大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・109『笹の葉さ~らさら』

2024-07-07 13:53:15 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
109『笹の葉さ~らさら』   




 どうしよう……


 一つだけ、取り扱いに困る短冊があった。

―― みなさんも天の川で恋人と出会えますように ――

「え、どうして困るんですか?」

 ロコが正直に質問する。

「だって……」

「そうだねぇ……」

 真知子とたみ子は分かっているようで言葉を濁す。

「よーく見てみ」

「ええ、どれどれ……え……あ!」

 ロコも間近に見て分かったようだ。

「鉛筆の下書きが残ってますね、そのう……」

 ロコも言い淀んでしまう。

 べつにヴォルデモート卿の名前が書いてあったわけじゃない。

 消されてはいるけど、ごくうっすらと読めるのは『美奈』という名前だった。

 短冊に署名するかどうかは規定していない。じっさい書かれていないものがほとんどで、中には『ケメコ』とか『二年女子』とか『I.H』とかイニシャルだけのとかも多かったし。

 その短冊には『みなさんの友だち』と書いてある。

 どうしたものか……

「これ、MITAKAに来てくれた同級生の人だよね……」

 佳奈子が敵の癖玉をレシーブするように言う。


「いいんじゃないか、それくらい」


 レシーブされたボールを敵コートに打ち込んだのはいつの間にか来ていた倉田先生だ。

「いいんですか?」

「ああ、文面にも思いやりがあるし、きみらもちゃんと考えてる。これでいいんじゃないか」

 よし!

 みんな小さくガッツポーズして、めでたく七夕の飾りつけを終えた。

「でも、明日から期末テストなんだから、早く帰って勉強しろよ」

「「「「「ハーーーイ(''◇'')ゞ!」」」」」

 返事だけはいいわたしたちだったよ(^_^;)


 もうちょっといいか……みんなで三本の笹を眺めていると、誰ともなく口ずさむ。

 笹の葉さ~らさら 軒端に揺れ~る お星さ~まキ~ラキラ~(^^♪

 歌っていると、他の生徒も集まって来て、フォークソング同好会の子がギターをもっていたもんで、期せずして『フォークの集い』になってしまう。

 四時を過ぎたころに今度は担任の花園先生に怒られて、ようやく解散した。


 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
 


 


 
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鳴かぬなら 信長転生記 191『阿修羅の正体』

2024-07-07 11:03:45 | ノベル2
ら 信長転生記
191『阿修羅の正体』信長 




 敵か……味方か……


 血みどろの阿修羅は大魔神に深手を負わせた。ひょっとしたら討ち取ったのかもしれない。

 夥しい血が流れ、牛一頭分もありそうな片腕が落ちてきた。

 これだけのダメージを受けては、さしもの大魔神曹操も撤退せざるを得ないだろう。いや、あの深手では命を失っていても不思議ではない。

 それなのに、阿修羅は荒々しく肩で息をし、三対の双眼も炯炯と敵意をむき出しにしている。

 その訳の分からん敵意と怒りの圧に、武漢城に留まった者も、武漢市街に避難した者たちも寂として身じろぎもしない。

「阿修羅、おまえは何者なのだ!」

 無意識に市を庇いながら唯一残った悟空の如意棒を突きつける。

 グルグルグル! 

 三面が高速で回転し始め、三対の腕がブルンブルンと振るわれる!

 シャキーーン!

 三面の回転が停まり一面となり、三対の腕は一対に減じた……いや、まとまった。

「己(み)は淀である」

 淀……?

 静かな名乗りではあるが、その身に秘めた炎(ほむら)は収まった風も見えず、武漢城の者たちは、まだ息をのむばかりだ。

 その中にあって、俺の背中を掴む手だけがピクリと震えた。

「……茶々?……茶々なの?」

 掴む手が離れ、視界の端を市の横顔が占める。

「そうか、茶々なんだ」

「……そうよ、お母さん、あなたのために三回も落城の憂き目にあい、二度も父なる人を失って、最後は最愛の息子をさえ……なのに、あなたはノウノウと転生。前非を悔いることもなく……どうして、女のままの転生なのか、また元の市のままに生まれ変わって同じことを繰り返すつもりなのか……と思っていた」

「茶々……」

 辛うじて名前は呼ぶものの、俺の横に出るのが精いっぱいの市。

 グズグズするやつもグズグズした事態も嫌いだ。

「茶々」

「なに、伯父さん?」

「どうやら、曹操の大魔神をやっつけたのはおまえらしい。しかし、ウダウダいう奴は嫌いだ。この上俺や市に立ち向かうと言うなら俺が相手になるぞ」

 如意棒を正眼に構え直すが、茶々は構えようとはしない。

「フフフ、もうそんな力は残っていない。もう少し見ているつもりだったけど、曹操を倒すのに力も気持ちも使いすぎてしまった……」

 瞳の炎は消えかけの蝋燭のように細くなり、その体は端の方から茶褐色の湯気のように解けて霧消していく。

「茶々……」

「じゃあね……」

 完全に消えてしまうと、武漢の上に青空が戻ってきた。


 そして振り返ると、曹茶姫、諸葛茶孔明、大橋紅茶妃の三人の姿が消えていた。


 
☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主 
  
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)082・とんでもない事態になってきた!

2024-07-07 08:16:49 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
082・とんでもない事態になってきた! 





 運命とか神さまとかは信じない。

 お母さんとは意見の合わないことが多いけど、この点については一致している。

 世の中というのは因果応報、なにか事件が起こったり行動を起こすと、その事件なり行動が変数となって作用しあって事態を変化させる。
 
 戦争なんてロクでもないけど、戦争のお蔭で電子レンジもインターネットも生まれた。電子レンジのお蔭でお祖母ちゃんは卵を爆発させて掃除が大変になるし、ネットのお蔭で思ったことをすぐにラインとかして後悔するし。スマホは便利だけどひとたび電池が切れれば、ただの板切れ。マップもGPSも使えなくなったミッキーがやっと見つけた公衆電話で「迷子になったあ!」と泣きを入れてくることも無かっただろうし、わたしが十三(じゅうそう)まで迎えにいくことも無かっただろうしね!

 わたしが新しい同居人で悩む羽目になったのは、そういう因果応報の果てのことなんだ。
 
 困ったことに、同居人は、いささかの運命論者。運命論の勢いで生徒会の活動をしてみたいと言い出した(-_-;)。

「運命だと思ったんだけどなあ……」

 結論を聞いたミッキーは、ちょっとしょげている。

「ま、新しい執行部に持ち掛ければいいんだから、気落ちしなくていいわよ」

 いささかのシンパシー有り気な顔で答えておく。


 ミッキーには悪いけど、これ以上わたしのテリトリーに入ってきてほしくない。

 脳天気なお母さんのお蔭で同居することのなったことだけでも十分すぎるほどトンデモナイことで、ミッキーの運命論を補強してしまっているのにね。

 自分で言うのもなんだけど、ミッキーはわたしに気がある。

 サンフランシスコの三日目、ゴールデンゲートブリッジのビュースポットでキスされそうになった。

 日の暮れで、周り中アベックばっかで十分すぎるほどの雰囲気。雰囲気十分で迫ってくることは理解できる。

 動物的衝動だけで迫って来たのではないことも分かっている。

 ミッキーが、わたしを崇拝してくれるのは嬉しいけども、崇拝されたからと言って、それに100%応えなきゃならない義務はない。

 でも、サンフランシスコからやってきた交換留学生への礼は尽くしてあげなければならない。

 ホスト校の生徒会副会長としての義務と礼節はわきまえている。

 わきまえていなければ、彼の同居が決まった段階で家出してるわよ。

 生徒会規約によって執行部の肩書と人数は決まっている。現状で定員一杯。

 執行部は選挙によって選出された者のみをもって構成すると生徒会規約にある。それに、留学生が執行部に入れる規定も無ければ選挙権の有無についてもうやむやだ。

 そういうことを生徒会顧問と執行部に説いた。

「議決権のないオブザーバーならいいんじゃないのか?」

 会長が柔軟なことを言うので、わたしはえぐらざるを得ない。

「でも、あんたたちの好きな猥談できなくなるわよ」

「「「え(゚д゚)!?」」」

 これが会長以下の男子役員には効いた。

「アメリカはね、未成年へのセックスコードはメッチャ厳しいの。この棚に並んでるラノベはみんなアウトよ。体は大人でルックスは幼女のパンチラなんて即刻絞首刑! その下に隠してあるパッケージと中身が違うDVDなんか銃殺刑!」

「そ、それはネトウヨのデマみたいなもんだ!」

 会長の悲鳴は、わたしのハッタリが事実であることを物語っていた。

 そして、ミッキーの「生徒会活動に参加してみたい、いや、そうなる運命だ」という信仰的思い入れは潰えさった。

「残念ね、日本というのは慣例や規約にはやかましい国だから、わたしも応援したんだけどね……まあ、部活とかだったらノープロブレムだから、いっしょに探してあげるわよ」

「うん……頼りにしてるよ」


 よし! 難関をパスした気になっていた。


 ところが、とんでもない事態になってきた!

――ごめん、お祖母ちゃんと一週間泊まりの仕事になっちゃった。留守番よろ~!――というメールが飛び込んできた!

――ちょ、お母さん、ミッキーと二人ってことなんですか!?――

――大丈夫よ、ミッキーはいい子だし、念押しにメールしたら「安心してください、神に誓ってミハルを守ります!」って返事きたから――

 で、それがお守りになるかのように奴のメールを転送してきた。

 ウウ……それって、憲法だけで日本の平和が守れますってくらい脳天気なことなんですけど!


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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