Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

梅ヶ丘BOXで「秋元松代」連続セミナー

2018-02-22 | Weblog
演出者協会で続いている近代戯曲についてのセミナー、対象をさらに現代戯曲に近づけていこうというとになり、まず、秋元松代さんの戯曲をということになった。

『常陸坊海尊』は、私もやりたかったのだが、スケジュール的に無理。

そのくらい『常陸坊海尊』は、すごい戯曲です。

お時間のある方は是非参加してくみてださい。

---------------------

一般社団法人 日本演出者協会主催
秋元松代『常陸坊海尊』を読む! 参加者募集!
日本の近代戯曲研修セミナーin 東京
研修参加&リーディング発表ご来場 受付中。
 
○研修日(全8回予定)
2月25日、28日、3月1日、4日、9日、11日、13日、16日
研修への参加、見学ができます。参加費1回500円。
※演出者協会会員は無料
 
○発表会
3月17日(土)、18日(日)
両日とも
15:00 リーディング
17:00(予定) シンポジウム
会場:梅ヶ丘BOX
料金:1,500円
※演出者協会会員は無料。
 
※申込、問合せ先
携 帯 090-6513-7904(担当:小林)
専用メールアドレス kindaigikyoku@yahoo.co.jp
※お申込みの際はお名前、連絡先(電話、メール)、年齢、所属をお知らせください。

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=551221481907340&id=178396509189841
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『ブラインド・タッチ』。奇跡を起こすためにしか、存在し得ない。

2018-02-20 | Weblog
『ブラインド・タッチ』

かつて、岸田今日子さん・塩見三省さんのコンビに、書いた。

十六年後に、自分で演出することになろうとは。

おそろしい戯曲だ。
(れんが書房新社『最後の一人までが全体である』所載)

デビッド・ヘアが、うっかり、日本を舞台に政治劇を書いたらこうなる、というつもりで書いたのは確かだが、じっさい、こんな思想的メロドラマとしての日本戯曲、切ったら血が出る度合いとしても、秋元松代さん以後、ないように、自分でも、思う。
デビッド・ヘア『スカイライト』に挑戦状を送った作品であることは、事実だ。
二十年以上前、ロンドンで『スカイライト』初演を観た。
そこから、たんなる「アイデア」が、具現化していった。

7年前、イギリスでの『ブラインド・タッチ』リーディグ初日に、そのデビッドから御祝いのFAXをいただいたことが、忘れられない。
デビッドの新作を日本で三本続けて演出しているのは私であるから、まあ当然なのかもしれないのだが。

『ブラインド・タッチ』
日本戯曲として、この方向では、おそらく無敵である。

後は、私たちが、いかにちゃんと上演できるかだ。

高橋和也さん、都築香弥子さん、お二人の魅力を、いかに引き出せるか、だ。

『ブラインド・タッチ』
こんな企画は、ほんらい、奇跡を起こすためにしか、存在し得ない。

なーんちゃって。
たまには自分を追い込みたくなるのだ。

………

『ブラインド・タッチ』

2018/3/19ー4/1 @ 下北沢 ザ・スズナリ

3/19(月)19:00
20(火)19:00
21(水)14:00
22(木)19:00
23(金)19:00
24(土)14:00
25(日)14:00
26(月) 休演
27(火)14:00
28(水)14:00 19:00
29(木)14:00
30(金)19:00
31(土)14:00. 19:00
4/1 (日)14:00

作・演出○坂手洋二
出演○高橋和也 都築香弥子

http://www.blind-touch.com/
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第23回劇作家協会新人戯曲賞選考経過、講評が発表されています。

2018-02-19 | Weblog
どうやら一昨日、岸田戯曲賞も決まったようだが、昨年末に決定した、「第23回劇作家協会新人戯曲賞」の選考経過、講評が、劇作家協会のホームページに発表されています。

http://www.jpwa.org/main/activity/drama-award/prize/23th-senpyo

で、読むことができます。(写真もそこからお借りしました)


受賞作は、

出口 明、大田雄史『うかうかと終焉』

でした。

他の最終候補作は、

 『精神病院つばき荘』 くるみざわしん (大阪府)
 『黒いらくだ』    ピンク地底人3号 (京都府)
 『アカメ』      八鍬健之介 (東京都)
 『下校の時間』    長谷川彩 (愛知県)
 
最終審査員は、 川村 毅、坂手洋二、佃 典彦、土田英生、永井 愛、マキノノゾミ、渡辺えり、司会は瀬戸山美咲、でした。


私、坂手洋二の講評は、以下の通り。


『精神病院つばき荘』は、震災からさほど間をおかず書かれたはずで、以前にも読んでいる。精神病院が舞台であるが、その後起きた「やまゆり園」事件の現実のリアルの前には、寓話的に見えすぎてしまう。
 とにかく登場人物が喋り過ぎで、「リーディング向けの台本」として書かれたのではないかとさえ思ったし、「なぜこの人たちはこんなに言葉が出てくるのだろう」という問いを抑えられない。何かにこだわり続ける人物達であるともいえるのだが、岩松了的な粘着とも違う。登場人物に対する距離感のためか、立場が逆転したり等、いろいろ展開があっても、劇的高揚はあまり感じられない。
 タイトルにもなっている施設名の「つばき」が、「椿」と「唾」を掛けているというようなレトリックが、私にはどうしても面白いとは思えなかったものの、才気もキャパシティも随所に感じさせる。この作者はもっと書けるはずだ。
『黒いらくだ』は、団地の共同ベランダが舞台。隣の別所帯と繋がっている設定が面白い。子供の頃の「透」が出てくるのも、演劇ならでは。繰り返される暴力も興味深いが、「義雄」のいかにもなオーバーアクトの言動になってくると、いささかうんざりする。結果、狂気やギャグも「演劇用」にしつらえられただけではないかという疑念が拭えなくなってくる。
『黒いらくだ』という架空かも知れない映画、カンヌを騒然とさせたというその存在は、じつに面白い。短いシーンが挿入(カットイン)されるこの劇の場面処理じたいも、どこか映像的といえるのだろう。
 文字の向こうに確実に劇の現場を浮かびあがらせられる筆致は認めるが、この作品も、喋り過ぎ、不必要と思われるまでに理屈をこね回すところがある。「透」が、もしかしたら自分自身が犯人ではないかと疑う展開は興味深いが、その性質が父親から受け継いだものとして説明されると、少しガッカリする。
『アカメ』は、ゲストハウスのテーブルがある部屋という舞台設定の「(登場人物の)出入り自由な空間」が、作風に似合わない。便利というか都合がいいだけである。直接でも寸止めでもない曖昧な会話が続き、弾まない。人間関係がわかりにくい。いかにもな蘊蓄も、次第に退屈に感じられてしまう。
 ストーリーはあるのだが、葛藤がきちんと組み立てられていない。屋内から雄鹿の姿を見る展開が、何か盛り上がりになってくれるわけでもない。過去の記憶が現在の人間にのしかかってくる痛みとクロスするだけの、進行形のビビッドさが不足している。
「いけなかったんだべや、アイヌだから」という「差別」のステレオタイプは、その「差別」を劇のネタで使った、という以上のことになっていない。逆に「アイヌ」という言葉だけでその人の特質を語ってしまうのは、それじたいが新たな差別の再生産となる可能性さえある。
作者は書ける人だと思う。幹を太くすること、不必要な部分を削ぎ落とし軸を鮮明にする集中力を求めたい。
『下校の時間』。完成度の高さという意味では、候補作中、明らかに断トツ。物語としては、柳瀬の言う「(藤田が)弾けるかどうかは知らんけどさ、弾きたいかどうかは自分で決められるじゃん」、これが名台詞になるかどうかが問われるところだ。藤田の実体、登場人物達との関わりが今ひとつ鮮明にわからないため、不発に終っている気がしてしまうのが、惜しい。
 声がかき消されて二人が歌うクライマックスは、もったいない。合唱とは違う幕引きの方法がなかったかと、思う。
 登場人物達は子供というよりは大人に思われる。そこがどこか岸田國生の戯曲を思わせる。この作者は無意識に自分に課しているらしい制約を、どう解いていくのだろう。大器を予感させる。
『うかうかと終焉』は、京都にある大学学生寮の廃絶・取り壊しに立ち会う若者達を描いている。退寮者が壁に落書きを残してゆくという習慣があるという設定が、仕掛けとしてうまくいっている。いまの若者からすれば「時代色」を感じさせもするのだろうが、私も以前、(学生でもないのに)京都大学西部講堂連絡協議会のメンバーだったし、長いあいだ京大構内に逗留したこともある。その頃から「過去の亡霊」の存在感は、半端ではなかった。
 登場人物達は現在の世相で言えば、かなりな少数派と捉えられることになるのだろう。ノスタルジックな世界のようだが、現在進行形の「いま」の物語として、なんとか持ちこたえていることを、讃えたい。
「年齢ごとの心の賞味期限」という言葉も含蓄がある。昔も今も人間は寄り添いたがる生きものだし、別れの積み重ねこそ生きることだという達観も、また然り。
皆が電球を見ていて点灯した瞬間にまぶしさに一瞬うろたえる導入部から、演劇的な仕掛けの一つ一つが、悪くない。わかっていて書いているのだろうが、生硬でナマすぎる言葉も多々あり、実に荒削りだが、書き手が心から楽しんでいることがわかる。
 この作品の強さは、自分が生きている現実に対する違和感を描こうとする意欲と、演劇という表現の特性への関心が、うまく噛み合っているところだろう。

 最終候補作はどの作品も、書くことが好きなんだなあと感じさせた。そこが頼もしくもあるし、もっとその先に飛び出してほしいとも思わせられるところだ。
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燐光群 2018年度 新人募集!

2018-02-18 | Weblog
燐光群 2018年度 新人募集!

燐光群では、共に演劇を創造していく劇団員を募集しています。意欲と情熱のある方の参加をお待ちしています。

対象
 俳優
 演出助手、劇作家、美術部等・舞台スタッフ
 スタジオ運営スタッフ
 制作スタッフ

<応募資格>燐光群・坂手洋二作品を観ていること

<応募方法>

○第一次審査(書類選考)履歴書と作文をA4サイズで作成し、以下にご郵送下さい。
 履歴書=要写真貼付。氏名・ 住所・電話番号・メールアドレス(PC/携帯共)・身長・体重・年齢(生年月日)を明記のこと。
 作文=「燐光群の作品を観た感想」「自分について」各800字以内
 観たことのある、あるいは読んだことのある、燐光群または坂手洋二の作品を挙げて下さい。

○応募締切 2018年3月16日(金)必着

○第二次審査(面接・実技試験)書類審査通過者に追ってお伝えします。

○送付先 〒154-0022 世田谷区梅丘1-24-14 フリート梅丘202 燐光群 新人募集係

◎電話でのお問い合わせはご遠慮下さい。rinkogun@alles.or.jp または FAX 03-3426-6594 でお受けいたします。

http://rinkogun.com/recruit_2018_%281%29.html
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自転車が故障

2018-02-17 | Weblog
自転車が故障。

不便だ。

タイ・バンコクの水上バスが恋しい。

昨日は午前に会議、午後に稽古、夜にまた会議、十二時間ぶっ通しの集中であったが、その後、協会の企画事業部というか、劇作家大会に向かう仲間たちと、九州居酒屋で一献。それはそれで幸せである。
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タイ・ロスなのか?

2018-02-16 | Weblog
アジア共同企画の旅から帰ってきてまだ四日半。
もう四日間『ブラインドタッチ』の稽古をしているし、会議も幾つもしている。
原稿も書いている。
日本の日常にあっさり戻っている。
しかし昨日、タイ土産のインスタントラーメンを食べてしまい、ああ、これはやはり日本の味ではないなあ、この味から遠ざかってしまうのだなあと思う。

タイ・ロスがそんなにあるわけではない。
(何かを喪失した感じの「〜ロス」という言葉を使うのは実は生まれて初めてである)

一番長くいたせいか、チェンマイの思い出が甦る。

チェンマイと言えば、やはり、何と言っても、上演会場を提供してくださったティプスリ・ソクソーパ画伯の佇まいだ。
人間国宝のこの人が、毎朝、ギャラリーまわりの森の庭園を掃除していた。
美しく、穏やかな日々だった。
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【ネタばれ注意】どうやら私だけが誤読しているらしい映画『スリー・ビルボード』

2018-02-15 | Weblog
【ネタばれ注意】

ほんとに、映画を観ていなかった。
年末、魔が差して、新宿で『オリエント急行殺人事件』をオールナイト上映で観ようとしたが、最初のタイトルが出た時点で眠ってしまい、気がつくとエンドロールが流れていた。寒空の中、始発で帰宅した。
先日、『リタイアメン』ツアーを終えたタイから帰国便の飛行機内、機内のオンデマンド上映で『オリエント急行殺人事件』を選べたので、今度は眠らずに観ようと決意し観ていたが、さすがにその朝五時出発だったためか、ジョニー・デップが殺される前に寝てしまい、目覚めて後半だけ観て、終わってからまたジョニーが殺されるまでの前半を観て、順序は不規則なものの、なんとか一通り全部を、観た。ケネス・ブラナーが楽しそうにポアロを演じているというだけの映画であった。かつてのシドニー・ルメット監督版『オリエント急行殺人事件』を封切りで観て、ジョルジュ・ドルリューの音楽に陶酔し当時の名優達の競演に興奮した身としては、物足りないどころではない。1976年、岡山グランドという映画館では、その旧版『オリエント急行殺人事件』と『ゴッドファーザーPARTⅢ』の二本立てというクレイジーな(併せて5時間半という)番組での上映だった。この映画館はリバイバルの『明日に向かって撃て!』と当時無名のトビー・フーパー監督のできたてほやほや新作『悪魔のいけにえ』を二本立てするという素敵なクレイジーさを持っていた。
で、そのタイから帰国便の飛行機で私の隣の席にいた清水弥生が、「あー『スリー・ビルボード』やってる。でも帰国して映画館で観るから観ない」と私が呟いたのを聞き捨てにせず、こっそり『スリー・ビルボード』を観て、着陸前から「面白かった」を連発したのである。そもそも日本にいる多くの知人友人たちからも『スリー・ビルボード』を観た評判は伝わってきていた。そもそも『スリー・ビルボード』の脚本・監督マーティン・マクドナーの二十代でのデビュー戯曲『ビューティークイーン・オプ・リナーン』なんかを日本で一般に知られる前からフォローしていた身としては、なんだか「ちぇっ」という気分にさせられていたのだ。当時苦労して『ビューティークイーン・オプ・リナーン』日本初演を実現した立石凉子さんの活動を応援していたということもあった。
ま、いい。とにかく、帰国したらまず『スリー・ビルボード』を観なくちゃ、ということだったのである。期待大なのも当然だ。

で、帰国翌日にもう『ブラインド・タッチ』の稽古を始め、三日後、その日の稽古が終わったものの、これもいろいろとお誘い頂いていたのも含めて何か夜の部に芝居を見に行くのはタイミング的に微妙に遅すぎて、吉祥寺オデオンに駆け込み、バレンタインデーに相応しい映画かどうかは知らぬまま、なんとか『スリー・ビルボード』最終回の鑑賞を果たしたのである。

本題に入る。


『スリー・ビルボード』。

最初の三十分はもう、ここしばらくのどんな映画よりも映画としての活力に満ちていた。文句のつけようもない出来映えと思われた。
その後もいろいろと面白い。さすがであった。
コーエン兄弟監督『ファーゴ』を思い出した。主演者と音楽が同じである。アメリカの片田舎の犯罪劇。あの映画へのオマージュの要素もあるのだろう。

しかし。

後半、物語は乱走しているように思われ始めた。もちろん、確信犯であるとわかるところもある。それは了解している。
が、どこか馴染めなくなってきた。
本来はそういう規格外れの乱走じたいは、決して嫌いじゃないはずの私であるにもかかわらず、だ。
シナリオライターの荒井晴彦さんもあまり納得していないらしい、と聞いた。

で、この終わり方はどうだろう、と、思った。
ただ、私なりに、こう考えればぎりぎり納得できる、という線は、あった。
ところが、日本の観客で、その考え方をしている人は、あまりいないようなのだ。

【以後、本当に、ネタばれ】

それがどういうことかを、簡単に説明してしまえば、新警察署長が最後に登場したさいの、言動のとらえ方である。
新警察署長は言う。元警察官ディクソンが持ち込んだ、「レイプ犯かと思われたアイダホの男」のDNAは、レイプされ殺されたミルドレッドの娘アニーから採取されたものとは一致しなかった、その男は「国家機密」に属する戦争に従軍し、犯行当時には異国にいた、と。
しかしそれは本当だろうか。
新警察署長は、元警察官ディクソンの乱行、人種差別傾向、蒙昧を、僅かの間に知り尽くしている。だからあっという間に免職させてしまう。ディクソンが妄想、錯乱の持ち主であることも知っている。
新警察署長が、そんなディクソンの差し出した「証拠」を、真面目に調べたりするだろうか。彼のすることを虚偽と決めつけて当然だ。酒場で揉めた相手を陥れようとしていると決めつけているだけではないか。とはいえ、ただ門前払いするのも面倒だ、前所長を信奉し自分なりの正義感を持ち愚直でさえある彼に、誠実そうに「虚偽の真実」を伝えれば、それを信じるはずだ、と確信していたのはないか。
だから、「レイプ犯かと思われたアイダホの男」について、調べもしないで無実であると伝え、偽の事情やアリバイを示して、かわすのではないか。
ディクソンは元警察官だけに「レイプ犯かと思われたアイダホの男」の住所などは既に調べている。ただし「DNA鑑定の結果」と「犯行時のアリバイ」は、彼には確かめられないことだ。ならば彼を欺くことは容易だ。
新警察署長は被害者の母親ミルドレッドに言う。「味方はいる」と。それは、彼女を、ディクソンのような輩から守るということだ。そんな彼がディクソンの提供する「証拠」をありがたく受け取り、正当に調べるだろうか。

「レイプ犯かと思われたアイダホの男」は、ミルドレッドのいる店で犯行を仄めかして脅すし、酒場でディクソンに犯行を認めるような発言を思いがけず聞かれたとき、過剰に反応する。とくに後者は真犯人であることを明確に示しているように思われるエピソードだ。真犯人でなければ、手品をしている相手に引っかかれたくらいであそこまでの制裁を加えないはずだ。それをディクソンにはわからない形で観客にはより確信を持ってわかるように説明している描き方だった。普通の物語展開の方法論では、この語り口を使うときには確実に、「登場人物の知り得ない真実を、観客には提供している」はずだ。

ラストシーンは、真犯人である「レイプ犯であるアイダホの男」を、ミルドレッドとディクソンが、遥か遠くまでの長い道のりの先に、殺すであろうことを、示している。
あるいは、殺さないかもしれない。
道々考える、と、言っているとおりだ。

殺さなかった場合は、どうなるか。
復讐すべき相手に寸前まで迫ったのに、新警察署長の言葉を信じて、「同じようなレイプ殺人をしたから殺す」ということに、違和感を感じて、じつは真犯人である彼を見逃した、ということになる。
それはそれで、皮肉な、深みのある結末だ。

しかし、新警察署長の言う通り、「レイプ犯かと思われたアイダホの男」のDNAがミルドレッドの娘アニーから採取されたものとは一致せず、その男が「国家機密」に属する戦争に従軍し、犯行当時には異国にいた、と言うことが真実だとすると、もちろん皮肉な結末ではあるものの、観客にも登場人物にも、ただ、真相は藪の中、というだけになってしまう。
ミルドレッドとディクソンの道行きも、その意外さのみからいろいろとしみじみ感じる、というだけになってしまう。

はたして、それでいいのだろうか。
私には、あの新警察署長がディクソンを欺いたつもりが、「真実」を見逃した、という方が、よほど面白いと思われるのだが。


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「リタイアメン」を演じた人は、リタイアしていない

2018-02-13 | Weblog
鴨川てんし、跳ぶ。
みごとなジャンプ写真。
椅子を飛び越えるが、椅子は一切、見ていない。
『リタイアメン』の中で、女性との気持ちの擦れ違いへのいたたまれぬ想いから、跳ぶ。

どうしても紹介したいので載せます。

齢七十の方に「飛んでください」と注文する演出家は、私であった。
椅子を見ないの他に、二度目は両足揃え、タイミング等、多くの注文に応えてくれる。
「リタイアメン」を演じた人は、リタイアしていない。

撮影・姫田蘭。
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帰国しました。

2018-02-12 | Weblog
アジア共同企画『リタイアメン』。

〈アジア共同企画〉は三年越しの製作体制で、国境を越えた、取材・ワークショップ・ミーティングなどを経て、2本の公演と、ワールドツアーを実行した。

フィリピンの演劇人とは長いつきあいだが、私にとって、タイの演劇人とのコラボレーションは、初めてであった。

共同演出は滅多に機会がないのだが、ニコン・セタンとの作業はうまくいったと思う。
彼がタイの現代演劇の新たなリーダーであることも、よくわかった。

今回の出演者ゴップとは、1999年の春、ACCのグラントでニューヨークに滞在した際、同じチェルズモア・アパートメントに滞在していたのが、最初の出会い。
この件は、は以下の記事に詳しい。

http://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/0f479ea31beb01abc10aa3e97a521888

それ以前に最初に出会ったタイの演劇人がトゥア(Tua Pradit Prasartthong)である。千秋楽を観に来てくれて、喜んでくれた。(写真)
彼とは二十年以上前、フィリピンで会ったのが最初だ。彼がタイ俳優版『赤鬼』にミズガネ役で主演する以前のことだ。ニコンより一回り年上の世代の、バンコク現代演劇界の第一人者である。
6年前には梅ヶ丘BOXに来て、『宇宙みそ汁』を観てくれた。

http://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/c7ad2d259ebd7270a405a999fe64dcc8


本日、劇団メンバーは梅ヶ丘で整理作業。
おつかれさまである。

私はこれから出かけて、3月上演の『ブラインド・タッチ』稽古初日。
どうやら4月まで一日も休みがないらしい。
ありがたいことだ。
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バンコクにて全公演終了! アジア共同プロジェクト『リタイアメン』と、最終日の反政府デモ

2018-02-11 | Weblog
アジア共同企画『リタイアメン』。

ツアー最終地・バンコク公演、終了。

バラシ中に、劇場スタッフとツアーメンバーの、記念写真。


皆さん、お疲れ様でした。


最終日の2月10日、バンコクの街中、民主記念塔付近では、反政府デモが行われていた。
ネットで呼びかけられていたデモは、午後4時頃から始まり、二百人以上になったという。
五人以上の集会が認められない国である。
首謀者と目された若者二人が逮捕された。日本でいえばSHIELDSの年代であろう。
デモで要求されていることは「選挙を行え」ということである。
現在の軍事政権は、いちどは今年11月に選挙するとしながら、結局は来年以降に延期することにしたといい、四年以上選挙が行われていない状況に対して、彼らが抗議したのである。

観光客にとっては平和な国だし、私たちも無事に公演を終えたが、タクシン政権後の混乱は、確実に潜在しているということだ。
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本日、バンコクにて大千秋楽。アジア共同企画『リタイアメン』。

2018-02-10 | Weblog
タイ式の開演前の劇場周囲の安全盛況祈願の儀式あり、沢野ひとし画伯の絵による大看板あり、初日のアフタートークあり、バンコクらしい公演となっています。(写真)

アジア共同企画『リタイアメン』。

ツアー最終地・バンコク公演、にて、大千秋楽。

12月からの三ヶ国メンバー相乗りの日々も、本日まで。

充実したツアーとなりました。

本日10日 2:00pm & 7:00pm。

2:00pmの回には、タイのニコン、ゴップと、私、清水のアフタートークもあります。


フィリピンもタイも日本より遥かに若い国。

七十歳前後の俳優が歌ったり踊ったりしているだけで、びっくり、ということもあるようです。


以下、当日パンフレットに載せた、私の文章です。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


新たな探索の始まり

〈Gender〉〈Care〉〈Barrier〉三つの視点から、私たちの現在を演劇として描くことを模索してきた〈アジア共同プロジェクト〉。初年度に出会ったテーマの中から、「退職後に海外に在住することを選んだ日本人たち」の存在に注目し、彼らを軸に、世界を見てゆくことになった。それは、タイ、フィリピン、日本、三つの国の関わり方を模索することでもあった。
一昨年、チェンマイで、清水弥生作『Summer house after Wedding』をリーディングしたさい、集まった演劇人、観客の皆さんとディスカッションした。「日本人リタイアメント」をどのように思うかと投げかけたとき、返ってきた返答の多くは、「私たちの町(国)にいるのなら、私たちと関わってほしい」というものだった。「関わる」とは、どのように実現できることなのか。それを私たちは以後の課題として受け止めた。
三つの国を通して一つの切り口を共有するという選択は、〈Gender〉〈Care〉〈Barrier〉三つの要素を、ただ自由にさまざまに描くということよりは、困難であったかもしれない。だがそれは、私たちの共同作業が、こうしたコラボレーションにつきものの「出会い」「紹介」に終始する陥穽から逃れ、作業を深めることに貢献したと思う。
『リタイアメン』はプロジェクトの終着点ではなく、新たな大きな探索の始まりであることを、感じている。

観劇される皆さんのために、客観的なデータを記しておこうと思う。

平均年齢。フィリピン・24歳。タイ・38歳。日本・46歳。
平均寿命。フィリピン・68歳。タイ・75歳。日本・84歳。

私たちの現実である。




⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

アジア共同企画『リタイアメン』 ツアー

【バンコク】
https://www.facebook.com/events/400022823782345/

2月8日(木)8:00pm [初日特別価格]
2月9日(金)8:00pm
2月10日(土)2:00pm & 7:00pm

クリエイティブ・インダストリーズ Creative Industries
https://www.facebook.com/pages/Creative-Industries-At-M-Theatre/1431159120486285

[8日(木)初日特別価格] ※売り切れ状態です。他の回をおすすめいたします。
一般: 300 BHT
学生: 200 BHT

[9日(金)・10日(土)]
一般: 500 BHT
学生: 350 BHT

ご予約
日本語: 予約フォーム https://goo.gl/forms/fZjlO7pZGybH9GBK2
日本語: 098-517-8789 gekidansazan@hotmail.com (窓口: サザン天都)
Thai & English: 089-762-5521 (8x8 Theatre Group)

現金支払い・会場での当日精算

協力○サザン天都
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バンコクの水上バス

2018-02-09 | Weblog
もともとバンコクは船で川を運行する方法が交通手段の多くを占めた。

観光用ではない。日常の乗り物だ。
昔からそうなのだろう。
乗り換え切符も含めて、15バーツ(50円)前後。
乗り降りは、ゆらゆらする船と地上を、誰もが平気で、ひと跨ぎ。
ここまでローテクかつ単純なな乗り物の乗客に、スマホを操る人が多いのも、考えてみると不思議だ。

いろいろ移動のために、結果的に三種類の船に乗った。
細い運河を運行するこの船は大きくないが、一番小さい型でもない。

時にスピードが上がると水飛沫が船内に入ってくるのを防ぐため、両脇にビニールシートの覆いが用意されている。

この船に乗りながら、近代的な乗り物を見上げる瞬間もある。
バンコクで一番の高さのビルを仰ぐときも。

過去も現在も未来も、川が見据えてきた街だ。

この街で演劇をすることが出来て、良かった。

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『リタイアメン』バンコク公演 開幕

2018-02-09 | Weblog
アジア共同企画『リタイアメン』。

ツアー最終地・バンコク公演、開幕。

三方向に設けられた客席は、ぎっしり埋まる。

若い観客か多く、お囃子と共にリタイアメン・トリオが歌いながら登場しただけで、どかんと受ける。

立体ベッドシーン(?)で、ゴップと鴨川てんしがシーツから顔を出しただけで受ける。

謎の研修生・田中結佳が第一声を発しただけで、受ける。後で聞くと、どうやら彼女が日本人だと思わなかった観客もいた。

なんだかんだ真面目なテーマで取り組んだ国際合作で、こんなに笑いが多いということは、なかなかないのではないか。

今回はコメディとして作る、と最初に宣言した通りではあるのだが。

日本語・タイ語のメインに加えて、上手側に出した英語だけの小さな字幕も効果的。

公演はあと二日。


⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

アジア共同企画『リタイアメン』 ツアー

【バンコク】
https://www.facebook.com/events/400022823782345/

2月8日(木)8:00pm [初日特別価格]
2月9日(金)8:00pm
2月10日(土)2:00pm & 7:00pm

クリエイティブ・インダストリーズ Creative Industries
https://www.facebook.com/pages/Creative-Industries-At-M-Theatre/1431159120486285

[8日(木)初日特別価格] ※売り切れ状態です。他の回をおすすめいたします。
一般: 300 BHT
学生: 200 BHT

[9日(金)・10日(土)]
一般: 500 BHT
学生: 350 BHT

ご予約
日本語: 予約フォーム https://goo.gl/forms/fZjlO7pZGybH9GBK2
日本語: 098-517-8789 gekidansazan@hotmail.com (窓口: サザン天都)
Thai & English: 089-762-5521 (8x8 Theatre Group)

現金支払い・会場での当日精算

協力○サザン天都
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これがモーチット・ステーションだ

2018-02-08 | Weblog
アジア共同企画『リタイアメン』には、ごく僅かだが、ツアー最終地である、ここバンコクの場面が登場する。

BTSの終点、モーチット・ステーションのプラットホームである。
どういう場面かは、まだ御覧になっていない方もあるだろうから、あえて秘す。

劇作家・清水弥生と私は、いちおう実物・ホンモノを見ておくことにしたのである。

駅のプラットホームを舞台にした芝居としては、燐光群には『8分間』がある。
あれは架空の駅だが、寸法としては井の頭線の浜田山駅がモデルだった。

本日8日、初日は既に完売であったが、客席中央ブロックに座布団席を一列追加した。
なので、当日券あります。

バンコク公演、まもなく開場である。


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アジア共同企画『リタイアメン』 ツアー

【バンコク】
https://www.facebook.com/events/400022823782345/

2月8日(木)8:00pm [初日特別価格]
2月9日(金)8:00pm
2月10日(土)2:00pm & 7:00pm

クリエイティブ・インダストリーズ Creative Industries
https://www.facebook.com/pages/Creative-Industries-At-M-Theatre/1431159120486285

[8日(木)初日特別価格] ※売り切れ状態です。他の回をおすすめいたします。
一般: 300 BHT
学生: 200 BHT

[9日(金)・10日(土)]
一般: 500 BHT
学生: 350 BHT

ご予約
日本語: 予約フォーム https://goo.gl/forms/fZjlO7pZGybH9GBK2
日本語: 098-517-8789 gekidansazan@hotmail.com (窓口: サザン天都)
Thai & English: 089-762-5521 (8x8 Theatre Group)

現金支払い・会場での当日精算

協力○サザン天都
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ツアー最終地、バンコク。

2018-02-08 | Weblog
ツアー最終地、バンコク。

昨日、『リタイアメン』 Dress Rehearsal を終え、字幕パネルをリニューアル。

日本語・タイ語のメインに加えて、英語だけの小さな字幕もサイドに出すことにする。

いよいよバンコク公演開幕である。

本日8日、初日は既に完売。
でも当日券も出せるようにします。

半ズボンでうろうろできる日々も、あと数日。
冷房が身体に合わないので、場内ではなるべく上着を着る。
日なたはさすがに暑いが、風があるとしのぎやすい。

日本は寒いらしいと聞いております。
皆様ご自愛ください。


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アジア共同企画『リタイアメン』 ツアー

【バンコク】
https://www.facebook.com/events/400022823782345/

2月8日(木)8:00pm [初日特別価格]
2月9日(金)8:00pm
2月10日(土)2:00pm & 7:00pm

クリエイティブ・インダストリーズ Creative Industries
https://www.facebook.com/pages/Creative-Industries-At-M-Theatre/1431159120486285

[8日(木)初日特別価格] ※売り切れ状態です。他の回をおすすめいたします。
一般: 300 BHT
学生: 200 BHT

[9日(金)・10日(土)]
一般: 500 BHT
学生: 350 BHT

ご予約
日本語: 予約フォーム https://goo.gl/forms/fZjlO7pZGybH9GBK2
日本語: 098-517-8789 gekidansazan@hotmail.com (窓口: サザン天都)
Thai & English: 089-762-5521 (8x8 Theatre Group)

現金支払い・会場での当日精算

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