Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

カメラの手前にいる者

2012-08-31 | Weblog
『壊された5つのカメラ』の 監督を迎えた上映イベント+シンポジウム。稽古終了後のため、遅れて会場へ。ダイジェスト版上映後、イマード・ブルナート、ガイ・ダビディ両監督を囲むシンポジウムは既に始まっていた……。急遽決まった催しだったが、それなりに客席が埋まっていて安堵。過去の経験では、こうした海外からのゲストがいる場合、日本側出席者の多いシンポジウムでは、観客は主に海外ゲストの話を聞きたいのに、日本側の出席者が自分のことばかり喋ってしまい、消化不良になってしまうことが多い。なんだかはらはらしてしまう。根岸季衣さんが、ダイジェスト版になかったらしい、イマード監督の弟がイスラエル軍に連行されようとする時、車のボンネットにしがみいて止めようとする父親の姿と、その時の監督自身の内省について触れたのは、よかった。あれを聞いたら本篇を見たくなる。後半になって、司会の土井敏邦監督が、客席にいる私を見つけて指名してくださったので、私は両監督に質問させていただいた。せっかくなのでお二人にもっと喋っていただきたかったのだ。土井監督は予想以上に「二監督と演劇人の交流」ということを考えてくださっていたので、さらに私自身の感想を求められ、あまりまとめてこなかったのだが、通訳者の能力が高いことがわかっていたので、なるべく手短に話す。演劇は、「俳優が感じていること」が観る者に伝わる、つまり観客がそこに立ち会う、共に感じるということを主眼とした表現形式だと私は思うが、こうした「当事者による映像ドキュメンタリー」では、カメラの手前にいる撮影者が感じていることが、ダイレクトに伝わる。その意味でこの映画は、観客の想像力を信頼し、根岸さんの指摘したお父さんの場面のみならず、カメラの手前にいるイマード監督が、今、何を感じているかが、必要以上に声高になることなく、これ見よがしに情に訴えるのでもなく、見事に伝わってくる、ということなど。……終えて、交流会。この映画の共同監督で主に編集に携わったガイ・ダビディ監督はイスラエル人。どういう経緯で関わることになったか尋ねたら、やはり「現場」だったという。カメラを持って紛争の地にいる者どうしとして出会い、協働することになったのだ。彼は十八歳の時に徴兵を拒否したという。イスラエルという国で兵役を拒むのは、かなり勇気のいることのはずだ。彼が関与することでこの映画がより多くの人に開かれる結果になったことは、間違いない。……イマード・ブルナート監督は、先述の通り、この映画の撮影者であると同時に、ある意味で中心的な「出演者」でもある。スマホに収録してある「共演者」である奥さんや子供たちの写真を、見せてくれる。息子さんの一人も、撮影・編集に目覚めたそうだ。2週間前にアメリカでマイケル・ムーア監督と撮った写真も見せてくれた。彼は昨年の秋から全世界の映画祭を回っている。残年ながらパレスチナ籍者にとって日本は「もっともビザの下りにくい国」の一つだったようだ。新作の構想も聞いた。彼はドキュメンタリーのみではなく「フィクション」にも関心がある。そして、自国の若者を海外に留学させる方法を模索している。……両監督は5日まで日本に滞在。さまざまなメディアが彼らを取り上げてくれることを願う。問い合わせは、浦安ドキュメンタリーオフィス(http://urayasu-doc.com/5cameras/mail.html)へ。……土井監督とまとまった時間お話したのは初めてだと思う。非戦を選ぶ演劇人の会のリーディングでパレスチナを取り上げた際、土井さんの作品を原作的に引用させていただいていたこともあり、また、今夏のリーディング公演の撮影もしてくださったり、今回のような場を設けて下さったり、ほんとうに感謝である。……非戦を選ぶ演劇人の会の最初のリーディングは2003年春。テキストについて寸前までしつこく斎藤憐さんと話し合ったことを思い出す。最初の二回のリーディングは「イラク攻撃と有事法制に反対する演劇人の会」の名前だったと、思い出した。歳月が強いるものに、我々はどこまで堪えられるか。……写真は、中央の列の三人が、左から、土井監督、イマード監督、ガイ監督。
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言葉が大事にされない社会は、人間を大事にできない

2012-08-30 | Weblog
29日参院本会議で可決された野田佳彦首相問責決議の文は、問責理由として、まず「野田内閣が強行して押し通した消費税増税法は、2009年の総選挙での民主党政権公約に違反するものである。国民の多くは今も消費税増税法に反対しており、今国会で消費税増税法案を成立させるべきではないとの声は圧倒的多数となっていた。最近の国会運営では民主党、自由民主党、公明党の3党のみで協議をし、合意をすれば一気呵成に法案を成立させるということが多数見受けられ、議会制民主主義が守られていない。」……自民党はこの問責に名を連ねている(公明党は加わっていない)。ということは、自民党は完全に「自己否定」しているわけだ。「自分たちは議会制民主主義を守らなかった」ということだ。その後の文に「参議院で審議を行う中、社会保障部分や消費税の使い道等で3党合意は曖昧なものであることが明らかになった。国民への約束、国民の声に背く政治姿勢を取り続ける野田佳彦内閣総理大臣の責任は極めて重大である。」とあるが、その曖昧な合意のまま消費税増税を強行した罪を、自民党も背負わねばならないだろう。民主党のせいだけにしていてどうする。彼らのダメさ加減はとうにわかっているが、この理屈の通らなさは、なんだ。最低限の「言葉に対する信用」を失った社会は、崩壊しているも同然だ。そして、やはり気になるのは、若い世代の政治や社会に対する不信感はもう限界を超えていて、社会の仕組みそのものがまるで機能しなくなっているのではないかということである。……仲井真弘多沖縄県知事はオスプレイの普天間配備について森本防衛相と面談。この人はモロッコでのオスプレイ墜落事故調査を「人的要因」と言いつのる日本政府に対して「日本政府が責任をとれるのか」と言うが、ヘンだろう。責任を取ってくれるなら事故が起きていいのか。事故が起きるかもしれないようなモノは入れてはならないというだけだろう。森本防衛相は「日米合同委員会で安全性を確保する話し合いをしている」「米側に安全確保を最大限働きかける考え」というが、これも日本語がヘン。何が起きても自分のせいじゃない。と言っているだけ。会談後、知事は記者団に「安全が保証でき、県民を納得させることができるかが重要。頭からノーとは言っていない」と発言。「県民を納得させる」って、誰が誰に言っているんだ。県民の総意を代表する義務があるだけだよ、あなたには。「頭からノーと言っていない」というのも、そろそろこういうことを言い出すだろうと思っていたら、オスプレイ反対の県民大会十日前にこれが出た。言葉には責任がある。ヤマトの人間も、沖縄県民も、この言葉の通らなさを、許してはならない。仲井真県知事の9月9日の行動を、厳しく見つめなければならない。……言葉・文書での約束さえ守らないイスラエル、「非暴力」の民主的対応を軍事力で抑え込もうとしたイスラエルに対して、カメラで立ち向かったパレスチナのイマード・ブルナート監督が日本に来ている。共同監督のガイ・ダビディ監督も。今日、「非戦を選ぶ演劇人の会」とのシンポジウムがある。この二人の監督に僕たちが会えるということがどういうことなのか。そのことがある意味で奇蹟のようなものだとしたら、その奇蹟はなぜ生み出されたか。その奇蹟はどのような必然が招いたことなのか。よく考えてみたい。
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追い風

2012-08-29 | Weblog
〈福武文化賞〉をいただくことになった。旧知の吉備人出版の山川隆之さん、自主映画でがんばっているという「シネマニワ」の方々らが奨励賞で、共に受賞。岡山県の文化に貢献、という主旨だが、過去にはそれほどたいしたことはやれていないので、これからに期待されているのだ、と謙虚に受け止める。ともあれ九月、犬島での「内海のクジラ」公演に向けて、ありがたい追い風となった。
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クジラを踊る

2012-08-28 | Weblog
寝不足を気にしないですむはずだという自己暗示は、うまくかかればかかったで、たいへん効率の悪い時間を生んだりする。前夜は何時まで起きていたかは忘れることにして、野球部練習でこのところ6時起きの息子と同時に起きて悶々としつつ机に向かう。人にいちいち言いたくなくて記していないわけだが、このところの一度に二本の台本を抱えるという状況、片方は直しはあるだろうがほぼ脱出している。もう片方がヘビー。というかシビアに行きたいのだろう、自分が。……ともあれ『内海のクジラ』稽古場は、矢内原美邦どんによる振付開始。このタフな人は、ほんとうに情熱というものが、時々どんよりを装ったりしながら自然体という服を着て歩いている感じなので、その「身体射程感覚」が、わからない人にはわからないだろうけれど、私にとっては素晴らしい。クジラの映像など見ていろいろ考えてきてくれたものを俳優の身体と種々の条件に合わせていく。ベース作りの時期に過ぎないが、広い稽古場でやる甲斐があるぜ、ほんとに。ポルトガルから主に我が劇団絡みでの勉強目当てに六年前から何度目かの来日中のカルラに今日はちゃんと話をしてあげる時間もうまく取れず申し訳ない。……あっという間に感じたが七時間稽古場にいたのである。帰ってきても気が張っていて落ち着かない。なんだか自分の中の体内時計やら何かやらの針が壊れている。……考えてみれば私は時々なぜ美邦さんに「どん」をつけているのか。親しみの表現なのだろう。自分がよくわからない。寝るよ。もう。
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下北沢の未来

2012-08-27 | Weblog
北沢タウンホールでの二日連続の企画「SHIMOKITA VOICE 2012 下北沢で生きる」のシンポジウム『地中から、屋根から、空から 明日の下北沢ラウンドテーブル』に、後半だけ出席。コーディネーター・司会は小熊英二さん。パネリストは保坂展人世田谷区長、そして下北沢の住民・各界代表の、興味深い面々。一時は出席ということだった渡辺えりさんは多忙で出られず、残念。さて、なにしろ下北沢は街の中心部に最大幅26mの新規道路計画、駅前交通広場(ロータリー)計画、小田急線地下化後の2.2kmの跡地利用計画、3つの大きな計画を抱えている。確かに「下北沢の光景は、わずか一年で大きく変わった」。全国どこにでもある似たような街になるのでいいのか、「長い歴史に育まれた<シモキタ文化>」というものがほんとうにあるとして、「継承する」「明日の世代へ引き継ぐ」よりも、まず、ほんとに面白い街にできているかどうか、厳しく考えていかなければならない。反原発デモ関係でも露出を厭わず活躍している小熊さんも相当忙しいだろうに、かなり今回のためにフィールドワークを重ねたらしい。彼とは事前に電話で相談していたのだけれど、こういう場は、喋りすぎず、面白く、のバランスがたいへんではある。で、私は早々に帰宅したのだが、後で聞いたところによれば、私が比較のため持ち出した韓国・大学路についての話(そう簡単に真似できないぞ、ということが主)が、一部に衝撃を与えたという。なるほど。
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トレーシー・レッツの新作

2012-08-26 | Weblog
加藤健一事務所 『シュペリオール・ドーナツ』初日。下北沢ザ・スズナリ。『BUG』の作者トレーシー・レッツの新作が観られるのは嬉しい。加藤健一事務所さんに感謝。というか、日本ではまだ今まで『BUG』しか上演されていなかったんだね。トレーシーはアメリカの若手劇作家としてはダグ・ライトよりはるかにアングラなのであるが、本作は過激さはなく、ちょっと不思議な人生ドラマ。彼は映画界でも活躍するジョン・マルコビッチやゲーリー・シニーズらの属するシカゴ・ステッペンウルフ劇団の一員だから、「今回はノーマルなストレートプレイを」という要請を受けたのかもしれない。移住民のドーナツ屋がワケありの若者を雇い互いに共感を育むというのは、今年新国立劇場で上演された『負傷者16人』と似ている(そちちはパン屋だが)。御都合主義的な所もないではないが、レッツ独特のしつこさも時折り垣間見え、皮肉な台詞もあり(どのくらい意訳しているかはわからないけれど)、独特の味わい。じつのところ、昨日某所で燐光群版『BUG』を再演しないのか、と言われ、確かにまたやってみたいなあと思ったばかり。衝撃度はかなり高くリピーターも多かった『BUG』はしかし、他に相似した劇を想定できない、時代そのものを反映する特権的作品だったと、あらためて思う。今のところ、数十年後にトレーシー作品で残っているのは『BUG』『八月、オーセージ郡で』だとは思う。……加藤健一さんがスズナリに出演するのはもの凄く久しぶりだそうである。この劇場だからこその、抑制。その点で、俳優演技に関心のある者は、いつもと違う今回のこの加藤さんの呼吸の使い方、周波数の整え方は、一見の価値ありである。テンポじたいはもっといろいろ変えられるのではないかと思う。……小さい劇場で皆が外国人を演じるのはなんだか距離感が近く、はまっているかどうかに個人差が出るせいなのか、不思議な趣き。塩田朋子さんの婦人警官は美人すぎるのが楽しいところ。有馬自由くんは最近こういう役回りを得意としているようだ。私のスズナリでの初舞台でご一緒だった田根楽子さん、考えてみるともう三十一年前。あの時私はラストでヒロインの楽子さんを捕まえる警官の役だった。ストップモーションで大量の砂を浴びたものだった。いろいろな既視感、オフブロードウェイの空気への連想。日々の仕事に追われつつも、劇場にいれば、その時だけは、あれこれ妄想。演劇は自由だ。いろいろ思うところはあれど、今の私はこうして演劇人として励まし合えることが、嬉しいのだ。
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映画『壊された5つのカメラ -パレスチナ・ビリンの叫び-』と、高江の状況

2012-08-25 | Weblog
米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江のヘリコプター着陸帯(オスプレイのためでもある)工事が再開している。沖縄防衛局職員によると「確認作業」としているが、測量作業などだけで終わっているわけではない。資材・人員は朝早い時間帯を狙って入ってきているようだ。森本敏防衛相は22日の参院決算委員会で、オスプレイが米軍普天間飛行場周辺で訓練する場合の安全管理について「不測の事態でも安全に海域に出られる安全高度を維持することを日米で合意できれば、事故の被害・障害を最小限にくい止められる」「わざわざ民家の上で低空飛行する理由は軍事的に言えば、あまりない」「低空飛行する場合はそれなりの空域と安全空域を取り、例えば北部訓練場なりで訓練するのが普通のやり方だ」と言ってのけた。「北部訓練場」は、訓練場しかない山の奥ではない。そこには住民の暮らしがある。豊かな自然を湛えた森も破壊されてはならない。こんな理不尽が通れば、高江のたたかいが、この国全体から「無視」されていることになる。……アメリカ政府はハワイの二空港で予定していたオスプレイ着陸訓練計画を取り下げていた。「空港周辺の歴史的遺産に与える影響や騒音に関する住民意見などを考慮したため」という。普天間飛行場やその移設予定地についてはどうなのだ。環境影響評価(アセスメント)をやっても「問題ない」で片付けられてしまう。完全な「差別」が存在する。……かと思えば、米自治領・北マリアナ諸島テニアンのラモン・デラクルーズ市長は「日米両政府が将来的に米軍普天間飛行場の日本国外移設を検討した場合、テニアンへの移設に応じる」と表明。米軍と自衛隊の共同訓練についても歓迎するという。しかし日米両政府はテニアン案についてまともに討議はしない。アメリカは相変わらず「日本からの思いやり予算も付いて一つの島に機能がまとまった沖縄は住み心地がいい」「第二次世界大戦での多くの代償を払った〈戦利品〉である沖縄を手放したくない」というのが本音だし、韓中との領土問題に怯える日本は米軍に「沖縄から出て行かないで」と懇願している。……ベトナム戦争で枯れ葉剤が沖縄で使用、貯蔵されていた証言も集まっている。日米政府は真剣に取り組む姿勢を見せない。昔も今も変わらないということだ。……陸上自衛隊第15旅団の装甲車2両が22日昼過ぎ、沖縄市高原の国道329号を、機関砲の砲身が見える状態で、那覇訓練場から米軍ホワイトビーチ、キャンプ・ハンセンに移動しながら偵察訓練したという。「米海兵隊でさえ砲身全体を覆って移動するのに、陸自はむき出し。市街地を訓練場にしたあからさまな示威行為だ」と批判されている。……「戦闘」そのものは起きていないが、「危機」「破壊」「汚染」は、今、ここに既に確実に存在する。「軍隊」がその本性をあらわして住民を抑圧し、人々が身を持って抵抗したらどうなるか。その「ボーダー」は、実に頼りないものだ。……パレスチナ住民が身を挺してイスラエルの土地収奪の横暴と戦う記録の映画『壊された5つのカメラ -パレスチナ・ビリンの叫び-』を、土井敏邦監督のご厚意で観ることができた。土井さんは、来日する監督と「非戦を選ぶ演劇人の会」との対話の場も設けてくださった。これは必見の映画で、観れば必ず、撮影者でもあるイマード監督本人に会いたくなるはずである。そしてこの映画に感銘を受ける者は、かの国から遠く離れていても、イスラエルの抑圧に抗するたたかいに連帯したいと思うだろうし、それは、高江でのたたかいを、真に我がこととして捉えるという認識に繋がらなければならないはずである。

映画『壊された5つのカメラ -パレスチナ・ビリンの叫び-』
イマード&ガイ監督来日記念シンポジウム
「非戦を選ぶ演劇人の会」との対話

世界の映画祭で数々の賞を受賞し注目を浴びるパレスチナのドキュメンタリー映画『壊された5つのカメラ』がついに、9月下旬から日本で公開されることになり、それを記念してパレスチナ人、イスラエル人の両監督が8月下旬に来日します。
この映画を観て感動した「非戦を選ぶ演劇人」たちと、パレスチナを追い続けるジャーナリストが、両監督と、パレスチナ、占領、戦争、平和、そしてドキュメンタリー映画について語り合います。

【日 時】2012年8月30日(木)午後6時・開場/午後6時30分・開演
【場 所】明治大学リバティタワー1F 1011号室
【参加費】1,000円
【主 催】「土井敏邦 パレスチナ記録の会」
【共催】社会思想史研究会
【協力】非戦を選ぶ演劇人の会、浦安ドキュメンタリーオフィス
【問合せ】doitoshikuni@mail.goo.ne.jp

【内容】
〔1部〕映画「壊された5つのカメラ」(ダイジェスト版/30分)上映
〔2部〕両監督との対話

【出演】
イマード・ブルナート監督(パレスチナ人)
ガイ・ダビディ監督(イスラエル人)
渡辺えり(劇作家・演出家・俳優)
根岸季衣(俳優)
古居みずえ(ジャーナリスト/予定)

【司会】 土井敏邦(ジャーナリスト)

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放課後 そして 日刊ゲンダイの山田さんに間違えられるの巻

2012-08-24 | Weblog
夏期集中講座終了。演劇学科一・二学年に教育学科からも志望者が参加して想定以上の大人数だったが、なんとか終えた。一年生は自分の息子と同学年なのだがあまりそういうことは意識しない。大人か子供かよくわからない世代だが個人差があるのは当たり前、何をもって大人か子供か考えるのかも紙一重みたいなものだ。半年分のカリキュラムを集中して行ったわけだ。週に一回ずつの授業よりも集中するからいいところもあると思う。学生たちはみるみる変わってゆくのだから面白いといえば面白い。終えて、時間がたったら忘れたり勘違いもあるだろうからと、そのまま研究室で採点も済ませる。試験などしていない、正直かつ素朴な評価。三十人以上をきちんと個別に認識しなければならないから責任重大だ。……誰もいない校舎をとぼとぼ帰ると、守衛さんと事務員一人しか残っていなくて、確かにこれはまごうことなき「放課後」の「そのまた後」である。私はもともと学校は嫌いだが、「放課後」は嫌いじゃなかったかもしれないと、ふと思う。『最後の一人までが全体である』で、週休二日制が入ってきた高校で猪熊恒和教師に「土曜日の放課後を返してください」と言わせた衝動の根源は、今なお自分の中に残っている気がする。……さて、某所で、見知らぬ方に、「日刊ゲンダイの方ですか?」と聞かれる。「?」となったが、勘が働いたので、「山田さんのことですか?」と聞くと、「あ、はい」と返ってくる。つまり。私は「日刊ゲンダイの山田勝仁さん」と間違えられたのである。うーむ。似てますかね? 「勘違いですよ」とお答えしたが、もちろん自分が何者かは名乗らなかった。武道に長けた精悍な山田氏だが、最近ちっょとふっくらしてきたという情報があり、それで私に似たのかも知れぬ。写真は、FBから勝手に引っぱってきた山田氏の写真。
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粛々と

2012-08-23 | Weblog
大学に通って3日目。夏期集中講座であるが、若い人達と長時間過ごしている。昨今世の中ではいろいろなことが起きているが、大学生の世代の人達が、あまりにもそうした出来事やその背景について知らないということに驚かされる。例えば、パレスチナとイスラエルという国についてとか、どこでも学んでいないのだ。栗本慎一郎学長がいらして、授業後に話す。……「官邸の一00時間」届く。読みたいのだがすぐには時間がとれない。……高江での工事が続いている。それにしても村長だ知事だという「長」の立場の人間はなぜ前言を翻したり誤魔化したりしがちなのか。
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「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo」の記録〈5〉・アメリカから届いたもの

2012-08-22 | Weblog
八月五日に座高円寺2で行われた日本劇作家協会公開講座・リーディング「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo』の紹介、ラスト。写真は第一部の舞台挨拶。とにかく大勢の出演者・演出家。二部構成だからこの倍の人数が関わったのである。……アメリカで被災地演劇人支援のため集まったお金も先週日本にようやく届いた。ほんとうにありがとうございました。近日中に劇作家協会から正式発表する。アメリカから届けられたものは、たんに同情ややさしさのみではない。大きな宿題をもらったと思っている。……オリンピック選手の凱旋パレードに五十万人(主催者発表)、と聞くたびに、金曜日の首相官邸前デモはそれほどの数ではない(主催者発表で最大時で二十万人)、と言われているような気がする。デモ代表が首相に会うというのは大丈夫か。要求項目はわかるが、この国の問題はそれだけではないからな。……日々の報道を見ていて暗澹とする。大人がちゃんとしていないのに若い人にちゃんとしろと言っても無理な話だ。「領土問題」で他の重要な問題が隠されてゆく感じに苛立つ。……次の衆院選では自民党と組むらしいとも伝えられている大阪維新の会代表・橋下大阪市長は21日、戦時中の従軍慰安婦問題に関し「慰安婦が軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられた証拠はない。あるなら韓国にも出してもらいたい」「慰安婦制度は今から考えると倫理的に問題のある制度なのかもしれない」。このタイミングでこの強弁のさもしさ。……福島第1原発から20キロ圏内の海域(南相馬市沖)で採取したアイナメから、過去最大値となる1キログラム当たり2万5800ベクレルの放射性セシウムを検出したと東京電力が発表。国が定める一般食品の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)の258倍、1キログラムを食べた場合の内部被ばく線量は約0・4ミリシーベルトと推定される。ミズダコなどの試験操業を除いて漁を自粛中の海域だが、そこだけに収まる話ではないだろう。アイナメの餌にはエビやカニもあるのだ。……午前三時過ぎ、早起きして仕事、出がけに高江への防衛施設局による強制搬入の動きの情報が入り、暗澹としつつ前日同様の朝の通勤。夕方まで大学の先生をする。「演劇概論」なんだけど一日二時間は運動させている。……帰路、最寄り駅で初めて寄る整骨院。電気療法は効くようだが、そんなに頻繁に通えるとは思えない。……ジャーナリストの山本美香さんがシリア・アレッポで政府軍の無差別銃撃を受けて亡くなった。せつなく、悔しい。気持ちのやり場がない。
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「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo」の記録〈4〉・東北からのゲスト

2012-08-21 | Weblog
八月五日に座高円寺2で行われた日本劇作家協会公開講座・リーディング「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo』の写真等をさらに紹介。この公演のもとになったアメリカでの事業は被災地の演劇人の支援を目的としているわけだが、第一部、第二部とも、リーディングの後に、岩手からくらもちひろゆきさん、福島から大信ペリカンさん、二人の東北の劇作家が登壇。いろいろな東北の事情等を聞いた。聞き手は私。大信さんはもともと南相馬に住んでいて、津波も原発事故の影響もダイレクトに受けている。彼の新作・満塁鳥王一座『キョウド町グローバリズム行進曲』はこの秋、各地で上演される。くらもちさんは彼の主宰する架空の劇団と、青森の渡辺源四郎商店の合作により、新作「震災タクシー」を各地で上演する。昨年3月、劇作家協会東北支部長になったばかりだったくらもちさんは、私とも話し合って、東北の協会員のネットワーク確立に乗り出し、じかに皆に会おうと旅立ち、たまたまこの震災にダイレクトに遭遇したのだ。あらゆる公共の交通機関が止まった時、彼が何度か活用したのがタクシーだったのだという。どちらも期待される新作である。……今日は朝のラッシュ時に家を出て、午前から夕方四時半まで有明教育芸術短期大学で演劇概論の夏期集中講義一日め。6時間講義すればそれはそのぶん疲れる。
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「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo」の記録〈3〉・『日本流エチケットの手引き』

2012-08-20 | Weblog
八月五日に座高円寺2で行われた日本劇作家協会公開講座・リーディング「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo』の一部の写真等をさらに紹介したい。これは『日本流エチケットの手引き』。作・ダグ・ライト、訳・常田景子、演出と出演・坂手洋二+常田景子。……「日本人のエチケット」を語る男性を演ずる。ト書きは常田景子さんが読む。最初に英語で読んだ時にかなり嫌悪感を感じた過激なテクスト。しかしどうにかそれがブラックユーモアであると解することができ、なんとか突破口を見つける。幸い上演は好評で、安堵する。……ピリッツァー賞・トニー賞ダブル受賞のダグ・ライトの出世作『アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ』を上演したのは一昨年初頭。日本に来て講座もやってもらった。あれからもなんとなくやり取りが続いているのはありがたいことだ。……まったく仕事が捗らないわけではないが、難渋する。悶々として集中力がない。これではまるで使い物にならない人間である。暑さもあるが、この間の国内外の情勢とそれに対する人々の反応を見ていて、暗澹たる気持ちになっていることが影響している気はする。それはどうやら私一人ではなさそうだ。……何ごとも平常心。そう思うだけではだめだ。具体的な解決に向かって歩み出さなければ。しかしもう一度仕切り直すとして、どこから手をつける?
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「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo」の記録〈2〉・『一時帰宅』 と、 下北沢にいた一日

2012-08-19 | Weblog
八月五日に座高円寺2で行われた日本劇作家協会公開講座・リーディング「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo』の一部の写真等を引き続き紹介したい。これは『一時帰宅』。作・坂手洋二、演出・前川知大、出演・有川マコト+加茂杏子+川添美和+工藤佑樹丸+西山聖了+猫田直+藤井びん+安井順平。奥秋圭さん撮影。これももともとのテキストは燐光群昨年秋の公演『たった一人の戦争』の一場面。「一時帰宅」というシチュエーションはもうあまり言挙げされなくなったが、今回のリーディング上演でも数分の中にこの状況の理不尽さは凝縮できたと思う。家族たちの留守宅に勝手に居候をしていた人物(安井順平)は、捻れた形で『血の問題』と繋がる。「おじいちゃん」役に郡山出身の藤井びんさんを推薦、彼が前川組に混じっているのがなんだか愉快であった。……見なくてはならない舞台が幾つもあるのだが、身動きできないでいる日々。台詞に頼らない劇を観て刺激を受けたくて、一時間ちょっとしかないとも聞いたので、スズナリで少年王者館『累』を観る。盛況。意外と言葉の世界だった。原作があるのだものな。……そのまま下北沢、タウンホールで公開講座「演劇のまち下北沢のグリーンライン的これから」。小田急線地下化の跡地をどうするかという、世田谷区・都・小田急の折衝がはじまっている。下北沢はどうなるのか。本多グループ二代目・慎一郎さん、キャッツシアターを始めた舞台美術家・土屋茂昭さん、明治大学の小林正美さんらと。参加費千円を取るというので、ちゃんと喋らなきゃとあらためて思う。下北沢の街は阿波踊り、世田谷区は花火もしていて保坂区長は来られず。それでも熱心な方々が来て下さり、前向きな話に。
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小池博史さんとの話

2012-08-18 | Weblog
あまり外出できず、ほとんど人に会わず、何も観に行けない日々が続いているが、16日の午後、久しぶりに小池博史さんと話をする。小池さんは今月、大阪で『宇宙みそ汁 / 無秩序な小さな水のコメディー』を観てくれた。この「身体派」の先輩は、〈パパ・タラフマラ〉を旗揚げから三十年を経て解散したばかりだが、新たな地平を求め、着実に再始動されている。そして解散後も、今まで多くの人材を輩出してきた養成所を存続していることは、ほんとうに尊敬できる。話していて、今の時代と舞台表現について、現実に追われるのみでなく考えなければならないと、つくづく思う。私はあまり景気のいい話や実現できるかわからない話をする心境ではなく、こちらからは四方山話に終始してしまった気もするが、面白い話を多く聞けて、刺激を受ける。貴重な時間だった。……とここまで書いて、小池さんがツイッター・FBにこのミーティングのことを記しているのに気づく。そう、より横断的に、開放的に。日々の出会い直しの貴重さこそ、私たちが「舞台」と共にある証しだ。そして、劇団中心でいると閉じてしまいがちのような気がするが、そんなこともないはずなのだ。……小池さんは身体性の欠如したものがほとんどに見える昨今の演劇の趨勢とは一線を画したいというお考えのようだ。しかし私が小池さんの作品を「演劇」だと考えてもいいのではないかというのは、あまり「ダンス」というものがわかっていないからなのかもしれないが、端的に言えば次のような事情による。演劇はよく「見る」という言い方をされるが、私にとっては、観客が「俳優が感じていること」に「立ち会う」「共に感じる」ことが中心にあると考えるので、「ダンス」もそうであるならばそれでも構わないが、小池作品は私の思う「演劇」の王道にあると、最近再演された二本に触れて、あらためて思ったからである。「ジャンル分け」じたいはどうでもいいのだ。
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戦後日本民主主義終焉への手引き アーミテージ元米国務副長官らによる対日政策提言第三弾

2012-08-17 | Weblog
リチャード・アーミテージ元米国務副長官、ジョセフ・ナイらによる米超党派グループによる対日政策提言第三弾が発表された。2000年の第一次提言は、直後の小泉首相がそれを丸呑みした政策を積み重ね、周囲が米側の意志に逆らえないという一点でそれを認め、小泉が「強い首相」という誤ったイメージを得て、日本を悪い方向へと一気に牽引した諸悪の根源というべきもの。2007年の第二次提言も、今あらためて眺めても、その後の民主党政権がどう足掻いてもこの指針に逆らえなかったことがわかる、アメリカの冷徹な対日本政策が汲み取れる、底冷えするような代物だ。そして今度の第三弾……、まだ全文の訳が手に入らず、要旨しか見ることができないでいるが、今伝わってきている範囲でも、震災・原発事故のダメージから立ち直れない日本を、この国の指導部にかわって、支配・操縦しようとするものである。序文からいきなり「中国の台頭や北朝鮮の核開発に的確に対応するには、より強力で平等な同盟が求められる。日本国民と日本政府が二流国家に甘んじる気なら、この報告書は無意味だ」と迫る。「日米同盟の未来は、日本が世界の舞台でより大きな貢献を果たすパートナーになるかどうかに懸かっている。日本は依然として一流国家であり続ける力を十分持つ」と、あくまでも「日本側の判断」としている。「エネルギーと安全保障」については、この二点が繋がっていることをもう隠さない。「原発を慎重に再稼働することは日本にとり正しくかつ責任ある措置だ。原子力は日本の包括的安保の不可欠な要素となる。日米は原子力エネルギーに関する協力を強化し、世界規模で原子力安全の促進を図るべきだ」としている。アメリカではリベラル派でさえ、というより「環境派」の方がむしろ「石油より原子力」というシフトが王道であるが、脱原発依存に向かう世界の趨勢を無視して、原子力のパートナーであれということだ。一方で「米国は資源ナショナリズムに訴えてはならず、民間企業の液化天然ガス(LNG)輸出を禁じてもならない。日米はメタンハイドレートの研究・開発で協力すべきだ」ともしている。せっかく日本の環境省がこの13日、「太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーによる発電量の試算」を発表し、「買い取り価格・期間を事業者に有利なものとすることで、原子力発電を大きく上回る発電量が見込めることがわかった」としているのだが、それに対する逆風である。経済・貿易面では、「環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に加え、日米にカナダ、メキシコが参加する包括的経済・エネルギー・安全保障協定を締結すべきだ」と、これまでの「自由化」要求方針を踏襲している。「日韓の緊張緩和のため米国は外交上の努力を尽くさなければならない」としつつ、「日本は韓国との関係を複雑にし続ける歴史問題にしっかり向き合うことが不可欠だ。日韓は民族主義的感情を内政上の目的に利用するのをやめるべきだ。米国を加えた3カ国で日韓の歴史問題に関する非公式な官民の取り組みを拡大させる必要がある」と、直裁に語る。「日米は政策・運用両面で、中国が尖閣諸島や南シナ海に〈核心的利益〉を広げてくるのに対処しておく必要がある」という文言は、沖縄への米軍配備に向けた強制を裏付けるものとして、「活用」されてしまうだろう。「日本はインドやオーストラリア、フィリピン、台湾との関係を強化すべきだ」、そして「イランにホルムズ海峡封鎖の兆候が出た場合、日本は単独でも掃海艇を派遣すべきだ」「完全に南シナ海の航行の自由を確保するため、米国と協力して監視活動を強化する必要もある」と、本来の「自衛隊」等の機能を無視した「ミッション」を堂々と謳い、「日本の武器輸出三原則の緩和を踏まえ、日本の防衛産業に米国だけでなく豪州などへの技術移転も促すべきだ」としている。「米軍普天間飛行場移設問題は、(日米同盟の)将来像に焦点を当てていけば解決可能だ」としているが、この「将来像」が普天間基地及びその代替地の「撤去」「縮小」に向かっていないのは文脈上、明らかだ。「日米同盟深化」としつつ、結果として「従属」の関係を明確にしている。……ある意味で、この提言は最大限、丁寧に、慇懃なまでに言葉を選んでいる。この「内容」を選ばせたのは、独自の明瞭な指針を打ち出せないできた日本のこれまでの状態の故である、ということだ。それはまったく否定できないが、だが、この提言を鵜呑みにすることは、アメリカに依存した平和と繁栄を甘受してきた「戦後日本民主主義」の、明らかな終焉を意味することになるだろう。
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