大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・059『マイナカードから転移魔法へ』

2024-07-16 09:40:37 | カントリーロード
くもやかし物語 2
059『マイナカードから転移魔法へ』 




 フフフフフ(*`艸´)


 御息所が嫌味な含み笑いをしたかと思うと、みるみるうちに1/12サイズからリアルサイズに変わった!

「役人どもよ、わらわたちを勉強不足のJKやら1/12サイズのフィギュアと見くびるではないぞよ」

「あ、あなたさまは!?」

「源氏物語『夕顔の巻』に燦然とその名を輝かす六条の御息所とは妾の事じゃ。畏れ多くも先の東宮の妃であるぞよ」

 ヘヘーーー(-_-;)!!

 さすが御息所、居並ぶ役人たちは、みんな平伏したよ(^_^;)

「古事記ではカササギが彦星を渡すとある。舟が現れるという説もあれば、牽牛の牛が背中に乗せて渡ると言う中華の説、月が渡し船になったり、川の中に島ができるとか、様々な方法が有るはずじゃ。いずれの方法でも良い、疾く妾たちを向こう岸に渡すが良いぞ」

 おお、いつもと違う! 

 なんか自信たっぷりで、普段のアニメ風じゃない!

「お、お言葉ではありますが、それは七月七日の夜限定でありまして……」

「ならぬと申すか?」

「ハ、畏れながら……」

「わ、妾は先の東宮妃、六条の御息所なるぞ!」

「そう仰せられても……なあ」

 役人が部下たちに目配せをすると、若い役人がおずおずと手を上げる。

「なんじゃ、良い考えがあるなら申せ、直答を許すぞよ」

「はい、マイナンバーカードをお作りいただき、そのマイナカードでクレジットをお作りになってヘリコプターをチャーターなされば」

「おお、それは良い。疾くマイナカードを作るぞよ!」

 さっそく役人はデジカメで写真を撮って書類に貼って御息所に差し出したよ。

「では、必要事項をお書きくださいませ」

「容易き事よ……サラサラサラ……これでよいであろう」

 一分足らずで書き終え、鼻の穴を膨らませて役人に下げ渡す御息所。

「ハハア、お預かりいたし……あ……あの……」

「なんじゃ、なにか故障があるのか?」

「はい、御芳名をお書き頂きたいのですが」

「名なら書いておろうが」

「はい、六条の御息所とはございますが」

「そうじゃ、それでは不都合があると申すのかや?」

「ここは、戸籍名と申しますか、住民票などに書かれているお名を頂戴いたしたいのですが」

「ま、真名とな……(;'∀')」

 ちょっとまずいよ、御息所は『六条の御息所』とあるだけで、名前なんか無かったはずだよ。

 役人どもは恐れ入りながらも――勝った――って顔をしている。

「そこ、通名でもいけるはずですよぉ」

 旅人の一人が発言する。

 余計なことをという顔をする役人もいるが、年かさの役人が顔を上げる。

「ハイ、通名でもむろん構いませんが、住民票に届けられたものと同一である必要がございます」

 それは無理だよ。御息所に住民票なんて無いし。

「本の目次や登場人物相関図とかではダメなのかや?」

「はい、申しわけございませんが……」

「そ、そうか……」

 御息所は、たちまち1/12サイズになってポケットに戻ってきてしまった。


「転移魔法を使おう!」


 それまで黙っていたネルが手を挙げたよ。

「転移魔法って、最上級魔法だよ!」

「あたしもエルフだ、やってやれないことはないだろう!」

『そうか、なら、それで行こう!』

 御息所が元のアニメ声で賛成する。

「全知全能なるエルフの神よ。わが名はコーネリア・ナサニエル、わが身は芽ぐむまじき言の葉の種。 御身に比すれば鴻毛より芥子粒よりも軽ろき身なれば、我とその友、小泉やくもと六条の御息所を天の川の彼岸に渡らせ賜えぇぇぇ!」

 ネルが念を籠めると目の前がゆっくりと白くなっていったよ。



☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)091・わたしの車いす生活

2024-07-16 06:58:05 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
091・わたしの車いす生活 





 地震になったらエレベーター停まるんですよ。


 揃って入ったエレベーターの中で、気楽に千歳が言う。

「ということは、閉じ込められるわけ!?」

「そうですよ」

 お尻のあたりがゾクゾクしてきた。高いビルのテッペンから下を覗いたような、あの感じ。
 ……………………。

「先輩、ボタン押さなきゃ動きません」

「あ、そか(^_^;)」

 後から乗ったもんだから、ドアの真ん前。狭いエレベーターなので車いすが二台入ると身動きが取れへん。

「二階やから押せるけど、上の階やったら手ぇ届かへんよ(^_^;)」

「左側に車いす用のボタンがありますよ(*^-^*)」

「あ、ほんまや!」

 車いすなんて初めてなんで、いろいろな発見がある。


 捻挫(両足)をこじらせて車いすに乗ってんのよ。


 松葉杖でも大丈夫なんやけど「知らないうちに負荷をかけるから」というドクターの二番目の勧め。第一の勧めは「治るまでは学校休みなさい」やねんけど、休んでなんかおられへん。

 世界が変わるよね、車いすに乗ってると。

 視線の高さが子ども並になるので、ちょっとワクワクする。さっきの車いす用のボタンとかね。

 教室の椅子は取っ払ってもらった。いちいち車いすから普通の椅子に座るのは冗談かと言うほど煩わしい。

 教室への出入りも考えて、廊下側の一番後ろになった。

 でも、車いすがドデンと来ると、後ろのドアの半分が被ってしまうので、すぐ前の関さんが座席ごと引っ越していった。

 なんか申し訳ない(^_^;)。

 身障者用のトイレは無駄に広いと思ってたけど、そうでもないことをことを実感。

 自販機が使いにくくなった。

 だって、一番下のボタンしか手ぇ届かへんし。好きなデカビタは上の段にしか並んでないし。

「はい、先輩」

 二階の新部室に着くと飲み物が欲しくなって、どうしようかと思っていると千歳が「任せてください!」と買いに行ってくれた。

 この際だから、なんでもいいやと思ってたら、千歳はきっちりデカビタを買ってきてくれた。

 自分用に買ってきたのも上の段にしかないペットボトルのお茶や。

「え、どうやって!?」

「伊達に三年も車いすに乗ってませんよ」

「千歳は魔法使いか……?」

「へっへー(^▽^)/」

 千歳とは、もう半年の付き合いやけど、こんなに嬉しそうな千歳は初めて。

 やっぱ、ハンディキャップを一時的とはいえ共有していることは大きいんやと思うし、千歳の一面しか見えていなかったとも感じる。

「部室棟がよう見えるわねぇ……」

 工事が中断したままの部室棟。わたしが演劇部に入ったのは、そもそも部室棟の解体修理を見たいからやった。

 解体中に新しい構造が見つかったり、建築基準法と保存とどう折り合いを付けて行くか。それに合わせて予算上の問題が出てきたりで、中断したままになっている。

 気持ちを切り替えて千歳に振る。

「二人も車いすになって、文化祭に演劇って出来るのかなあ?」

「車いすという点では大丈夫ですよ……ほら」

 スマホを出して動画を見せてくれる。

「お、根性ね!」

「でしょ、ノープロブレムです!」

 スマホには、骨折のため車いすになりながらも元気に舞台に出てる黒柳徹子さんが映ってた。

 新部室はとってもええねんけど、集まるのが遅くなった。

 前の部室は、生活指導のタコ部屋も兼ねていたので、須磨先輩の住み家でもあった。

 須磨先輩の魅力なのか、あの狭い部室になにかあるのか、面白いところやった。

 標準より十分遅れてみんなが揃った。

 気が付くと午前中残っていた雨が上がって、少しだけ晴れ間が見えてきた。 



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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