平和を守ろうとする者たちは久しく、基本的に憲法9条を守るということを主眼としてきたが、憲法改悪勢力は、それ以外の部分での突き崩しを進めようとしている。まず、憲法自体のルールを定めた96条をいじろうとしている。衆参両院の3分の2以上の賛成で国民投票、過半数賛成によって憲法を変えることができる現行に対して安倍政権は衆参両院の過半数へとハードルを下げようとしている。次の参院選で定数242の3分の2、162議席以上になれば、現行憲法のままでも国民投票に持ち込まれることになる。憲法を変えようとしているのが、憲法に守られるべき国民ではなく、憲法に縛られている権力者たちなのである。「国民が国家権力を縛る」という憲法の立ち位置からすると、政治家たちにとって「憲法を変えやすい」ということじたいが、憲法の精神に反している。「公共の福祉に反しない限り」という現行憲法のフレーズに対して自民党は、「公共の秩序に反しない限り」と、変えようとしている。その「秩序」を判断するのは誰なのか。国家権力の恣意的な判断を信用しないからこそ、憲法があるのだ。「国家権力が国民を縛る」構図への移行を、なぜ国民は見過ごそうとしているのか。そこには、言葉に対する不信がある。その不信が、権力の側に利用されている。むしろ権力側が「言葉に対する不信」をプロデュースしているといっていい。……自民党は、次の参院選が対抗馬なしの楽勝と考えているからこそ、「憲法改正」も「原発再稼動」もマニフェストに明記しているわけであり、じっさいに自民党が勝てば、国民が「憲法改正」「原発再稼動」を支持したことになってしまう。そこの部分が鈍感になっている国民は、自らの主体性を放棄しているわけであり、その背景にあるのは言葉を軽視する風潮だ。……安倍総理は「村山談話」を否定しようとしているが、「村山談話」はたんなる意見提出だったわけではない。かつてこの国が、国家として国際社会に対して、そのような認識を持っているという「約束」として、提出された言葉である。それを無視・軽視・否定する安倍発言が、無視・容認されているということは、言葉というものがおそろしく軽く受け止められ、受け流されるようになっているということでもある。……選挙前に公約にしていたことを平気で裏切る議員も、続出している。言葉でする「約束」が、信じられない社会になっている。
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