カウンセラーや精神科医との連携も考え、検討しています。
 みなさんの心の問題で、専門的なケアが必要であれば対応できるようにしたいと思っています。
 
●『米兵・自衛官人権ホットライン』発起人・賛同人・サポーターからの呼びかけ
 兵士と共に反戦を!〈米兵・自衛官人権ホットライン〉の市民運動に参加してください。
                              2003年10月1日
◆共同代表 
 いいだもも/今川正美/色川大吉/大野和興/尾形 憲/小田 実/瀬戸内寂聴/鶴見俊輔/ダグラス・ラミス/武 建一/水田 洋/小西 誠(事務局長)
 
 わたしたち一同は今回、ブッシュのイラク先制攻撃戦争・占領支配に反対する立場にたって、「米兵・自衛官人権ホットライン」を開設することを発起しました(2003年6月15日)。
 ブッシュの違法・非道・不当な戦争に参加させられる在日米軍基地米兵ならびに自衛官自身にとって直接な生命・生活・人権の問題について、兵士およびその家族からの身の上相談に乗り、耳を傾ける「人権ホットライン」の連絡センターは、次の通りです。
(住所)165-0034 東京都中野区大和町1-12-10
               「兵士と共に反戦を! 米兵・自衛官人権ホットライン」
★連絡センター    
(Eメール)gi-heisi@jca.apc.org(ホットライン・ホームページ)www.jca.apc.org/gi-heisi/
(郵便振替口座)口座番号 〇〇一二〇―七―五六三八五四 口座名称「人権ホットライン」
 
 米兵・自衛官ならびにその家族からの悩み・不安・訴えに真剣に耳を傾け、一緒になって考え、共に解決の道を探ってゆきます。弁護士の方々にも法律上の協力をいただいている広範な市民運動であり、相談してこられる兵士とその家族についての秘密は厳守します。どのような悩みや訴えでもかまいません。安心してお気軽にご連絡ください。もちろん、サービスは無料です。米兵からの相談には、アメリカ本国のThe GI Rights Hotline (邦訳「米兵人権ホットライン」)の協力を仰ぐこともできます。
 〈兵士と共に反戦運動〉を広げる私たちの公然たる、広範な市民運動の立場は、二つの基本的スローガンに集約されます。
(1)「不殺生」=殺すな・殺されるな・殺させるな!
(2)違法・非道・不当な命令・戦争には「良心的な軍務拒否」を!
 私たちはこの広範な市民運動の趣旨が、国際紛争の解決にあたって先制攻撃および他国の政権打倒を目的とした戦争行為を禁止している(国連憲章)と、戦争の放棄・戦力の放棄を規範化している〈日本国憲法第九条〉との趣旨に適うこと、そしてそのようなものとして「軍服を着た市民」である米兵・自衛官の生命・生活・人権を守ることができるものと、確信します。
 市民としてこのような反戦運動が広範に広がっていくならば、〈ブッシュ・ドクトリン〉に基づいて「二一世紀型の戦争」を呼びかけているドル・核帝国の覇権野望を打ち砕くことができるでしょう。そのようなブッシュ米大統領の世界独裁支配の野望に、日米新ガイドライン安保下に追随している小泉日本首相の有事法制・イラク新法下の参戦・海外派兵をも、打ち砕くことができるに違いありません。
 ブッシュ=小泉の大規模先制攻撃戦争の魔の手が、主権侵犯のブッシュのいわゆる「ドミノ倒し」として、アフガン、イラクから、パレスチナ、シリア、イラン、そして朝鮮半島へと拡大しようとたくらまれています。朝鮮半島・台湾海峡・東北アジアの非核・非戦地帯化・海域化を願っているアジアの民と連帯して行動することが必要になっています。そのグローバルな東の焦点に、米日安保体制下に沖縄をはじめ在日米軍基地を抱え込みながら毎日暮らしているわたしたち市民は、われとわが身を守るためにも、兵士と共に反戦を展開するこの市民運動をみんなで起ち上げようではありませんか。
 兵士と共に反戦を! 殺すな・殺されるな・殺させるな! 良心的軍務拒否を!
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フェイスブックに驚かされる

2014-10-29 | Weblog
新作『8分間』本番まで一ヶ月を切り、忙しいのだが、どうしてもだいじな再来年の話を二件、打ち合わせ。
その一つは古典芸能と出会う。そして某アジアの国と関わる。

帰宅して、劇団員・長谷川千紗のアップした、彼女が行ってくれた昨日の岡山での打ち合わせと様々な方への訪問時の写真が上がっているのを見ようと、フェイスブックを覗くと、他に、驚くべき書き込みが。

「あの…どなたか結婚式で使ったグローブやベールを貸してあげでもいいわよって人いますか?」
という投稿をフェイスブックにして、それが舞台用に衣裳を探しているとかではなく、本人の結婚に向けてのことらしいと皆に悟られて、泥縄式にそこへの書き込み群によって、二ヶ月前に入籍していた事実を今日一日で皆に知られてしまった女優がいるのだが、
それは小山萌子さんである。
面白すぎるというか、あっけらかんとして素晴らしい。ある意味、まったく萌子らしいよ!
おめでとう。ほんとに。

「ためしに金正男の画像を投稿してみたら、FBが勝手に僕をタグ付けした。顔認証の精度もこんな程度か。FBの陰謀も、まだまだだな。ハハハ…」
という投稿をフェイスブックにして、そこに載せられた金正男の顔写真が確かにどう見てもご本人にしか見えないという、社会に向けて発言もする俳優であり演劇人であり映画企画仕掛け人でもある「金正男そっくりさん」の方がいるのだが、
それは高山正樹さんである。
本当に似ている。いや、周囲のみんなもどこかで気がついていたかもしれないのだが、ご本人の口から語られるとは。
いざというときには覚悟が必要な人生だ。ご注意ください。

話を戻すと、掲載した長谷川千紗の写真には、以下の解説がついている。
「岡山県の学校の演劇部を見学させていただいています。昨日午前中お邪魔した総社高校、演劇部の顧問の柴田先生とご一緒に撮っていただきました。演劇部の舞台豪華でした。放課後は同じ岡山県の芳泉高校にお邪魔しました。一緒にエチュードしてくれた生徒さん達と写真撮り忘れた!残念。とっても楽しかったです。」とのこと。柴田先生ありがとうございます。そして長谷川は、私の母校の演劇部員相手にワークショップ講師をしてくれたのだ。
私は芳泉高校の演劇部員ではなかった。陸上部と映画部だった。演劇部にいたのは二級下のさとうこうじ君である。彼はあの頃から目立っていた! そして『8分間』でも目立ちまくるであろう!
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日本劇作家協会会報「ト書き」2014豊岡大会スペシャル版

2014-10-28 | Weblog
第53号となる日本劇作家協会会報「ト書き」、〈日本劇作家大会2014豊岡大会スペシャル版〉を、ついに皆さまのお手元にお届けすることができるようになりました。
「単なる記録としてではなく、劇作家大会2014豊岡の53番目の企画としてお楽しみいただけましたら幸いです」(責任編集 工藤千夏)という、充実した内容。
たいへんな熱意と労力で仕上げてくれた広報部が付けてくれたサブタイトルは、「劇作家、城崎へ。」。

「執筆者は、坂手洋二・西山葉子・田窪桜子・小松陽介・中津留章仁・長田育恵・青木豪・ごまのはえ・堀川炎・山田裕幸・佃典彦・徳留久佳・土田英生・マキノノゾミ・鐘下辰男・長谷川彩・鈴木アツト・芳凬洋子・渡辺えり・羊屋白玉・清水弥生・赤澤ムック・西史夏・樋口ミユ」
「宮台真司×篠原久美子×高間響×坂手洋二のシンポジウム。<「言論表現の現在形」から「温泉の劇場性」まで>の一部も採録しています。編集担当の工藤千夏による大会メモも。」(大会fbより)

ご希望の方にこの「ト書きスペシャル版」をお送りします。必要なのは送料のみ。多めに刷ってありますが、なくなりましたらご容赦ください。劇作家協会のご案内を同封することもご了承ください。申込み方法は末尾に記しました。

………………………………………………………………………………

目次・概要は以下の通り。

▽ 劇作家大会豊岡大会の運営を終えて 坂手洋二

▽ 特別寄稿  
  ・劇作家大会を終えて        西山葉子
  ・生活している場に「劇」はある   田窪桜子
  ・演劇部、劇作家大会に参加する!  小松陽介

▽ <シンポジウム> 「言論表現の現在形」から「温泉の劇場性」まで
   宮台真司×篠原久美子×高間響×坂手洋二

▽ 城崎温泉殺人事件とスペシャルリーディング『をんな善哉』
   レポート   中津留章仁

▽ AIR企画 てがみ座『乱歩の恋文 ~芝居小屋バージョン』
   レポート    長田育恵

▽「青木さんちのシェイクスピア」を終えて  青木 豪

▽「桂九雀と13人の劇作家」
   お世話になりました  ごまのはえ

▽「コウノトリの温泉めぐり」
   レポート    堀川 炎

▽「月いちリーディング豊岡出張スペシャル」
   レポート    山田裕幸
   参加コメント  佃 典彦 徳留久佳

▽「対決! 劇作の鉄人」
   レポート    土田英生
   対決を終えて  マキノノゾミ 鐘下辰男 長谷川彩 鈴木アツト

▽ 渡辺えり講演会「夢見る力 ー 舞台に恋して」
   レポート    芳凬洋子
   大会を終えて今思うこと  渡辺えり

▽ 羊屋白玉城崎紀行2014  羊屋白玉

▽ 表現する女性たち  清水弥生

▽「こうのとり短編戯曲賞+街角リーディング企画」
   事業委員を終えて  赤澤ムック
   終わって飲んだビールがおいしかった  土田英生
   受賞コメント  西 史夏

▽ 復活!ゴールド劇場特別講演/二本松企画『松野井雅ひとり芝居~万華鏡三景~』
   レポート     樋口ミユ
   市長賞に寄せて  赤澤ムック

▽ 大会メモ
  ・データで見る豊岡大会
  ・劇作家大会の歴史
  ・城崎国際アートセンター
  ・アーティスト・イン・レジデンス(AIR)
  ・豊岡で生まれた珠玉の小劇場作品
  ・城崎国際アートセンターの食堂
  ・コウノトリ育むお米

 ▽ 編集後記   工藤千夏

 ▽ 入会のご案内/ご支援のお願い


 発行:一般社団法人 日本劇作家協会
 編集:工藤千夏 勢藤典彦 国松里香
 アートディレクション:工藤規雄(Griffe Inc)
 デザイン:上野久美子(Griffe Inc)
 写真:豊岡市、古元道広、中田満之、田窪桜子、渡辺えり、西山水木、
    国松里香、工藤千夏
 
………………………………………………………………………………

日本劇作家協会の会報誌“ト書き”は、年2~3回の発行。
年間事業を網羅した総合誌の他に、東北支部版の震災特集、東海支部版の劇王特集、若手新委員特集、高校演劇特集など、テーマを絞った号も発行しています。
会員・賛助会員の特典として毎号郵送している他、各種演劇関連団体にも寄贈。発行時期には座・高円寺などの劇場ロビーにも置いています (冊数限定)。
ご希望の方に“ト書き”スペシャル版をお送りします

  □ 日本劇作家大会2014豊岡大会スペシャル版
  □ 劇作家協会20周年スペシャル版
  □ 高校演劇スペシャル版

https://www.facebook.com/jpac2014

http://www.jpwa.org/main/activity/35-report/286-togaki53

………………………………………………………………………………
 
[申込み方法]
  申込みフォームをご送信ください
  日本劇作家協会事務局宛てに、送料分の切手と宛名書きをご郵送ください。
  [宛先] 〒166-0002 東京都杉並区高円寺北2-29-14-501
  [送料] 1冊205円/2冊250円/3-4冊400円
   5冊以上の場合はお申込み後に送料をお知らせします
  *宛名シール/または封筒に糊などで貼れるご自身の宛名書きを同封のこと
  *封筒に「ト書き希望」とご記載ください
  *会報の送付時に劇作家協会のご案内を同封することをご了承ください
 申込みフォームは自動返信ではありません。こちらからの連絡を待たず、
 切手等をお送りください。会報発送時にメールでご連絡申し上げます。

http://www.jpwa.org/main/about/report
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「桃太郎」は日本の侵略戦争で子どもたちと国民へのプロパガンダに使われた「海の神兵」だった

2014-10-26 | Weblog
産経新聞系メディアに衆院議員・義家弘介が「子供が使う教科書だからこそ」という文を寄せている。これが、表現の自由を脅かし、歴史をねじ曲げる内容である。

義家議員は教科書検定で「社会科の教科書に見られる一面的な記述、偏向した記述を改めるための活動をしてきた」そうだ。「この度の改定により、すべての社会科教科書が歪曲自虐史観から脱却することを期待したい」ともいう。
彼は平成10年度から14年度まで使用された高校の教科書「国語I」(筑摩書房)に、作家の池澤夏樹氏の「狩猟民の心」を取り上げた単元があったことに触れている。
義家議員が引用したとおりに池澤氏の文を引用する。

《日本人の(略)心性を最もよく表現している物語は何か。ぼくはそれは「桃太郎」だと思う。あれは一方的な征伐の話だ。鬼は最初から鬼と規定されているのであって、桃太郎一族に害をなしたわけではない。しかも桃太郎と一緒に行くのは友人でも同志でもなくて、黍(きび)団子というあやしげな給料で雇われた傭兵(ようへい)なのだ。更(さら)に言えば、彼らはすべて士官である桃太郎よりも劣る人間以下の兵卒として(略)、動物という限定的な身分を与えられている。彼らは鬼ケ島を攻撃し、征服し、略奪して戻る。この話には侵略戦争の思想以外のものは何もない》

以下は、義家議員のコメント。

「わが国では思想及び良心の自由、表現の自由が保障されている。作者が作家としてどのような表現で思想を開陳しようとも、法に触れない限り自由である。しかし、おそらく伝統的な日本人なら誰もが唖然とするであろう一方的な思想と見解が、公教育で用いる教科書の検定を堂々と通過して、子供たちの元に届けられた、という事実に私は驚きを隠せない。
例えばこの単元を用いて、偏向した考えを持つ教師が「日本人の心性とは、どのようなものであると筆者は指摘しているか。漢字4字で書きなさい」などという問題を作成したら一体どうなるか。生徒たちは「侵略思想」と答えるしかないだろう。
歴史を超えて語り継いできたお伽噺が侵略思想の権化としてすり替わり、子供たちを巻き込んで展開されていくことなど公教育の現場ではあってはならないことだ。
教科書改善の活動はまだ道半ばである。今後も継続して取り組んでいく決意だ。」

義家議員自身が言うように、池澤夏樹氏の文は表現の自由で守られるべきだ。同時に、教科書に選び選ばれる自由と権利もある。
義家議員はこの文で結局、自身の「偏向」を告白しているようなものだ。

私自身は瀬戸内海地方出身ゆえ、「桃太郎伝説」が島々の闘争を背景にうまれたものであり、陸の民と海の民の相克も含んでおり、また、ディティールどれ一つとっても皮肉に受け止めるしかないところが多いことは、よく知っている。また、諸手を挙げて「よいお話」と皆が言っているとも思わないのだが、それも岡山では常識である。
だいたい犬猿雉トリオは「キビ団子と引き替え」に桃太郎に協力するのである。俗な欲と利益で動くのであって正義の物語ではない。色々言い出すときりがない。桃太郎はただ威張っていただけである。
「桃太郎はなぜえらいのか、それは彼が桃太郎だからである」という、おとぎ話特有の、実に幼稚なトートロジーがある。これは人間の平等や差別の撤廃といった考え方にも反するのだが、これを言い出すと説明が長くなるのでやめておく。
私は何年か前、岡山で開催された「生涯学習フェスティバル」全国大会の委嘱により開会式のプロデューサーを担当したとき、やはり同県出身の岸田敏志さん主演で、だめだめな桃太郎の劇を作ったりしている。全国の文化・教育関係者が観たわけだが、なんのお咎めもなかった。
ちょっと断言が過ぎる面はあるが、池澤氏の文が「日本人なら誰もが唖然とするであろう一方的な思想と見解」とはいえない一つの見解であることは、既に明らかだ。

義家議員は「お伽噺が侵略思想の権化としてすり替わり」というが、何とどうすり替わったというのだろう。
巧妙にねじ曲げられた前提を強弁している保守主義者のやり方だが、彼らが何と言おうと「桃太郎が侵略思想の権化として利用されたこと」じたいは、明白な、歴史的事実である。
義家議員はまったく勉強が足りない。取り巻き連中もなんで教えてやらないのだろう。

その「事実」については、証明するも何も、タイトルじたいが『桃太郎 海の神兵』という長編アニメが存在する。
大日本帝国海軍省主導による国策アニメである。1944年松竹製作、戦時下の1945年4月12日公開。(白黒、74分)
「南方戦線のセレベス島・メナドへの日本海軍の奇襲作戦を題材に海軍陸戦隊落下傘部隊の活躍を描き、当時の日本政府の大義であった「八紘一宇」と「アジア解放」を主題にした大作である」と、ウィキペディアにも載っている。そもそも日本映画史に少しでも関心がある者なら、誰でも知っているのだ。
ものすごい手間と人材を投入したフルアニメであり、手塚治虫にも影響を与えたことで有名。技術的には米ディズニーの長編カラーアニメ映画『ファンタジア』をお手本にしたというから、なんとも皮肉だ。手塚治虫少年はこの映画を観てアニメ開眼もしたが、当時はすっかり軍国少年として洗脳もされてしまったのだという。
観たのは昔だから詳細は忘れたが、猿、犬、雉、熊(なぜか追加されている!)ら極秘で編成された海軍陸戦隊落下傘部隊が、唯一の人間である桃太郎隊長と共に、鬼(角をつけた白人)のだまし討ちにより征服された『鬼ヶ島』への空挺作戦を行う、という物語。
有名な映画中歌「アイウエオの歌」は、侵略占領地の住民(動物たちとして描かれる)に「日本語教育」を強いた事実の反映である。
このアニメの作り手たちは、命令だから従ったわけであり、こんな軍国主義的な映画は作りたくなかったと証言している。
表現・創作の自由が踏みにじられた「戦時下」の産物だ。

1936年の日本動画「オモチャ箱」シリーズにも、悪魔めいたミッキーマウスの空爆に苦しめられた島民を絵本から抜け出た桃太郎が救う描写が出てくる。桃太郎が反アメリカ、戦意昂揚、武力賞賛に使われているのは間違いがない。余談だが、桃太郎や花咲か爺さんがやがて敵性語になるはずの「オッケー」と言うのがなんともおかしかったのを憶えている。

義家議員は『桃太郎 海の神兵』を胸を張って視聴覚教材に取り上げ、「歴史を超えて語り継いできたお伽噺」を「日本の歴史の捏造」に使用し、子供たちを巻き込んで展開していくつもりなのかもしれない。

教育の現場さえ、「嘘も百回言ったら本当になる」「大声で相手を圧倒すれば勝ったことになる」という「ヘイト」の考えに乗っ取られている。
こんな連中に「道徳」の授業などをでっち上げさせたら、たいへんなことになる。
子どもたちに正しい歴史を教えるべきだ。「〈戦争という過ち〉についてきちんと教えるという前提が失われた時代」になってしまったら取り返しがつかないことを、肝に銘じなければならない。
コメント (6)
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カウラが導いてくれた尊敬すべき人たちとの出会い

2014-10-25 | Weblog
テレビ朝日系・テレメンタリー2014「死への大脱走の果てに~70年目のカウラ事件~」で、拙作『カウラの班長会議』が取り上げられた。
番組制作は瀬戸内海放送。
撮影班は燐光群の日本での上演からフォローしてくれて、私たちの稽古場・劇場にもクルーの皆さんが通ってこられた。
渡豪してカウラ現地の人たちにもインタビュー、膨大な時間にわたってカメラを回したと思う。
番組じたいの時間が30分を切るため、全ての撮影素材を活かせなかったのを、満田康弘ディレクターご自身も残念がっていた。
関東地区は9/8(月)26:21~26:40の放映だった。他地区は局により放送時間はまちまち。この枠は琉球朝日放送が『標的の村』を制作放送したことでも知られている。
http://www.tv-asahi.co.jp/telementary/

以上は九月に書きかけたブログ日記の一部分だが、アップし損ねた。
ほんとうに八月からいろいろなことがやりきれずにいる。私も時にはグロッキーになるのだ。

この番組「死への大脱走の果てに~70年目のカウラ事件~」をつくった瀬戸内海放送は、高松に中心を置く局だが、岡山でも一般的な地元の放送局の一つと思われている。満田さんは岡山局勤務、その中心的なディレクター。私と同年の方がばりばり働いている姿を見て、ほんとうに刺激を受ける。
彼は第二次世界大戦中に陸軍憲兵隊の通訳だった永瀬隆さんのドキュメンタリーを制作したことで知られている。
永瀬隆さんは1918年生まれ。陸軍憲兵隊の通訳として1943年9月から終戦まで、タイ―ビルマ間を結ぶ泰緬鉄道に関わる。旧日本軍がインド侵攻用に連合軍捕虜6万5000人と住民計約30万人を酷使したとされる泰緬鉄道(タイ・ノンブラドック-ミャンマー・タムビサヤ間415キロ)の建設にかかわった。これは映画『戦場にかける橋』の舞台ともなった。
永瀬さんは復員後、倉敷市で英語塾経営の傍ら、連合国捕虜1万3千人、アジア人労務者推定数万人の犠牲を出した「死の鉄道」の贖罪に人生を捧げた。
その「贖罪」というのは、具体的な業績として広く日本中の人たちが知るべき事業ばかりであり、末永く記録されてしかるべき内容ばかりだ。その執念と真情にうたれる。
毎日新聞の訃報記事によれば、永瀬さんは63年から連合軍犠牲者約1万3000人の慰霊活動を開始。76年10月、同鉄道クワイ河鉄橋で元捕虜と旧日本軍人の再会を実現。最初は激しい拒否に晒されながら「和解」のために尽力した。敗戦直後、日本軍が連合軍捕虜たちにどれだけの残虐なふるまいをしていたのかを、殺され埋められた死体の発掘、慰霊という作業を通して知り、一生を捧げる覚悟をしたのだという。
80年12月からアジア人労働者捜索を始め、86年2月、犠牲者鎮魂のクワイ河平和寺院を現地に私費で建立した。その後、タイ国青少年教育費として「クワイ河平和基金」を設立。
92年7月にタイ・カンチャナブリー市県の名誉市民・名誉県民、同9月に岡山県三木記念賞、93年11月にソロプチミスト日本財団の千嘉代子賞をそれぞれ受賞。02年には、元英国連邦軍捕虜と日本との和解促進活動などに対し、英国政府から特別感謝状が贈られた。
タイ訪問は、のべ135回に及ぶという。
彼は逆の立場として日本兵が捕虜になったカウラ収容所にも関心と交流を持つようになったようだ、
満田ディレクターは、永瀬さんのその長い道のりを、94年の番組を振り出しに、20年にわたって取材してきた。
その過程は、著書『クワイ河に虹をかけた男 ―元陸軍通訳 永瀬隆の戦後』にまとめられている。

その永瀬さんと英国人捕虜の交流は、『レイルウェイ 運命の旅路』という、今年日本公開された映画にもなっている。DVDは発売されたばかりだ。永瀬さんの役は真田広之、英国人捕虜はコリン・ファース、その妻をニコール・キッドマンが演じている。
その元になったエリック・ローマクスによる原作は、角川文庫から出ている。

現にクワイ河というのはもともとは存在しなかった名称なので、「クワイ河にかかる橋」も本来は存在しない。映画は現スリランカにあたるセイロンで撮影された。後に映画の橋を訪れたいという観光需要に応えようと、タイ政府は戦争捕虜によって建設されたもので残存する最後の橋がかかる川の名前をクワイに改名したのである。この橋は『レイルウェイ 運命の旅路』が撮影されたカンチャナブリーにある。

『レイルウェイ 運命の旅路』は、『カウラの班長会議』とは逆の方向から日本とオーストラリアの「戦争と捕虜」を描いたものである。
映画についてはあれこれ言うまい。俳優たちは真摯に演じている。
ただ、永瀬さんじたいの設定を少し変えているのが残念だ。

私は満田ディレクターが撮り溜めた永瀬さんの記録映像を幾つか見せていただいたが、繋がりやすいところだけ集めても、合わせて二時間くらいにはなる。
同じくテレビ朝日系・テレメンタリー枠で作られたQABのドキュメンタリーを劇場用映画にした『標的の村』のように、その映画が出来上がり、多くの人の目に触れることを私は望んでいる。

永瀬さんについてのドキュメンタリーのタイトルにある「虹をかけた男」は、死を覚悟した彼の最後のタイ訪問時に、彼の人生を祝福するように川に架かった虹を映像で捉えるのに成功していることからきている。永瀬さんご本人が満田ディレクターに「こんな虹は今まで一度も見たことがない」と言う。奇跡というものはあるのだ。

元日本軍の通訳と、英国人捕虜が、ほんとうにカメラの前で和解する瞬間を始め、数多くの「歴史的映像」を、個人レベルのところできちんと撮りきったこれらの映像は、今の日本人たちにこそ見せるべきものだ。

永瀬さんが、あれほどの虐待を受けた元捕虜たちに「あなたは私が握手することのできる唯一の日本人です」と言わしめた、その内実の素晴らしさ。
後世の者が特攻隊を美化するのは頭の中だけの理屈だ。
永瀬さんの歩みは、身をもって「戦争」の傷跡を受けとめていく歴史だ。
尊敬すべき人間の姿を、大きなスケールでまとめた「映画版」の完成を、心から待っている。
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あす22日に「予定」されている放射性物質の飛散

2014-10-21 | Weblog
あす22日、東京電力は福島第一原発1号機の建屋カバーの解体作業を始める。
福島第一原発では昨年8月の3号機のがれき撤去の際にも膨大な粉じん等の放射性物質が飛散している。
22日のことは既に報道されているわけだが、作業日程を事前に公表すればいいというものではない。
地元は勿論、東京にも放射性物質がふだんより多く飛来してくるのは必至だ。
公表はされたのだから、自分で身を守れということか。一般市民にもできる方法は、東日本大震災直後の枝野氏が「基本的には安全」と言い続けながらテレビで繰り返し教えてくれていたようなことが限度だろう。あれは枝野氏らが未来に対する責任を少しでも回避したかったのだろうか。
当日マスクをする人もいるだろうが、汚染を細かく計量する人が多くいるとも思えない。外出を避けるため休む職場もないだろうし、ゴルフ場も閉鎖はしないだろう。学校なども校庭での体操の授業や部活を取りやめるよう指導したりはしないはずだ。「微量だから安全」、はい、それまで。「もしも」を気にかける習慣はすたれた。

建屋カバー解体作業は、まず屋根に計48カ所に順次30センチ四方の穴を開け、放射性物質の飛散防止剤をまく作業を行うという。屋根の一部も取り外すようだ。1号機の燃料プールから燃料棒を下すために邪魔になるということや、爆発した建屋上部のがれき撤去にも必要な手順ということだが、この間に溜まった放射性物質の飛散は免れない。年末から付近の地下で凍土壁の工事が予定されているため作業を中断、本格的な作業は来年3月からで、2016年度中にがれき撤去に入るのが目標という。
東電は、この夏、さんざん不信感もあらわに報道されていた例の「凍土壁」について、まだあきらめていないようだ。「冷やす」ためにいろいろなことを考えているらしいが、氷やドライアイスを投入しても凍結の効果について「分からない」と言ってのけ、コンクリートなどを入れて固めることも検討など、行き当たりばったりだった。原子力規制委員会の田中俊一委員長が「あまり利口じゃないと思う」と言った取り組みだ。
海側トレンチ(配管などが通る地下トンネル)にたまった高濃度汚染水対策は難航している。汚染水から放射性物質を除去する多核種除去装置「ALPS(アルプス)」も計画通りに稼働していないし、どのみちトリチウムは取り除けない。何か見込みのある方法が選ばれているとは思われない。

昨年9月の東京五輪招致演説で「状況はコントロールされている」と述べた安倍晋三首相は、鹿児島県の川内原発の再稼働についても、「桜島などが御嶽山よりはるかに大規模に噴火した場合でも、安全性は確保されている」とした。
そのくせ首相は先月、国連総会の合間に行われたワールド・リーダーズ・フォーラムで原子力発電所の再稼働について「安全が再び100パーセント確保されない限り、行わない」「政府は再生可能エネルギーの早期導入を目指している」との方針を示したという。日本以外の国では放射能汚染以上に気にしている人も多い温室効果ガス削減という課題について、国連気候変動首脳会議(気候変動サミット)で「自主目標」について明確な表明ができなかったことへの埋め合わせなのだろう。国内で全原発停止が続いていることを取り組みを始められない「言い訳」にしているようだが、要はその場しのぎで行き当たりばったりなのだ。

就任直後に辞任が決まった小渕経産相は、原発廃炉を進めていたからクビを切られたという陰謀論的な見方もあるようだが、彼女は首相同様に福島原発を「コントロールされている」「原発の再稼働を」と言っていた。やはり「カネ」の問題が明治座のチケットの他にもいろいろあるのだろう。
ついでにいえば、こんなことで演劇の鑑賞券のことが話題になるのも不条理なことだ。
ちなみに選挙展開の「うちわ」配布でクビになったとされている新法相も、何か他に事情があるのだろう。追及していた蓮舫のみならず、確かに「うちわ」はいろいろな政治家が作って配布しているはずだからだ。プラスチックでしっかり骨組みを作ったら罪になるということか。
それにしても新閣僚辞任問題のくだらなさには、ほとほと呆れる。この騒ぎで少なくとも国会議員たちの靖国参拝問題などがぼかされてしまっているが、それも国内だけの話で、海外の目は甘くないはずだ。

東京電力福島第1原発事故から三年七ヶ月。

福島県で甲状腺がんと診断が確定した子どもたちの数は増え続けている。
岩手県が子どもの内部被ばくについて、尿に含まれる放射性物質を調査、調査対象の九割を超える子どもたちの尿から放射性セシウムが検出されたという。

国際人材育成機構 (アイム・ジャパン)なる団体は、「高水準の技能習得」としてベトナム人実習生6000人を日本に呼び、時給300円で原発作業に投入を企図。

ひどい話ばかりだ。

未来に対して感じる不安は、具体的にその姿を見せ始めている。「自分の問題」と感じるかどうかだ。
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特定秘密指定対象四分野計五十五項目の要旨を解読してもそれが正しいかどうか確かめられない

2014-10-16 | Weblog
特定秘密保護法の運用基準と、施行期日を十二月十日とする施行令が閣議決定された。

自衛隊のことはみんな秘密。米軍と何をやっているかも秘密。自衛隊が得た情報はそれが誤謬を孕むかどうかも確かめられないし、他の用途に役立てることも許されない。
外交上の秘密と定められたら、状況を知りたい人間の安否さえ確かめられない。外交そのものの詳細や国境紛争が日々どうなっているかも知らされない。
兵器や物資の輸出入についても教えてもらえない。危ない物を持ち込まれたりよその国に売りつけたり運んだりが、こっそり行われる。
サイパー攻撃防止のための処置と理由をつけられたらネット上の情報も勝手に操作される。理由を示す必要もないからだ。
「テロに関わる」と疑われたら人知れず闇に葬られる、その対象はどこまで広がるかはわからない。
……というふうに読めるが。私が被害妄想なのか。
現実の施行はそうでもないのか。施行後にはそれを確かめることさえできないらしい。ということを確かめることもできない。
運用基準、指定判断は政府に委ねられている。国民の知る自由は奪われ、政府のやり方が「拡大解釈」になっているかどうかをチェックする方法がない。
秘密指定の期間は原則三十年というが、その指定を解除したかどうかを確かめる方法はない。
やりたい放題ではないか。

ともあれ、特定秘密保護法、特定秘密の指定対象になり得る四分野計五十五項目の要旨は次の通り。

 【防衛に関する事項】(十九項目)
 ・自衛隊の運用、これに関する見積もり、計画、研究
 (1) 自衛隊の訓練、演習
 (2) 自衛隊の情報収集・警戒監視活動
 (3) 自衛隊法に規定する防衛出動、治安出動、自衛隊施設などの警護出動、その他のわが国の安全を確保するための自衛隊の行動
 (4) 自衛隊、米軍の運用、これに関する見積もり、計画、研究
 (5) 電波情報、画像情報、その他情報収集手段を用いて収集した情報
 (6) 外国の政府、国際機関から提供された情報
 (7) (5)または(6)を分析して得られた情報
 (8) (5)から(7)までに掲げる事項に関する情報の収集、分析の対象、計画、方法、情報源、実施状況、能力
 (9) 防衛力の整備のために行う国内外の諸情勢に関する見積もり、これに対するわが国の防衛、防衛力の整備に関する方針
 (10) 防衛力の整備のために行う防衛力の能力の見積もり、これに基づく研究
 (11) 自衛隊、米軍の防衛力の整備に関する見積もり、計画、研究
 (12) 武力攻撃事態、その他の緊急事態への自衛隊の対処に際して自衛隊の部隊が装備する武器、弾薬、航空機、その他の防衛の用に供する物(船舶を含む)の種類、数量のうち当該部隊が当該事態に対処する能力を推察できるもの
 (13) 自衛隊の部隊の間での通信に使用する通信網の構成、通信の方法
 (14) 防衛の用に供する暗号で、わが国の政府が用いるために作成された暗号
 (15) 自衛隊の潜水艦、航空機、センサー、電子戦機器、誘導武器、情報収集機器、これらの物の研究開発段階のものの仕様、性能、使用方法
 (16) 武器、弾薬、航空機、その他の防衛の用に供する物、これらの物の研究開発段階のものの仕様、性能、使用方法のうち外国の政府などから提供されたもの
 (17) 自衛隊の潜水艦、航空機、センサー、電子戦機器、誘導武器、情報収集機器、これらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理、試験の方法
 (18) 武器、弾薬、航空機、その他の防衛の用に供する物、これらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理、試験の方法のうち外国の政府などから提供されたもの
 (19) 防衛の用に供する施設の構造、その他の設計上の情報、施設の能力に関する情報、内部の用途
 【外交に関する事項】(十七項目)
 ・外国の政府、国際機関との交渉、協力の方針、内容のうち、国民の生命、身体の保護、領域の保全、その他の安全保障に関する重要なもの
 (1) 国民の生命、身体の保護
 (2) 領域の保全
 (3) 海洋、上空などにおける権益の確保
 (4) 国際社会の平和と安全の確保
 (5) 外国の政府などとの協力の方針、内容のうち、当該外国の政府などにおいて特定秘密保護法の規定により行政機関が特定秘密を保護するために講ずることとされる措置に相当する措置が講じられるもの
 ・安全保障のためにわが国が実施する貨物の輸出、輸入の禁止、その他の措置、その方針
 (6) 外国人の本邦への入国の禁止、制限、邦人の外国への渡航の自粛の要請
 (7) 貨物の輸出、輸入の禁止、制限
 (8) 資産の移転の禁止、制限
 (9) 航空機の乗り入れ、船舶の入港の禁止、制限
 (10) (7)の貨物を積載した船舶の検査
 (11) 外国の政府などに対してわが国が講ずる外交上の措置(わが国と国民の安全に重大な影響を与えるものに限る)
 (12) 領域の保全のためにわが国の政府が講ずる措置、その方針
 ・安全保障に関し収集した国民の生命、身体の保護、領域の保全、国際社会の平和と安全に関する重要な情報、条約、その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報
 (13) 電波情報、画像情報、その他情報収集手段を用いて収集した情報
 (14) 外国の政府などから提供された情報
 (15) (13)または(14)を分析して得られた情報
 (16) (13)から(15)までに掲げる事項に関する情報の収集、分析の対象、計画、方法、情報源、実施状況、能力
 (17) 外務省本省と在外公館との間の通信、その他の外交の用に供する暗号で、わが国の政府が用いるために作成された暗号
 【特定有害活動の防止に関する事項】(十項目)
 ・特定有害活動による被害の発生、拡大の防止のための措置、これに関する計画、研究
 (1) 特定秘密保護法に規定する核兵器、化学製剤、細菌製剤、その他の物を輸出、輸入するための活動の防止
 (2) 緊急事態への対処に係る部隊の戦術
 (3) 重要施設、要人などに対する警戒警備
 (4) サイバー攻撃の防止
 (5) 特定有害活動の防止のために外国の政府などと協力して実施する措置、これに関する計画、研究のうち、当該外国の政府などにおいて特定秘密保護法の規定により行政機関が特定秘密を保護するために講ずることとされる措置に相当する措置が講じられるもの
 ・特定有害活動の防止に関し収集した国民の生命、身体の保護に関する重要な情報、外国の政府、国際機関からの情報
 (6) 電波情報、画像情報、その他情報収集手段を用いて収集した情報
 (7) 外国の政府などから提供された情報
 (8) (6)または(7)を分析して得られた情報
 (9) (6)から(8)までに掲げる事項に関する情報の収集、分析の対象、計画、方法、情報源、実施状況、能力
 (10) 特定有害活動の防止の用に供する暗号で、わが国の政府が用いるために作成された暗号
 【テロリズムの防止に関する事項】(九項目)
 ・テロリズムによる被害の発生、拡大の防止のための措置、これに関する計画、研究
 (1) 緊急事態への対処に係る部隊の戦術
 (2) 重要施設、要人などに対する警戒警備
 (3) サイバー攻撃の防止
 (4) テロリズムの防止のために外国の政府などと協力して実施する措置、これに関する計画、研究のうち、当該外国の政府などにおいて特定秘密保護法の規定により行政機関が特定秘密を保護するために講ずることとされる措置に相当する措置が講じられるもの
 ・テロリズムの防止に関し収集した国民の生命、身体の保護に関する重要な情報、外国の政府、国際機関からの情報
 (5) 電波情報、画像情報、その他情報収集手段を用いて収集した情報
 (6) 外国の政府などから提供された情報
 (7) (5)または(6)を分析して得られた情報
 (8) (5)から(7)までに掲げる事項に関する情報の収集、分析の対象、計画、方法、情報源、実施状況、能力
 (9) テロリズムの防止の用に供する暗号で、わが国の政府が用いるために作成された暗号

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特定秘密保護法 12月10日施行の方針

2014-10-14 | Weblog
政府は14日の閣議で、国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法をめぐり、特定秘密の指定や解除の在り方を定めた運用基準と、法施行日を12月10日とする政令を決定。

首相が九月二十九日に行った所信表明演説では、「特定秘密保護法」の文字はなく、さいきん話題にならないと思っていたが、世耕官房副長官が「ことし12月12日までに施行するという取り決めになっている。今のところ施行期日は12月10日とする方向で調整中」と発言していた。
「国民にしっかり説明責任を果たして理解を深めていきたい」「パブリックコメントで頂いたご意見もきっちり集約する」と言っていたが、どこまで信用できるか疑問視されていた。

「特定秘密保護法」は、(1)防衛(2)外交(3)スパイ活動防止(4)テロ防止の4分野で、漏えいすれば国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある情報を政府が「特定秘密」に指定。漏らした公務員や民間人には最高10年の懲役を科すとしている。

安倍首相は十月三日の衆院予算委員会で、集団的自衛権を行使するかどうかの判断基準になる「新三要件」のうち「国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」の「明白な危険」の範囲に関し「明白な危険とは、まさに明白だ」と、トートロジーの言説を述べているが、これが本人の言う「丁寧な説明」だろうか。
そして六日午前、安倍首相は衆院予算委員会で、集団的自衛権の行使容認に関連し、行使に必要となる武力行使の新三要件を満たしたとの判断に至った「根拠」となる情報が、特定秘密保護法に基づく「特定秘密」に指定され、「政府の監視機関に提供されない可能性がある」との考えを示した。そもそもその監視機関に市民の立場を代表する者も、専門家である第三者もいないわけだが。

「国会や国民に適切に公開し、理解を得ることは極めて重要」「監視機関=独立公文書管理監に十分な検証に必要な権限を付与する」と誤魔化すような言説を弄したが、大臣が特定秘密を公開できない理由を管理監に説明するだけでは、政府が恣意的に秘密指定できる仕組みは変わらぬまま、集団的自衛権の行使に踏み切った根拠を国民は知ることができないことになると、批判を集めていた。
つまり、実質的には大臣にさえ特定秘密を公開させる強制力はなく、国民の知る権利が侵されることへの歯止めにはならない。
もう、「やりっ放し」になることをはじめから想定しているのである。
報道ではごてごてしてわかりにくいが、「国民には非公開になる」、と明瞭に宣言したに等しい。

首相は先の訪米での国連総会一般討論演説で、持論の「積極的平和主義」について「人間を中心に据えた社会の発展に骨身を惜しまなかったわれわれが獲得した確信と、自信の、おのずからなる発展の上に立つ」と説明。海外で自衛隊の活動を拡大する方針を国外では言明しなかった。
五月の国内会見のように赤ちゃんを抱いた母子の絵を掲げ「船に乗っているお母さんや多くの日本人を守ることができない」「邦人輸送中の米輸送艦を守る」と言って、反応をみればよかったのだ。
これからは、こうした見当違いがどんどん大手を振っていくことになるというのか。

国連自由権規約委員会は7月末、基本的人権が日本で守られているかどうかを審査し、死刑廃止の検討、従軍慰安婦問題について国家責任を認めた公式謝罪など、およそ20点を勧告したが、安倍政権が七月に集団的自衛権の行使容認を閣議決定して12月に施行する計画について、「国民の知る権利を保障する国際条約と適合するよう、あらゆる措置をとるべきだ」としていた。
このことをもっと重く受け止めるべきだ。
特定秘密保護法は日本に於ける夥しい人権軽視を決定づけるものとして、国際的にも「おかしい」と注視されている法案だということだが、その方針はまったく是正されていないのである。

そしてこの14日午前の閣議での、特定秘密保護法の運用基準と施行期日などを定める政令決定に至る。
時事通信等によれば、運用基準は特定秘密の指定や解除のルール、監視体制を具体的に定める内容で、「国民の知る権利の尊重」や5年後の見直し規定を盛り込んだ。
同法の運用基準については「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って特定秘密として指定する」と明記。
情報の意図的な隠蔽を防ぐため内部通報制度を盛り込むものである。
内閣府の独立公文書管理監と各行政機関の長の下に通報の受付窓口を設け、不適切な秘密指定があれば指定の解除・見直しを行う。
閣僚ら行政機関の長が指定する特定秘密の対象について、防衛、外交分野などの55の細目を設定して具体化。自衛隊の電波や衛星を活用して収集した情報や画像の収集・警戒監視活動、自衛隊の潜水艦や航空機、武器・弾薬の性能、外国政府や国際機関から提供された情報などを盛り込んだ。
政令では秘密指定できる行政機関について、内閣官房や国家安全保障会議(日本版NSC)、外務、防衛両省、原子力規制委員会など19機関とした。

政府側の恣意的な判断と裁量で「指定範囲」が広がるおそれがあるのは、いうまでもない。
国民の「知る権利」、「報道の自由」は、守られるのか。
廃案を求めると共に、厳しく監視していかなければならない。

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