大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:228『千引の大岩と桃太郎』

2024-02-05 10:22:54 | 時かける少女
RE・
228『千引の大岩と桃太郎 』テル 


 


 最後は、だれも二号とは呼ばなかった。


 涙と鼻水と涎でグチャグチャになりながら三つの坂道を一気に飛び降りて、迫りくる鬼と醜女たち目がけて桃の木に変身。あっという間に枝いっぱい桃の実を実らせると、その桃の実を鬼と醜女たちに食わせて時間を稼いで、みんなを助けたんだ。

 そんなあいつを、もうだれも桃太郎二号とは呼ばない。呼ばなかった。

「くしょー、なによ、なんなのよ、自分一人カッコつけて(≧◇≦)」

「これから、だれとバカ話すればいいんだよぉ(>△<)」

 齢の近いヨネコとケイトが地団駄踏んで悔しがり、大人たちは虚脱したように蓋をした大岩を見つめる。

「これからは、オオカムヅミノミコトと呼ぶことにしよう」

 イザナギさんが静かに言った。

 ミコト……命……これは神様の尊号だ。

「わたしたちが生んだ神ではありませんが、彼は日の本の神々と並ぶに相応しい男の子です」

 すると、与一さんが矢立てを出し、大岩にサラサラと大神実命 と記した。

「ああ、いいですね。わたしは意富加牟豆美命なんて万葉仮名でしか思い浮かびませんでした。大神実命、大いなる神の実。実に相応しい字です」

「では、わたしは……」

 雪舟ねずみは大神実命の下にきれいな桃の実の絵を描いた。

「桃太郎ぉ……桃太郎ぉぉ……(˚>ᯅ<) 」

 ヨネコは大岩に両手を突くと、オデコをくっつけ嗚咽しながら名前を呼ぶ。

「え……またやってくる!」

 くっつけたオデコに振動を感じて後ずさるヨネコ。すかさず、ヒルデとタングリスが大岩に耳をつける。

「多い……大きい者が混じっている」

「殿下、離れてください!」

 二人が飛び退ると、もう我々にも分かる地響きが大岩を、山を震わせた。


 ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!


 猛烈な力で岩を叩く音!

『憎らしい憎らしいぞよ、恨めしいぞよ恨めしいぞよ、イザナギィィィィ!』

 語尾を歯ぎしりにして怨嗟の声を上げるのは……イザナミだ!!

「ここを破られては後がない!」

 ガッシ!

 与一さんが大岩に取りつき、我々も及ばずながら全力で大岩を押しとどめた!



☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――
  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
 
 

 

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