REオフステージ (惣堀高校演劇部)
016・「あ、あのぉ、松井先輩ですか?」
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改名改稿したものです

※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改名改稿したものです
在籍確認をすればいいのだと分かった。
一年以上活動実績が無い部員は、生徒会規定で正規の部員とは認められない。
活動実績とは、日々の部活への出席が基本なのだけれど、今時毎日の出席を確認しているような部活は、ごく一部に過ぎない。
それで、運動部なら選手登録や試合。文化部ならコンクールや発表会へ名前を連ねていることが有効なのだが、それも出来ない場合は所定の用紙に、本人が署名捺印し、それを生徒会に提出すれば暫定的に在籍確認できることになっている。
「あのー……」
と声を掛けただけで教室中の注目を浴びてしまった。
下級生が3年生の教室にやって来たのだから目立つ。それも男子が女子の車いすを押しながらなのだから、何事かと思われる。
それで、運動部なら選手登録や試合。文化部ならコンクールや発表会へ名前を連ねていることが有効なのだが、それも出来ない場合は所定の用紙に、本人が署名捺印し、それを生徒会に提出すれば暫定的に在籍確認できることになっている。
「あのー……」
と声を掛けただけで教室中の注目を浴びてしまった。
下級生が3年生の教室にやって来たのだから目立つ。それも男子が女子の車いすを押しながらなのだから、何事かと思われる。
「えと……松井先輩はいらっしゃいますか?」
「松井くーん、下級生の面会やでえ!」
千歳の声に、体育委員という感じの女子が声を張り上げてくれた。
「え、おれに?」
運動部の部長らしい引き締まった体の男子が顔を向けた。
最初に声を掛けたのが千歳ということもあって、教室の注目はマッチョの松井と車いすの可愛い下級生に何事かと集中した。
こういうのは苦手な啓介だが、千歳は手慣れた笑顔で訊ねた。
「あ、いえ松井須磨さんのほうなんです(*´▽`*) 」
「「「「「「「「「「え?(;゚Д゚)(゚Д゚;(゚Д゚;) 」」」」」」」」」」
不用意にヴォルデモート卿の名を口にしたように教室の空気が気まずくなった。
「あ……その松井さんやったら、タコ……あの部屋、なんていうんやったっけ?」
「「「「「「「「「「え?(;゚Д゚)(゚Д゚;(゚Д゚;) 」」」」」」」」」」
不用意にヴォルデモート卿の名を口にしたように教室の空気が気まずくなった。
「あ……その松井さんやったら、タコ……あの部屋、なんていうんやったっけ?」
体育委員風は、病原菌が入った瓶をを放り出すように背後のクラスメートたちに聞いた。
「……生徒指導分室」
「1階の突き当り。『分室』とだけ書いてあるから。ま、行ってみい」
別人の松井が車いすの傍まで飛んで来て、指差して教えてくれた。
「どうもありがとうござい……」
ピシャ!……お礼を言う前に教室のドアは閉められてしまった。
「……なんや、イワクありすぎいう感じやなあ、松井さんて」
ピシャ!……お礼を言う前に教室のドアは閉められてしまった。
「……なんや、イワクありすぎいう感じやなあ、松井さんて」
車いすを押す啓介の声は緊張してきた。
「なんだか、魔法学校の映画みたいになってきた( ˶˙ᴗ˙˶ ) 」
千歳はワクワクしてきているようだ。
生徒指導分室は一階と言っても、今まで踏み込んだことのない校舎の外れだった。
「……失礼しまーす」
生徒指導分室は一階と言っても、今まで踏み込んだことのない校舎の外れだった。
「……失礼しまーす」
3回目のノックにも反応が無かった。
「入ってみようか……」
「う、うん……」
分室のドアはロックされておらず、ノブを回すと簡単に開いた。
「失礼し……あれ?」
分室のドアはロックされておらず、ノブを回すと簡単に開いた。
「失礼し……あれ?」
教室の1/4ほどの分室はゼミテーブルが4つ引っ付けられて島のようになっていて、その向こうに背を向けたソフアーがあったが人の気配はなかった。
「留守かなあ……」
「ね、あれ……」
千歳が指し示したソファーの背から、わずかに足の先が出ている。
車いすを寄せて回り込むと、ソファーに俯せで寝ている女生徒がいた。
「あ、あのぉ、松井先輩ですか?」
「う、う~ん」
寝返りを打った顔は整ってはいたが、目と口が半開きになってヨダレが糸を引いていたのだった。
寝返りを打った顔は整ってはいたが、目と口が半開きになってヨダレが糸を引いていたのだった。
☆彡 主な登場人物
- 小山内啓介 演劇部部長
- 沢村千歳 車いすの一年生 留美という姉がいる
- ミリー 交換留学生
- 瀬戸内美春 生徒会副会長
- 生徒たち セーヤン(情報部) トラヤン
- 先生たち 姫ちゃん 八重桜