銀河太平記・288
「ちょっと不穏だから気を付けてね」
上海から戻ってきたばかりのかけるさんが営業部に来て注意したっス。
「そこまで悪いとは思わないんだけど、不景気を利用して権力闘争になりそうな空気がある。弾ける時は瞬間だから、巻き込まれないようにね。なにか変なことがあったら、すぐに連絡してちょうだい」
「「了解」」
ベテランの八尾さんと吉野さんが返事して、みんな営業に出かけたのが今朝の9時っス。
三里屯はいつも通り……と思ったら、街角に私服の警察がチラホラ。元々が戦災孤児で、そういうのにはビクついて生きて来たんで、そういうのには敏感っス。
……大丈夫、まだ私服たちにはそこまでの緊張は無いっス。
日系の店がひとつクローズになっていたぐらいで、まだ仕事は出来るっス。二軒まわって二百三に向かったっス。まだ五月というのに、今日の北京は30度、朝から汗ビチャで営業するのも憚られるんで、日陰を拾っていくっス。
「お早う猫猫、注文書できてるけど、ちょっと休んでいきなよ」
「すみませんねえ、小梅ネーサン(^_^;)」
「いちおうマスターに目ぇ通してもらわなきゃだからね。はい、シマイルサイダー」
「すいません。置いてくれてたんスねぇ(^○^)」
「いやあ、おたくの八尾さんてのが来てね『猫猫がお世話になってますって』挨拶されてさ、マスターと仲良くなって扱うことになったんよ」
「え、そうなんスか!?」
「いやぁ、いい上司に恵まれたねえ(^▽^)」
さすがは八尾さん、ちょっと感動したっス。
プシューーーー!!
「ワ、アワワワワ(''◇'')」
うっかり開けた缶から勢いよく泡が噴き出して狼狽えるっス!
「あ、ごめん、ちょっと落っことしちゃったから(^_^;)」
「アハハ、そういう時は……失礼、こうやって、回転させて炭酸を吸収させてから開けるっス」
「アハハ、そうなんだあ(^○^;)」
ドライクリーナーでザっとサイダーの染みを抜いてから次に回ったっス。
三軒周ったところで、例によって朝陽公園で一休みっス。
「ああ、八尾さんも吉野さんも休憩っスか」
いつものベンチに向かうと、ベテラン二人がご休憩中。八尾さんは例によって靴脱いでネクタイ緩めまくり。吉野さんは、上着こそ脱いでるけど、ピシッとしてるっス。
「いやあ、猫猫も言うてやってちょ。営業はどこで人に見られてるか分からんで、ちゃんとしろってぇ」
「わしは緩めとっても愛嬌を忘れへんぞ。人間可愛かったら、少々緩んでも、かえって人間らしいとアドバンテージになるっちゅうもんや」
「僕も、仲間内の時は、ちゃんと名古屋弁でくだけとろーが」
「せやけど、仕事中は標準語やろが」
「僕は、公私の区別は付ける。というたらかっこええけど、八尾みてゃーな砕けようしても似合わんでなぁ」
アハハ、性格は真逆なんすけど、二人とも営業成績はトップで、漢明での経営戦略でも一目置かれてるっス。かけるさんも人の使い方は上手いっス。
「なあ猫猫、吉野はなあ、こう見えても南朝53代目の皇位継承者やねんぞ」
「え、ナンチョー53代目?」
「ああ、止めてちょ(;'∀')」
あたふた手を振る吉野さんを押えて話を続けるっス。
「はるか900年の昔、日本は足利尊氏が推す後醍醐天皇の南朝と、新田義貞が推す光厳天皇の北朝に分かれた。最後は北朝が勝ったさかいに、いまの天皇さんは北朝の裔やけど、世が世なら、この吉野尊治こそが百何十代目かの天皇さんちゅうわけや」
「いや、ほんとに止めてちょ」
「いや、日本の歴史なんてよく分かんねえっスけど、すごいんスねえ!」
「あ、猫猫、ジュースこぼしたやろ……うちのサイダーかぁ?」
「あ、ドライクリーナーかけたっスけど、分かります?」
「うん、袖のとこまだ残ったままやし」
「あ、お得意先でうちのサイダーいただいたもんでぇ(^_^;)」
小梅ネーサンのことを話すと二人とも喜んで聞いてくれるっス。
いやあ、なんか、この仕事も楽しくなってきたっス(^▽^)。
「あれぇ、あの煙、三里屯のあたりじゃにゃーきゃー?」
「「ええ?」」
朝陽公園の森の向こう、ついさっきまで居た三里屯の方角に一筋の煙、見る間にもう一筋……そんで、爆発やら喧騒が、ここまで聞こえてきたっス!
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟