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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・295『口をきかなきゃ美少女っス』

2025-04-09 15:26:28 | 小説4
・295
『口をきかなきゃ美少女っス』 ツナカン 




 モノゴトにはファジーってことがあるっス。


 いちおう決まりや法律では禁止されてるけど、なんとなく放っておかれてることとかあるっしょ。

 女子高生のスカートの丈とか、自転車のヘルメットの着用とか、公園や駐車場をショートカットに使うとか。

 そのファジーが中南海にもあるっス。

 中南海はディズニーランドにディズニーシーを足したぐらいに広くって、周囲を高い塀に囲まれてるっス。公の出入り口は新華門なんすけど、関係者の出入のための勝手口みたいなのがあるっス。
 むろん中枢部には入れねえっスけど、北西の駐車場や、この南東の広場は、比較的に自由っス。まあ、うちらみたいに出店を出すってのは審査きついっスけどね。

 さっき言ったファジーが目の前を通って行くっス。

 スカート丈の微妙なJK、ヘルメット被ってるのやら被ってないやらの自転車、故宮からのショートカットに通ってるのやら(^_^;)。

「劉宏大統領になってかららしいよぉ、まいどありがとう(^▽^)」

 小梅ネーサンが、お客にお釣り渡しながら教えてくれるっス。

 中南海に出店を出すのは手続きやライセンスとか大変なんすけど、出しちまえば、そういうファジーな人たち相手にそこそこの売り上げになるっス。まあ、三里屯でガンガンやってたほどじゃないっスけどね。

 だいいち、このツナカンの目的は森ノ宮殿下を見つけることっスからね。

「あんたの目当てってのは、なかなか現れないねえ……」

 素性までは言ってねえっスけど、自分が人探しの為に北京に来てるのは、やっぱり分かっちまうっス。まあ、小梅ネーサンの人柄っスね。頭もいい人なんで、なにげな会話の断片を覚えてくれていて、それをいつのまにかパッチワークみたいに組み上げて、お得意さんやら取引相手の心をゲットするンすねぇ。自分が男なら、こういう人を嫁さんにするっスねぇ。

「フフ、開店の挨拶に周ったらさあ、あちこちの出店で『こんどは、相棒にも来て欲しいなあ』ってゆってたよぉ(*´艸`*) 」

「え、それって自分のことっスか?」

「そうよ、ツナカン、黙ってりゃとびきりの美少女だし」

「え、いやあ、あんまり言われたこと無いっスよ」

「ツナカン、こっちが気づく前に喋っちゃうでしょ。大きな口開けて『マイドッ! シマイルカンパニーのツナカンッス!』とかさ」

「あ、人間、まずは挨拶っスからね!」

「うちの店長なんか『いっそ口が利けない設定にすりゃいいのに』とか言ってたわよ」

「あ、ああ……(;'∀')」

 思い出したっす。203に営業掛けに行ったとき、思いっきり『チワーッス! シマイルカンパニーッス!』ってかましたっス。

「さいしょに、そのベシャリ聞いちゃった後でさ、その美少女マスク見せられたら男はムカつくのよ」

「ええぇ……さすがに落ち込むっすよ」

「まあ、その後で、その人の良さに接しちゃうと、みんな仲良しになるんだけどね。それには時間がかかるのよ」

「あぁ、そうっスね」

「だからね、とりあえずは、あたしが挨拶に周っといた。でも、みんな興味持ってくれてるから……ほら、月餅屋のおじさん来るよ!」

 あ、なんか意識しちまうっス!

「やあ、小梅、昨日はわざわざの挨拶ありがとうな。商売モノだけど、挨拶代わりの月餅だ、おやつにでも食べてくれ」

「ああ、すみませんねえ。おかげでボチボチ売れてます、ありがとうございます(^▽^)」

「そっちのネエチャンもよろしくな」

「あ、はい、目を掛けていた、いた、いただいてありがとうございます(;゜∀゜)」

「おお、声はちょっとハスキーだけど、めちゃくちゃ可愛い! あ、俺、月餅屋の陸遜って言うんだ、同じ広場の露天商同士。な、仲良くやろうぜ!」

「は、はひ、こちらこそぉ……」

「三里屯ほどの賑わいはないけど、ここは中南海だ。よその商業地区じゃ日貨排斥とかで、ちょっと物騒だけどさ、北京で一番安全だしな」

「そ、そうでですわね(^_^;)」

 なんか舌噛みそうっス。

「それに、どうやら大統領が直に動き出されたとか……一昨日から瀛台(えんだい)に来てるって噂だ」

「え、そうなんですか!?」

 小梅ネーサンの反応は早いっス。

「ああ、昨日も大統領の随員らしい人が月餅買いに来てくれたよ」

「庭師みたいだったっス……だったでしょうか?」

 ヤバイ、素が出かかったっス(^_^;)。

「え、あ、いや。それよりもよ、瀛台の地下には北京のあちこちに抜けるシャトルみたいなのがあってよ、それが頻繁に動いてるって噂だ」

「「ええ?」」

「なんでも、あそこは、二十世紀から政治の中枢で、地下にいろいろ仕掛けがあるって、役人たちの間じゃ常識らしいぞ。あ、これ見てくれ」

「アナライザーっス……ですか」

「ああ、空気から地べたの振動まで知らせてくれる。国や役所の情報はアテにならないけど、こういう環境の変化は正直だからな……ほら、地下で何かが動いてる……」

「ほんとうだ……」「…………」

「ま、劉宏さんは将軍やらせても大統領やらせても立派にこなしてきたからな、めったなことにはならねえと思うけどな……おっといけねえ、店あけたまんまだ」

 おかみさんみたいな人が怖い顔をしていて、月餅屋のオヤジはすっ飛んで行ったっス。

 月餅屋のアナライザーじゃないっスけど、ツナカンの第六感も微妙にざわつくっス!

 


☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 




 

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